番になんてなりたくない!

文字の大きさ
上 下
63 / 220
怪しい気配

犬達の呟き

しおりを挟む
「殿下達は城に戻られるみたいだ。」
「そうみたいですね。殿下達から、次は何を指示されるんだろう。」
「きっと、『ハウス栽培』とか言うものだろうね。あと、あの山脈の向こう側を気にされてたから、そのための防御関係?」

自分たちの敬愛する主人達の事を考えながら、仲間と話す。

自分達は過去にこの国のを探るように言われた間者だ。
本来、活動中、捕まり、失敗した場合、死を選ぶ。
どんな優秀なものでもだ。
失敗の度合いにもよるけれど……

自分達は、お互いこの世界では結構有名だったと思う。
ノアールとブランには負けるが……
あの2人は超有名人だ。

『クロさん』と呼ばれる後の執事件護衛。ノアール。
ウィル様の側に付き従う彼は『孤高の密偵』と噂され、『漆黒の牙』『闇の牙』と称されていた。

『シロさん』と呼ばれる魔法使いブラン。
銀髪。瞳は紫に近い蒼。
女性に見間違えられそうな男性である彼は、リリィ様に懐いてる『孤高の魔法使い』と言われていた男。
『白き雷』『白の魔王』と称されていた。

そんな彼らに『犬』呼ばわりされている自分達。
城に接されている罠にまんまと引っかかり、捕らえられた。
普通の罠ではない。
今まで見たことも聞いたこともない、この国だけの罠。

何も変哲もない普通のものに触れると、バチバチとした物が流れ、意識を落とした。
気がつくと、鎖に繋がれて、何でも喋ってしまう薬を打たれた。
言われるがままに喋ってしまい、後でそのことに関して間者としての自信を打ち壊された。
その後、この国のから勝手に出れないように、魔術を施され、逆らえないように術式もかけられた。

ノアールとブランが言うには、首輪だと……
それが施された者から、鎖は解かれた。
自害を試みたが、これに対しても術式もが施され、出来ない。

与えられた部屋で、自暴自棄になっていた時、殿下達が来られたのには驚いた。
怯えた犬が人に噛み付いたり、威嚇したりするが、それとよく似た状況でもあるのに、お2人はニコニコしてやってきた。

「怪我は大丈夫?食事食べてる?困った事はない?」

そう心配そうに近づき、目線を合わせようとして、声をかけてきた。
背後に2人を控えさせてはいたが、2人が何か言おうものなら、静止して。

「君がどうしても帰りたいと言うなら、返してあげる。君達の国次第だけど……でも、多分帰っても無事には済まないと思うよ。もしよかったら、私達のために仕事をしない?君みたいな優秀な人材が欲しかったんだ。」
「私達は、君を迎える準備はできてるよ。君を守ることも。どうかなぁ…一緒にこの国の民を護ってくれないかなぁ。君が必要なんだ。」

そう言われた。
そんな事を言われたのは初めてだ。
どんなに優秀でも、所詮使い捨ての駒。
それを、「守る」と言われ、「必要」と言われた。
こんな幼い方々が……

術式は施されているが、そう求められて、嬉しくないわけがない。
そして、彼らに膝を折った。
それが、今の自分達だ。
殿下の為に技術をさらに磨き、持てる力を全て提供する。

本人達は、兄君達に比べて平凡な容姿だと言われるが、神か天使のように美しく、愛らしいお2人に仕えれる喜びも感じていた。

この地の作物不足を懸念されて、その『ハウス栽培』とやらを、成功させ、防衛関係が気になるなら、その為に動こう。『塩』に関しては、かなり喜んでいただいたから。嬉しい。

殿下を守り、手足となって頑張ろう!!

「誰がここに残るか決めてるのか?」
「殿下の護衛は我らが主だが、後は必要に応じて配置だな。ノアールとブランの指示もあるだろうし……」
「できたら、側で護衛したいけど、殿下の希望された成果を挙げるのも楽しそうだしな。」
「そうだな。」

そう話しながら、主人を思い浮かべて、アルコールの入っていない、いわゆるノンアルの酒を酌み交わし雑談を続けた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生したら、王太子に即ハメされまして……

ラフレシア
BL
 王太子に即ハメされまして……

悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと

糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。 前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!? 「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」 激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。 注※微エロ、エロエロ ・初めはそんなエロくないです。 ・初心者注意 ・ちょいちょい細かな訂正入ります。

気付いたら囲われていたという話

空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる! ※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。

処理中です...