異世界から来た華と守護する者

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異世界から来た華

君を守るよ

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執務を終えて、自室で軽くシャワーを浴びる。
魔力で髪を乾かして、簡単な寝衣に着替える。

外の月明かりが窓辺から差し込んでいる。
アキコの気配を感じる。

すぐそばの部屋にいる安心感。
少しずつ距離を縮めて、もっと身直に感じたい。

「アキコ………」

そう呟いた時、アキコが悲しんでいる気がした。

いてもたっても折れず、アキコの部屋に向かう。

すぐ隣の部屋だけど、壁やドアなど、アキコとの隔たりが腹ただしい。

身の危険があるわけでは無いから、魔力行使で部屋中に転移する訳にもいかない。
鍵が掛かっていたが、それは解除だ。

ドアをノックして、そっと入る。
「アキコ………」

アキコが涙を袖口で急いで拭っている。

「泣いていたの………」

今にも消え入りそうな、そんな儚さを感じる。
壊れ物を扱うように、そっと抱きしめる。

「ディ…………」

いつもは『様』呼びだが、震えて言えないようだ。
しかし、『様』抜きで名前を呼ばれて歓喜してしまう。

アキコの潤んだ瞳から涙がまたこぼれ出す。

「君が悲しんでいる気がしたから……どうしたの……」

アキコの涙を唇で拭い取る。

紅く染まりながら、恥ずかしそうにするアキコ。
可愛い……愛おしい……と思うのはこの状況ではどうかと思うが仕方がない。

いつもは逃げ出そうと身をよじるのに、その気配がない。

ここぞとばかりに、腕の中に閉じ込める。
アキコの温もりを感じる。

アキコはしばらく泣いていた。
何も言わず抱きしめる。

時折頭を撫でたり、背中をさすったりと…あやしてみる。

「大丈夫だよ……私が側にいる……側にいて……」

そう呟きながら。

しばらくして、泣き疲れたのか、眠りに落ちた。
そっと抱き上げて、寝室のベットに連れて行く。

壊れ物を扱うように、そっとベットに横たえようとしたが、何か違和感を感じた。
無意識で、アキコが私の寝衣の一部を掴んでいる。

そっと外そうとするも外れない。
そのまま、アキコを抱き込んで、横になる。
シーツをかけて……
「アキコ……」
呟くも、彼女の瞳は閉じたまま。

魔力で部屋の明かりを消す。
勿論、部屋には十分な結界を貼ってある。
メイド達は念話で下がらせた。

アキコ、私の番。側にいるよ。側にいて。
離さないよ。
愛してる。だから……悲しまないで。 
君を守るよ……
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