私の恋愛事情

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酔っ払って……

異世界の彼女が気になって……

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いつも覗いていた水晶。
時々不思議な世界が移り出される事がある。

知人の者に一度見てもらい、聞くと、それは知人の家族が住んでいる異世界……『地球』と言う星の『日本』と言う国の一部らしい。
自分が住んでいる世界と似ている箇所があるが、見たことが無いものが多かった。

この水晶は、私が見たい時にその世界が映し出されるわけではないが、今日のように満月の日、時間に関係なく、よくこの『日本』と言う世界が移り出されていた。理由はわからないが…

今日もこの世界では満月で(向こうの世界はどうかはわからない……)楽しそうにカップルであろう者達が楽しそうにしている。
確か『クリスマスイブ』だ『クリスマス』だとかで、家族で団欒を迎えたり、カップルで祝うとか言っていた。
去年の話だが……もう、そんな時期なのか……
そういえば、友人は『家族で団欒をしたいのに、娘が連れ出される!』とか言っていたなぁ…心配だとか……

私には「恋人」と呼ばれるものもいなければ、「愛しい」と思った相手もいない。
特に他の者たちに興味も無かった……
友人達はその事をかなり心配していたが、私自信、気にすることもなかったし、特に不自由する事もなかったから放置していた………そう、今さっきまでは……

たまたま映し出された映像に、女性が映り、何やら悲しそうにしている。
気になって、水晶に魔力を注ぎ、音声を拾うようにした。


レストランで待ち合わせしているのか、窓際の夜景が綺麗に見える席で、淡い色のワンピースを着た少し知的で、可愛らしい表情を見せる女性。時折、鞄から鏡を出して何かを確認しているようだ……

しばらくして、待ち人であろう男性がやって来て、相手は直ぐに出て行った…
出ていく前に何か言われたのであろう。喜んだ顔がだんだん暗くなり、表情が消えた。
泣き出すのではないか……そう思って気になり、音声を拾うようにしたのだ。

彼女の表情でなぜか胸が締め付けられそうになり、去った男を瞬殺したくなった。
今までこんな気持ちになったことがない……何が起こった?
自分の行動が信じられないが、気にしても仕方がない。
そうすると、いつもは自分の希望通り映し出されないのに、彼女を追うように映し出され続けた。

しばらくテーブルに1人で座っていたが、給仕の者が声をかけると、テーブルの空きを待っていたカップルの方に行き

「急用ができたので、良かったら食事食べてください。」

と言って、譲っている。
ほぼ押し付けるようにして、「支払いはしてますから………」と言っていた。
勿論、給仕の者にもその旨を伝え、急いでコートを着てその場を離れている。

今にも泣きそうな表情に抱きしめてあげたい………そんな気持ちになる。
寒空なのか、コートの襟をたて、自分を抱きしめるかのようにし「タクシー」とか言う乗り物に乗って行った。

そこで映像が一旦途切れる。
何が起こっているのだろうか……
そう思い、水晶を覗き込むも、今は映像も音声も無かった。

仕方がないので、この部屋を後にしようとしたら、また映像が映し出される。
慌てて水晶の側に行き覗き込む。

自宅に着いたのだろう、玄関を開けたとたんに、涙が溢れているようだ。
何かで拭ってあげたい……抱きしめて、慰めてあげたいとも思った
重症だ……

カバンをベットの上に放り投げ、服を着替え………そうになって、また切れた……
そうこうすると、また映し出される。

化粧を落とたのか、素顔は綺麗と言うよりも愛らしい感じだ。
テレビとかいう映像が映し出される箱を付けたようだ。

幸せそうな映像が流れるが、真剣に見てはいないようだ……どちらかというと、聞き流しているだけ……
別の場所に行き、缶ビールとお摘みをもって、テレビの付いている部屋のソファーに座っている。
(缶ビールは以前、友人が持ってきてくれたから知っている)

「啓太郎のバカやろう!私は強くなんかないんだから……何でいつもこうなるの……」

ビールを煽りながら、考えているようだ
そんな飲み方をしたら、身体を壊してしまう……

「『彩花は強いから』『アイツには俺がいないとダメなんだ、彩花にはもっと良い男が現れるよ』って何よ!私だってね、強くないわよ~だ!!」
心の中で言ってるつもりなんだろうが……酔っているから、音声としてだだ漏れだ……

ビールを飲むスピードが早くなる。テーブルの上にが数本並んだ。
かなり酔ってる。頬が朱に染まり、フワフワしているようだ……
「もう……どうでもいいや……」

そんな、やけを起こさないで欲しい……

そんな気持ちだった。

飲みすぎないように……そして、声をもっと側で聞きたい……とか思ってしまった。
すると、彼女の部屋の時計が時刻は0時を回る頃、何かが鳴っている。
スマホという物か………ん?スマホが鳴るのと同じ感覚で、連動しているかのように水晶が淡く輝く。

何事かと思うと、うまく操作が出来なかったのか切れた……と同時に水晶の輝きも消えた。

気になるようで、スマホを操作している。

繋がったようだ……と言うか、彼女の友人ではなく、この水晶にだ……

「もしも~し、香澄?こんな時間にどうしたの?って、それより聞いてよ、また私振られてさ……『彩花はしっかりしてるから、俺なんて必要ないだろう』って言われたよ~~私、そんなにしっかりしてるかなぁ……もう、嫌になっちゃうよ。どうせさ、新人の子の事が気になったんだろうけどさ……恋愛経験もあんまり無いし、面白味もなかっらんだろうけどさ……、確かにデートの時、ちょっと手を繋ぐとか、食事に行って別れたりとかだったけど……………」

もう、酔っ払いの愚痴電話でしか無い。
相手の話に合わせて、ただ相槌を打っように返事をした。
そう、彼女の電話の相手は私だ。だが、彼女は酔っていて気付かない……
相手はスマホから、私は水晶を通して話をしていた。

「って、あれ?香澄だよね?でも声が違う?でも、すごく安心できる心地よい声だ……あれ?香澄、声、男の人だよ??」

少し気がついたか?まだのようだが……焦っているなぁ……可愛い。

水晶越しに名前を知ったから、呼んでみる。

「彩花は頑張ったんだね。よく頑張ったね。大丈夫。大丈夫だよ。大丈夫だから、もうおやすみ」

そう声掛けると、そのまま眠りについたようだ

スマホは無意識に切っていた。
かなり酔ってたものね~~~

そして、映像はプツリと消えた。
しばらく待つが、今度は再度映し出されることはなかった。

彼女、彩花の事が気になる。これが友人の言う「一目惚れ?」
彼女に逢いたい。
側に行き、会話して、場合によったら抱きしめたい……
そんな気持ちが湧き上がる。

また、彼女の姿が見られるだろうか……
いっその事こと、次元を飛び越えて会いに行こうか……
そんな事を真剣に考えてしまった。

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