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調査です

兄と交渉

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兄が来た途端、全てがスムーズに流れている気がする。
流石兄上。

サクサクと、この土地での汚職問題や、武器の密輸なども摘発していった。
どうも、隣国との取引を、前領主が退いてからやり始めていたようだ。
父よりも、自分が上手く領主経営が出来ているように見せたかった……理由がそれのようだ。
ついた当初は彼なりに頑張っていたが、父のようにはいかず、父の手足として動いていたもの達との衝突も、かなりあったとか……
経営が落ちていき、悩んでいた時、あの宗教関連と関わりだして、現在に至ったようだ。

いつの世も、どこの世界にも有る事なのかもしれない。
樹々の伐採も、武器の密輸も彼らから持ちかけられ、のせられらたようだ。
当初はスムーズに運んだが、流行病の発症や、街の治安が悪くなりだし、また、隣国からのプレッシャーもみられだしたため、どうにも行かなくなり出した。
流行病に対しては、初めは患者達に薬の調達や食料支援をしていたが、数が増加し、死者数も増えたため、封鎖しそのまま焼き払うつもりだったとか。
領地は隣国に密かに渡して、隣国での身の保証を得ていたらしい。

なんとも言えない。落ちるとこまで落ちているよね。最低!!

今回の事件における領主関係者は、全て捕らえたと言っていた。
多分、極刑となるだろう……

前領主から、身分などの返納を言ってきたと、兄が言っていた。まぁ、当然と言えば当然だろう。
でも、ここの領民は、彼の事を慕っていたしなぁ……
それだけ良く収めていたと言うことだよね。
ウィルも同じ考えだと思う。

「兄上、お願いがあるのですが」
「どうした?」

クロさんに調べてもらった資料と、ウィルと私が確認した物を、まとめた物を兄に見せている。

「これは?」
「はい。もし良ければ、この者に、領主としてついてもらいたいと思います。彼女は今回問題を起こした者の妹ではありますが、父親に代わって、違う土地、この隣の小さな領を養子である夫と治めています。この2人の手案はこの通り、すばらしいと思います。元々2つとも前領主が納めていたのですが、体調不良などもあり、2人に治めさせていたとの事。ならば、彼女達にこの地も治めさせていただいた方が、領民も安心するでしょう。彼の暴挙も、妹夫妻の治めている所と比較されて、起こったのも一因ですから……」
「ん~~~~」
「兄上、他の貴族にこの地を任せるより、この地を知っていて、しかもしっかりと治めれる者がいるのなら、その方がいいと思います。兄の尻拭いをさせるわけではないですが、その方が領民も安心しますし、我が国に対して新たに忠誠を誓う事でしょう。」

ウィル、頑張れ!!

「はぁ………なるほどね、よく調べあげてるね。その方が良いかもしれない。一度会って話を訊いてから決定したいけど……」

ふふふっ、そう言うと思ってたのよ……

「そういうと思って、呼んでます。シロさんに頼んで、呼びました。」
「リリィ?もしかして、こうなる事を予測してたの?」
「ウィルと相談して……ね。」

訪れたのは、彼女、アルティマ・クロランスと、その夫、カルロス・クロランス。
2人は幼なじみで、アルティマは経営・経済学を幼いころから好んで学んでいたとの事。
夫はそんな彼女を護るべく、武術を極め、育成にも勤めていた。
そして、趣味として農地経営を楽しみ、2人でクロランス領の隣、アルテシア領を治めていた。

これは、調べて知った事もあるけど、実はゲームの中でも実在していたから知っていた。
ウィルと2人で、知っている情報をかき集めてみたんだ。
ゲームって、2人ともが同じルートで全て同じとは限らないじゃない。
ただ、ゲーム上では今回の事件はまだ先のはずだったんだよね。
そして、ゲーム上では、この事件の前後で彼女達は兄に殺されていた。

兄の強い嫉妬と、あの宗教関連からのさしがねで……

殺されてなくてよかった。
間にあった。

クロさんとシロさんに調査してもらい、未然に防御してもらったんだ。
勿論、クロさんとシロさんは、いつ通り、彼等も使ってたけどね。
犬呼ばわりしながら……
彼らも良い仕事したよ。本当に。
犬呼ばわりやめたら良いのにね~~~

ウィルが、前領主にも、アルティマ達にも、今回の提案はあらかじめ話してある。
前領主は返納を言って来たが、アルティマ達は、もし叶うならと言っていた。

叶うなら、父親を説得し、領民に尽くすと。
そして、この国に対して新たに忠誠を誓うと言ってくれている。

幼い頃から知っている領民を護りたい……本当は、兄の手助けをしたくて、頑張って学んできたとも言っていた。
兄には拒絶されたようだが……
彼は、かなりプライドが高い感じだったからなぁ……

でも、これで上手く行けば、今後の治世がスムーズにしかも安泰で行われる可能性が上がるよね。
そうすると、ウィルの危険性も、きっと減るはず……

「流石、我が弟、妹だな。でも、やり過ぎは心配するから、今度からは事前に相談してほしいなぁ……」

兄上は苦笑いだ。

「わかった。今回の件は父上から僕に任されてるから、その方向にするよ。その方が良いだろうしね。それはさて置き、ウィルとリリィは城に戻るように。」
「………」
「何か言いたそうだね。」
「行きたい所があるんだ!!」
「絶対、行かないといけないの!!」

兄が渋面になる。

「何を企んでるの?」
「それは………」
「言えないのなら、それは却下だ。ジークに連れて帰るように言うけど?」

それは困る。兄の部下だけど、彼は苦手だ。
上手く相手できる自信がない……
ウィルもそう考えてる……そんな表情だ。

「言えば、行かせてくれるなら……」
「勝手に行くもの……」

「とにかく、言ってごらん。お前たちの事だ、何かあるんだろう?なら、場合によっては協力も出来る。少しは兄を頼って欲しいな。そんなに頼りない?」

「「その言い方は、卑怯だ!!」」
「お前たちの兄だからね。可愛いお前達を少しは護らせて。さぁ、どうする?」
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