異世界から来た華と守護する者

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異世界から来た華

魔力の暴走寸前に……

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荒れ狂う荒野。
乾いた風に血と焼けただれた臭いが混ざり漂う。
屍の山……
かつて美しい草木でおおわれていたこの場所は今は見るも無残な光景に見舞われていた。

以前より好戦的であった隣国からの襲撃。
彼の国は次々と近隣の小国を飲み込み、帝国へとのし上がろうとしていた。

「我が君!!!ナディル様!!」
「大丈夫だ!!まだいける!!」
「しかし!!!」
「黙れライト!!私はまだ壊れていない!この暴走寸前の魔力をもってしてこの地を守らなくてどうする。他の者達は近ずけるな。巻き込まれるからな……ライト、お前も離れていて良いんだぞ!!」

乱れた軍服。輝きを強める聖剣を持ち、ニヤリと笑う。

止める兄、シリウス現皇帝陛下に上申し、この地に来た。

我がシュナイゼル皇国を犯そうと進軍するアルテカ帝国を撃退すべく
膨大な魔力が暴走寸前の我が身を押して………

どうせ暴走して被害が出るのであれば、今この時に力を使うべきだろう。
この力を持って撃退する。

側を離れようとしないライトを伴い敵陣に突っ込み 、力を使う。
多くの敵を吹き飛ばす……

我が国の皇族男子は時に力の強い魔力持ちが生まれる。
この世界は神も精霊も、魔物もいる。

滅多に姿を現わす訳ではないが、その中でも好戦的な神の末裔が私達シュナイゼル皇国の皇族族だ。

神は巫女に好意を持った。
乱れた戦乱の世を嘆いて…神殿の泉の側で祈りを捧げていた彼女に …
神は巫女の願いを叶え妻とした。

好戦的であった神は妻の願いを叶え荒れ狂う世界を鎮静化させ我が国を建国したとされている。
神の子孫である皇族男子にその力は大なり小なり受け継がれている。

強い力をもつ男子は年齢に応じて力が増す。
子孫と言っても、所詮は人の子。
強すぎる魔力を持つ者はその力に耐えきれず暴走する。

そんな我が子に神は異世界から番を引寄せた。
この世界とは別の世界。全く似た魂を持つ者…
『番』を……

異世界との神との交渉でこちらの世界にやって来るらしいが、詳しくは神のみぞ知る事……

番には魔力が無い。

膨大なな魔力を受け止めるためとも言われるが……
現れる時期はわからない。 
現れる場所も……

暴走寸前の自分の前にはまだ現れていない。
過去にも暴走寸前に現れた例はあるようだ……
現れなかった例は無かったと記憶するが、私の場合は例外かも知れない……
ふとそんな事を考えた……

私も皇族。第2皇子としてこの世に生を受けた。
もしかしたら、この時の為にこの力を授かり、番にも会えないのかも知れないな……
フッと笑みを浮かべる。

魔力が乱れる。
少しでも制御出来るように、兄から渡された聖剣に魔力をのせる。
「さぁ、行こうか!!」
「どこまでも、お伴します!!」

勢いつけて駆け出そうとした時、それはいきなり感じられた…
衝撃が全身を掛けめくる。

「何??この焦燥感は??何処だ……泣いている??…何処にいる?」

急に心臓が凍りそうに締め付けられる。

「我が君??」

姿を探す。向こうに気配を感じる。

「危ない!!」

私は気配の感じる場所へ走り出した。
敵に背を向けた訳では無い。

何故か敵陣の中。荒れた荒野、屍の山……瓦礫の側……そこから感じる。

敵陣を蹴散らし、気配を手繰り寄せ、その者を守るように魔力を行使しながら……
使える全てを使った。
今までの乱れが嘘のようにスムーズに使える。
「今行く……」そう呟きながら………





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