竜の恋人

文字の大きさ
上 下
215 / 216
運命が回る

そして…

しおりを挟む
カルロスの無事を確認した数日後、夫から相談があると、彼の執務室に呼ばれた。
やや疲れ切った表情であるが?
それに、王太子殿下と王弟殿下が彼の執務室のソファーに既に座られていた。

思わず手にした扉を閉めてしまおうと…

「優里。何処に行こうと?まぁ気持ちはわかるけれど…」

苦笑いしながら近づく夫に阻まれて手を取られて、そのまま腰を抱かれて室内に促されてしまった。
一緒に来たシルバーは廊下で待機だ。

室内には、我が家の家令だけが許可されているようで、みんなの分のお茶の世話などをしていた。

夫の横に座らされて、殿下方と対峙するように座る。

「多重に結界を張っておいたから、他にも話が漏れる事はない。まぁ、数日後には一部公表するんだけどね。」

そう言って話し出したのは、義理の息子。カルロスの夫となったジャディール殿下だ。
まぁ、もう一人も義理の息子になるんだけれども…


貴族バランス的にはどうかと思うけれども、こればかりはどうしようも無い。
この国ではあるあるの話らしい。
何せ、竜人族。運命の番に対しては、ほぼ絶対的に囲うしね…
これを余程で無い限り妨害しようものなら血の雨が降るらしい。

余程の事。
そう、運命の番に出会う前に、相手がその事に気づかず他者と婚姻している場合だ。
竜人族にとっては運命の番の幸福が絶対。相手が家庭を持っている場合は、泣く泣く見守る態勢になる。
虐待行為などをされていた場合は引き離して自分のものにしてしまうらしいけれど…
後、婚姻していたが、何かしかの諸事情で独り身になっていた場合も…

まぁそれはあくまで余談だが。

「実は、今代の聖女の件だ。過去の聖女達もだが、聖女自身に『運命の番』が存在していた場合、その国の者に嫁がせる事になっている。身元引受人は、国同士のバランスも考え、また受け入れ先もだが。で、今回は我が国が身元引き受けとなった。」

そこで一旦お茶を口にして、長い足を組み直してさらに話が続く。

要は、今回の聖女。まぁ神の所為ではあるけれど、我が息子に迷惑をかけたあの少女を我が屋敷に受け入れるようにとお達が来たという事だ。
我が家はそれなりの貴族。しかも、王室とかなり関係をきしている。
あの少女も出来ればと言って来たらしい。
そこまで言われてしまえば…断る選択肢はほぼ皆無だ。

「そうなのですね…はぁ~~~~。」

一旦大きなため息が出てしまう。
彼らの前では本来は不敬な行為であるが、そこは仕方ないと許してくれていた。
苦笑いはされていたけれども…

「わかりました。子供達もほぼ独立しましたし、屋敷には部屋は十分にありますしね。子供達には?」
「あぁ、明日にでも説明しようと思う。カルロス以外だがね。あの子は既にアカデミーに戻ってしまっているからね。向こうに行く用事があるから、その時に面会の申請を出して直接話すつもりだ。」
「義母上、私の方から先に伝えておきます。同じアカデミーに居ますからね。私は講師ではありますが、既に婚約者としても周りに周知されていますから。婚姻についての周知はあの子の卒業と同時にと考えています。今は学業に、学生生活に謳歌してもらいたいのでね。」

うん、かなり自重してくれているみたいだ。
本来なら、結婚していることを周りに周知したいのだろうけれども、そこは息子の事を考えてくださっているんだ。
ありがたいと思う。

「それで、彼女は…」

それから、いつこの国、この屋敷に来るのか。アカデミーにも入るらしく、その辺りの事も大まかに説明と相談をして、今回はお開きになったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑

つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。 とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。 そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。 魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。 もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。 召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。 しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。 一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

一年で死ぬなら

朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。 理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。 そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。 そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。 一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...