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聖女と巡礼
闇の先(アイ)
しおりを挟む「ここが例の…」
ゲームのスチルやアニメで見たのと同じような…
見た目は少し大きい洞窟の入り口。
熊とかが出て来そうなぐらい大きい。
洞窟の入り口から少し離れた場所にテントを立てているのが見えた。
少し外れた場所にも…
洞窟内の入り口を監視するためだと思う。
だけど、もう一つのは!?
「ようこそおいでくださいました。」
そう言って出迎えてくれたのは、体の大きな黒い甲冑姿の騎士だ。
胸当てだけの軽装と思われる騎士や、魔法師と思われる者もいた。
そして…
何であそこに居るんだろうか。
思わず呆然としてしまう。
「どうされましたか?」
そう言って、挨拶してくれた騎士が私の視線を追った。
『あぁ。』っと納得するけれど、帰って来た言葉は、少し違っていた。
「あそこに居られるのは、我が国、ディール帝国前皇帝陛下であられます。今回は極秘参加とのことなので、挨拶などは…」
「えっ?前皇帝陛下が?あっ、そうか。彼の方は…」
ルディが耳元で説明してくれる。この、魔人の国ディール帝国前皇帝陛下。魔人族であり、世界最強の魔術師・魔導士とも謳われたエドワード・ディールその人だと。
確か現皇帝陛下は女性だった。
謁見でお会いして…
いゃ、それは今は関係ない。
その、ディール帝国の前皇帝陛下が参加してるのも驚きで、ゲームやアニメとかにもこの場面で出ていなかったのもだけれど、それよりもだ。
どうして?どうして??
向こうのテントには、信じられない人達が…
「聖女様方が来られるという事で、扉を閉じるためにとの事です。前回経験されておられますから、扉を閉めるための配慮だと伺っています。それよりも、今回は今までと違いますので、まずはこちらに…」
そう言って、視線が止まるテントではない別のテントに案内された。
浄化し続けたおかげで、洞窟内以外は瘴気がかなり落ち着いて来ていると言っていた。
洞窟周辺の魔獣は、すでに冒険者達や各国からの騎士団達のお陰でほぼ駆逐できていると、嬉しそうに言っていた。
そんなはずは??
確かに、ここまで来るのに、魔獣は見かけなかった。
少し瘴気が多い?って思ったところは、簡単に浄化して来たけれどもだ。
倒木や朽ちた木々や崩れた岩肌などもあったけれど…
ゲーム内では、洞窟に辿り着くまでの山道に関してあまり説明がなかったし、アニメでもあまりなかった。
いきなり、ここが入り口かって岩肌にぽっかりと開いた洞窟入り口で…
そこを入っていくに連れて、魔獣が蔓延っていて…
ゲームと違う事がこれでもかと見て取れる。
これは一体どういうこと?
それに、なぜあの場所に彼がいるのかが…
だって…
それに、彼と親しそうに話していた者達が気になる。
服装などで見えにくかったのもあるけれど。
「アイ?大丈夫か?」
「えっと…うん、もう少しかって思えるのと、どんな状態で、どんな事が待ち受けてるのかって不安とか…ね…」
「あぁ、そうだね。とりあえず、明日洞窟内に入っていくよ。扉は今日の時点ではまだ開いていないらしい。明日どうなっているかはわからないけれど、今までと全然違うからね。僕達メンバーがついているし、神殿から『鍵』も預かったじゃないか。神から贈られてきたと、神殿に急ぎ呼び出されて…」
「そうよね…」
ゲームと同じで、この世界の神が扉を閉めるイベントの前にこの世界でのアカリ様から鍵を預かってきた。
初代聖女の『アカリ』の名を代々継ぐ神殿内の特別なお方。
その高貴な方から預かったゲームでの必須うアイテムである扉の鍵。無くしたらいけないと、ネックレスのようにして首に掛けているのよね。
鍵には、不思議な模様と綺麗な透明の石が飾りのように嵌め込まれていた。
そこからは、不思議と穏やかな力を感じていた。
そっと握りしめると、勇気が湧いてきそうで安心感も…
「気合いを入れないとね。ゲームと同じだけれど、絶対にバッドエンドに持って行ったらダメだもの。」
小声でそう呟いた。きっと誰の耳にも届いていないだろう。
ルディが首を傾げていたから。
今までものすごく違ってて、心配になったりしてたんだけど…でも、側にはいないけれど、あのお方の姿が…間違うはずない。私の最推し。生きていた。あの暴走をどうやって抑えたのかも、あの場所に姿形残っていなかったのに、生きていてくれたのがとても嬉しくて…
とにかく、丸く収まればいいのよ。
そして、できれば最推しとハッピーエンドになってくれたなら…
まだ可能性はある。
洞窟内でのイベントが発生すれば…
そんな事を考えながら、夕闇を眺めた。
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