オメガ転生。

学園生活

事件です(夕霧)

主人から護衛対象とされている者。
そう、暁　翔が保健室に運ばれた。
運んで行った相手は、彼と幼馴染であり、彼を密かに恋慕している者だ。

主人と番である暁　翔との関係は多くの者が知らない事だ。
知らされていないと言うこともあるが、番いがまだ未成年であったと言うこともある。

いくら番いとは言え、未成年者を親元からよほどの理由がない場合離すことはできない。
余程の理由。それは、親元での虐待や、余程の理由で保護できないという事だ。
両親と死別や、病気などで育てられない等。

暁　翔はそれらに当てはまらず、家族に愛されており、経済的にも安定した家庭であったため、主人が完全に囲い込むことが出来なかった。
初めての出会いは、雨の中、彼が焦燥して飛び出て来たところを保護したのだが、その理由が本人がオメガ性であった事に対しての絶望だった。主人にとっては良いことであるが、家族がアルファであり、自身1人がオメガであればそう言う衝動に駆られても仕方がないのだろう。
私には理解できないことであったが、護衛対象として常日頃見守って来たから、今では理解できるようになって来た。
まぁ、まだ全て理解したわけではないのだが…

私と沙霧は主人とは同族ではあるが、幼少の頃引き取られた。
両親が育児放棄したため、転々と引き取られ、最後に引き取って育ててくれたのが主人だ。
同族でも、妖力によっては容姿も寿命も違ってくる。
自分達は決して妖力が強い方ではなかった。
そのために捨てられたようなものだが…
しかし、主人は妖力が強くなくてもそれ以外の術で他より上回れば良いと色んなことを授けてくださった。
お陰で、姿も変えられるし、他の者達にも負けないと自負している。


それでも、護衛対象である主人の番いである翔は人であり、オメガでもあるのだが、時に突拍子もない行動をするから目が離せない。
いい意味でも悪い意味でもだ。

明らかに体調を壊して運ばれた翔。その運んだ相手に何かされても困る。
急いで追いかける。
保健室には、いまの時間保健医は不在だ。
何処に居るかわかっている。
同僚に合図し、戻るよう手配する。
そして、偶然に保健室の前で出会ったように見せかけて…
カタンとドアの音をわざとたてて入った。


「景正君いる？先生が呼んでるよ」

よかった。間に合ったようだ。

「高藤君、君はクラスに戻りなさい」
「田村先生」
「大丈夫だから、早く、夕霧君が待ってるし」

保健医の田村先生のそばから彼を呼ぶ。
後ろ髪引かれてるみたいだろうが、そんな事は関係ない。
彼と共に田村先生に後をお願いして、教室に戻った。
彼も主人がよこした者なのだから…

翔の顔色はまだイマイチだが、少し眠れば良くなるだろう。
後は、他の仲間に任せればいい。
沙霧にもそう伝えておこう…