竜の恋人

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運命が回る

運命が回り出す

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休憩を挟みながらとにかく先に進んで行った。

ヒト族の括りに入る私や姉、そして息子のカルとかは、竜人族とか魔人族と言った種族間の違いか、体力差がかなり激しい。
カルの場合は父親が竜人族だから、普通のヒト族よりは体力があると思ったけれど、日頃の甘やかされ状態のせいか、うん、体力落ちているみたい。私と姉は…年齢は関係ないわよ。ほら、女性と男性の違いよ。それ以上の追求は許さないわよ!後、夫達の甘やかしよきっと。

初代聖女のアカリや先代聖女である姉がカルや皆んなに癒しを施すんだけどね。でも、癒しの回数がどうしても多くなる。そうなると、番が抱き上げて歩こうとして…魔獣も魔物も出て来るダンジョン内だし、恥ずかしいし、討伐に支障が来る。よって、頻回の休憩が挟まれていたのよ。

向こうは向こうで現役聖女がいるから良いでしょう?聖女に対しては、神からの印が与えられた者が癒しを施すのだから。癒しあいをしてるから、関係ない。
そう言い切りたいんだけど、息子の友人が向こうにいるしね…確か友人の『スレイン』だったかしら?彼の事は心配しているのが丸わかりだ。確かエルフ族だったと思うんだけどね…
あの種族は、見た目と実際の体力のギャップが結構あるのよね。
でも、休憩は必要だと思う。いざという時に体力も気力もすり減ってしまっては元も子もない。
空腹も天敵だと思うしね。

で、全体的に一緒に行動しているから(多少離れて入るけど)ほぼ近くで休憩を取る。まぁ、聖女達とは少し距離を置いているけどね。またあの聖女である愛が、私の可愛い息子にちょっかいをかけられたらたまったものではない。それに、息子の番であるジャディール殿下に恋情で迫られても困る。息子を悲しませる者は、私が許さないわよ!
いくら自分の推しだからって、奪い取ろうって魂胆が気に食わない。
本人の意思がそうさせるのか、それともあの身体に潜んでいる神がそうさせているかはわからないけれどね…

それ以外にも、休憩中に魔物や魔獣が襲ってこないとも言い切れない。
扉に近づくに連れて、凶暴性を増して来ているし、数も増えて来ている感じがするから。
で、結果、聖女一行とこちら側の二つの結界が張られていた。
普通の結界なら、聖女達が息子に近づこうと思えば近づけるんだけど、息子に対して彼女が色々やらかしていたから、特に彼女だけは息子達に近づけないようになっていた。

洞窟内に入る時には、そこまであからさまに毛嫌いはしなかったんだけど、ほら、大人の対応よ。でも、洞窟内でのあの叫びが決定打になったのよ。ホント信じられないわ~。

聖女達巡礼メンバーがこちらに用事がある場合は、友人のスレインを通すように。彼の手が離せない場合はルディウス殿下がと言う風に窓口指定。伝達魔法陣を使っても良いけれど、枚数が減って来ていたからね。
スレインはカルの友人だし、ルディウス殿下は癒しの魔法が得意なロザリアン神聖国の第二皇子であり、光魔法保持者で聖職者として国に貢献している。以前聖女の魅了にかかっていたらしいけど、今は大丈夫だと彼、スレインが太鼓判を押したから取り敢えず様子見で許したのよ。スレインは何故か魅了はかからないらしい。多分王族の何かを持っているんだろうね。

「マスター。お茶をどうぞ。皆様も。」

そう言って、ディアブロがみんなに給餌をし出した。
一体どこから出してるんだか。異空間収納?そうなんだ。
あの時もそうだけど、今も規格外の男だ。

「ちょっと、どうして向こうはあんなに優雅なお茶タイムしてるのよ。私は聖女なのよ。私こそお世話されるべきじゃない!!」

向こうでまたそう言って怒り狂い出した。
召喚された時の可愛らしく活発な少女の姿だったと聴くけど、何処に行ったのか?
もう、遠くに飛んでいったんだろうね。
今では小学生低学年か幼稚園児の駄々っ子のようだ。

「ディアブロ、向こうにも少し分けてあげて。」
「え~っ、どうしてですか?」

優しい息子がそう言うのを、ディアブロが思いっきり嫌そうだ。
だが、聖女はアレでも、他のメンバーはマシかも知れないしね…
それなら…哀れだし…

「マスターがそう言うなら仕方ありませんね。では、少しだけお届けして来ます。」

ディアブロが折れたようだ。結界から抜けて向こうに籠を持って行った。
籠の中には簡単なティーセットとサンドイッチを入れているとも言っていたから、少しは小腹が膨れるだろう。
お腹がすけば、イライラが募るしね…

「それにしても、聖女ってあんな感じでした?」
「何だか幼子みたいですね。でも、確か十六歳ぐらいですよね。」
「そうだったと思うんだけれども…」

いつの間にか人数増えてるけど気にしない。
だって、元々この人数だったのを知っているから。一人足りないけどね…

元聖女の姉達と私で仲良くお茶会状態。
もちろんカルも引っ張り込もうと画策中。
それを見守りながら、蠢く魔物達に対して『鬱陶しい!』と言って夫達が周りで無双し出した。
息子達は魔石を拾い始めて…
何と言うか…さっきの緊張感どこにいった?
気分はピクニックダンジョン?

あの子のスキルである英霊の一人、アルストが向こうのメンバーを憐れみ出して、他の者も仕方なくと言った感じで、向こうが休んでいる間は周りに現れた魔獣と魔物を討伐するため重い腰を持ち上げた。

「聖女はどうでもいい気がするんですけどね。」
「メンバーがあまりにも哀れで…」

そう言いながら…狭い洞窟内も気にせずサクサクと討伐していった。
楽しんでるよね。絶対ウキウキしてるよね~
多いにそんな気がする。

「ふぅ~、良い運動ができた。」
「あぁ。」

向こうで良い汗かいたみたいな雰囲気に、巡礼メンバーのマルクスとマリエットが反応した。
あの男は、息子が抜けた後に騎士から選抜された竜人族だ。
彼の名前は?そうそうグレナダだ。彼は後から印が浮き出て来たとか?
夫からそう教えてもらっていた。
カルが抜ける前に刻印の様な印が薄らと浮かんでいて、抜けた途端にくっきり浮き出たらしい。
付与したのはあの二神のはず。聖女の愛は、自分の推しであるジャディールにその刻印が現れる事を期待してたみたいだけどね。残念でした~。


「さて、そろそろ先に進みましょう。」

向こうの茶器等も片付けた後、ディアブロはさっさと私達の元に戻って来た。
愛も、もう諦めたのか、渋々立ち上がり、先頭メンバーと一緒に歩き出す。
時々こちらをみてるけどね。諦めが悪いなぁ…

「後、もう二箇所ほど分岐点を過ぎれば目的地です。」

先行調査で調べてくれていた二人の英霊がそう伝えてくれる。『よし!』と皆んなで気合を入れ直したのだった。
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