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時は過ぎ
呼び方を変えて
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グレイスが部屋に入って来る。
亜希子がキョトンとしている。
そして、小声で呟いているなぁ…
「黒髪に黒い瞳の…………、魔術師団長さん??さっき別れたけど何故ここに??もしかしてこの方が?」
声に出していないつもりなんだろうなぁ……昔と変わらない。
昔も『何で心の中で呟いたのに知ってるの?』ってよく言っていたな~~~動揺してたり、緊張してる時だけど……『声に出てたよ』ってそっと教えてあげたら、顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたなぁ……可愛かったけど……
ついつい、昔のことを思い出してしまっていた。
キョトンとしたまま、亜希子はグレイスを見ている。
グレイスはニコニコしながら軽く礼をとって亜希子の側に来た。
「先程ぶりです…アキコ様。この前のトーナメント戦と先程の紹介以来ですね。トーナメント戦見にこられてましたよね?食事時には話せませんでしたが…」
トーナメント戦?この前の『豊穣祭』のかな?出るって言ってたから、私も見ていた。その時居たのか……気がつかなかった……もしくは、観戦した試合が違うのかもしれない。
もう一箇所でもトーナメント戦があったから……
それよりも、肝心な話をしないと……
「アキコ、食事の時にも会いましたが、改めて…彼は私の息子です。さっき話した養子として育てた兄妹の長男で……」
「グレイスと言います。父から話を聞いたと思いますが、今日から私の娘になりませんか?」
グレイスは亜希子の手を取り声かける
「今日から!?魔術師団長さんの??」
チラッと私の方を見て来る亜希子。
緊張して、プルプルしてる。本人気がついてないだろうなぁ……保護意欲を掻き立ててる。
グレイスも見入っている。カイルは……私を見て微笑んでる。
ここは妹を見るところだと思うのだが……
「えぇ、私の妻も喜んでますし、父からも聞いたとは思いますが、決定事項なので。」
「…………………」
「今からは、アキコと呼ばせていただきますね。娘ですから……私の事は父上でも、ダディでもパパでもいいですよ。」
「あの~~~~」
「こんな可愛らしい娘を手に入れ………ではなく、迎えれて我が家は幸せです。」
グレイス、今、『手に入れって』言った?
大丈夫かなぁ……
思わずため息をついてしまった。
カイルはクスクスと笑っている。
「亜希子。グレイスは心の優しい、面倒見のいい子です。亜希子の味方にもなるし、グレイスが是非父親になりたいと言ってきたんです。グレイスの妻も良い娘で、娘ができると喜んでいましたよ。グレイスには2人子供がいて、どちらも騎士団に入っているから、何かの時には守ってくれるでしょう。」
他の子達も亜希子を養女に希望したんだけど、それは伏せておこう…
「兄様……では、兄様は……兄様でなくなるのですか?」
亜希子が今にも涙が出そうだ…
亜希子のために良かれと思った事なんだけど……受け入れ難い?
泣かすつもりないのに……
私は亜希子の側に行き、そっと抱きしめた。
そして、諭すように亜希子の顔を覗き込んで話す。
「亜希子……私はいつまでも君の兄だよ。でも、世間体を考えたらそれでは君が辛い思いをする。だから亜紀と呼んで。お爺様でも良いよ。出来たら 亜紀が良いけどね。亜希子は特別だ。皆んなにもそう伝えておく。私があえてそう呼ばしていると……だから安心して。」
本当は兄と呼んで欲しいんだよ。
昔と同じで……だから、泣かないで……
「兄様………」
「亜紀だよ」
「亜紀……」
私は頷いて笑った。
多分泣きそうな顔になっているんだろうなぁ……
「妹」を「妹」と呼べないのは悲しい。
また、「兄」と呼ばせてあげれないのも…
そう日頃呼んでいたら、きっと公の場でもそう呼んでしまうだろう。
それではいけないんだ……分かっている。
亜希子も分かっているんだろう……
この時から私は『亜紀』と、カイルを『カイル』。
そして、グレイスは父となった。
全ては亜希子の為………受け入れるしかない。
呼び方は、場合によってはまた変わるかも知れないが……
話がとりあえず終わり、また明日と部屋へ促す。
今後の事を簡単に話し、明日詳しく教えるとのことで……
別れ際、亜希子が私の服の裾を引っ張ってくる。
昔、よくしていた仕草で……
寂しい時、そばにいて欲しい時に亜希子はよくそんな事をしてきた。
呼び方が変わった事で不安感が、寂しさが増したのだろう。
そっと抱きしめる。
「仕方ないね……」
そう言って、カイルにそっと断りをいれて、私と部屋を出た。
亜希子の寝室に向かい、昔したように添い寝する。
背中を摩り、『大丈夫だよ』と声かけながら腕の中に抱きしめた。
私の大切な妹。
亜希子は私の服を握りしめ、すがり付くように眠っている。
「亜希子。大丈夫。私の出来ること全てで護から。幸せになるんだよ……」
そっと額に口づける。
昔はこんな事まではしなかったが、この世界での影響か……
亜希子の寝顔を覗き見る。
幼い時と同じ寝顔だ……
そして、私も眠りについた。
亜希子がキョトンとしている。
そして、小声で呟いているなぁ…
「黒髪に黒い瞳の…………、魔術師団長さん??さっき別れたけど何故ここに??もしかしてこの方が?」
声に出していないつもりなんだろうなぁ……昔と変わらない。
昔も『何で心の中で呟いたのに知ってるの?』ってよく言っていたな~~~動揺してたり、緊張してる時だけど……『声に出てたよ』ってそっと教えてあげたら、顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたなぁ……可愛かったけど……
ついつい、昔のことを思い出してしまっていた。
キョトンとしたまま、亜希子はグレイスを見ている。
グレイスはニコニコしながら軽く礼をとって亜希子の側に来た。
「先程ぶりです…アキコ様。この前のトーナメント戦と先程の紹介以来ですね。トーナメント戦見にこられてましたよね?食事時には話せませんでしたが…」
トーナメント戦?この前の『豊穣祭』のかな?出るって言ってたから、私も見ていた。その時居たのか……気がつかなかった……もしくは、観戦した試合が違うのかもしれない。
もう一箇所でもトーナメント戦があったから……
それよりも、肝心な話をしないと……
「アキコ、食事の時にも会いましたが、改めて…彼は私の息子です。さっき話した養子として育てた兄妹の長男で……」
「グレイスと言います。父から話を聞いたと思いますが、今日から私の娘になりませんか?」
グレイスは亜希子の手を取り声かける
「今日から!?魔術師団長さんの??」
チラッと私の方を見て来る亜希子。
緊張して、プルプルしてる。本人気がついてないだろうなぁ……保護意欲を掻き立ててる。
グレイスも見入っている。カイルは……私を見て微笑んでる。
ここは妹を見るところだと思うのだが……
「えぇ、私の妻も喜んでますし、父からも聞いたとは思いますが、決定事項なので。」
「…………………」
「今からは、アキコと呼ばせていただきますね。娘ですから……私の事は父上でも、ダディでもパパでもいいですよ。」
「あの~~~~」
「こんな可愛らしい娘を手に入れ………ではなく、迎えれて我が家は幸せです。」
グレイス、今、『手に入れって』言った?
大丈夫かなぁ……
思わずため息をついてしまった。
カイルはクスクスと笑っている。
「亜希子。グレイスは心の優しい、面倒見のいい子です。亜希子の味方にもなるし、グレイスが是非父親になりたいと言ってきたんです。グレイスの妻も良い娘で、娘ができると喜んでいましたよ。グレイスには2人子供がいて、どちらも騎士団に入っているから、何かの時には守ってくれるでしょう。」
他の子達も亜希子を養女に希望したんだけど、それは伏せておこう…
「兄様……では、兄様は……兄様でなくなるのですか?」
亜希子が今にも涙が出そうだ…
亜希子のために良かれと思った事なんだけど……受け入れ難い?
泣かすつもりないのに……
私は亜希子の側に行き、そっと抱きしめた。
そして、諭すように亜希子の顔を覗き込んで話す。
「亜希子……私はいつまでも君の兄だよ。でも、世間体を考えたらそれでは君が辛い思いをする。だから亜紀と呼んで。お爺様でも良いよ。出来たら 亜紀が良いけどね。亜希子は特別だ。皆んなにもそう伝えておく。私があえてそう呼ばしていると……だから安心して。」
本当は兄と呼んで欲しいんだよ。
昔と同じで……だから、泣かないで……
「兄様………」
「亜紀だよ」
「亜紀……」
私は頷いて笑った。
多分泣きそうな顔になっているんだろうなぁ……
「妹」を「妹」と呼べないのは悲しい。
また、「兄」と呼ばせてあげれないのも…
そう日頃呼んでいたら、きっと公の場でもそう呼んでしまうだろう。
それではいけないんだ……分かっている。
亜希子も分かっているんだろう……
この時から私は『亜紀』と、カイルを『カイル』。
そして、グレイスは父となった。
全ては亜希子の為………受け入れるしかない。
呼び方は、場合によってはまた変わるかも知れないが……
話がとりあえず終わり、また明日と部屋へ促す。
今後の事を簡単に話し、明日詳しく教えるとのことで……
別れ際、亜希子が私の服の裾を引っ張ってくる。
昔、よくしていた仕草で……
寂しい時、そばにいて欲しい時に亜希子はよくそんな事をしてきた。
呼び方が変わった事で不安感が、寂しさが増したのだろう。
そっと抱きしめる。
「仕方ないね……」
そう言って、カイルにそっと断りをいれて、私と部屋を出た。
亜希子の寝室に向かい、昔したように添い寝する。
背中を摩り、『大丈夫だよ』と声かけながら腕の中に抱きしめた。
私の大切な妹。
亜希子は私の服を握りしめ、すがり付くように眠っている。
「亜希子。大丈夫。私の出来ること全てで護から。幸せになるんだよ……」
そっと額に口づける。
昔はこんな事まではしなかったが、この世界での影響か……
亜希子の寝顔を覗き見る。
幼い時と同じ寝顔だ……
そして、私も眠りについた。
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