竜の恋人

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異世界の扉

試練

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『そのまま閉めよ!我が力を貸す!!』

頭の中で声が響く。
この声は…

「アルメルア神…」

小声で姉がそう呟いた。
これがその神にお声…

『このアルメルアが力を貸す。しっかり踏ん張って閉めるが良い!』

姿は見えないが、背中に温かいものを感じる。
背後にアルメルア神が存在して、私達二人に力を分け与えてくれている…そんな気がした。

ギギギギギッ

まるで錆びついた鉄の扉を閉めるような音と感触。
だが、神の助力のお陰か、何とか後わずかという所まで締め切った。
そう、後二、三センチってぐらいに。

向こうも扉から出たいのか、急に悪あがきのように腕が出始める。

「また出てきた~~」
「引っ込め!!」

二人でガンと閉め切り、一部千切れた腕が下でピクピク動いていた。
気持ち悪いと思うけれど、今はそれどころではない。


『ユウリ、鍵を挿すのじゃ!』

そう指示されて、ハッとする。
そう、鍵が私の掌にある…
掌から剣を具現化させる。そして、短剣を取り出して鍵穴に差し込もうとした時、見えてしまった。
そこから伸びる不吉なもの。
枯れた枝のような、蔓のような…
見ようによっては腕のような物が…

なにこれ~~~~

「ユウリごめん!!」

握りしめていた手を叩かれて、短剣を下に落としてしまった。
剣を鍵穴に挿しこまないといけないのに…

一瞬呆然として落ちた短剣を見つめてしまうと、背後から声がした。

「沙也加!ダメだ。俺がやる!!」

いつの間に来たのか、姉の背後にエドワードが剣を杖のようにして立っていた。
だが、姉はその声を振り切り、急いで転がった短剣を取り、自分の手を傷つけて血を纏わせてから、思いっきり挿しこんだ。

ガチャンと鍵が施錠され、伸びてきていた蔓のような物が、姉の腕に絡まっていく。

「ウッ…アァアアアアアアアアアアア!!」

勢いよく姉の魔力が流れ出ていくのを感じる。
双子だから体感するのか…
巻きついていたものの先端が姉の腕に食い込んで…

バチバチバチ

いきなり火花が散って、姉に絡みついていた物が黒く燃え、粉々になって消えて行った。

「大丈夫ですか?」

燃やし切ってくれたのはディアブロだったようだ。
エドワード殿下も魔法で剥がそうとしてくれていたが効果がなく、姉を庇うように抱きしめて魔力を流し込んでいた。私は呆然と座り込み、アルホンスが庇いながら抱き上げた。他の者達は周りに飛び交う悪魔を寄せ付けないようにしながら討伐していった。

「あぁ、何とか扉は閉じたようです。ですが…今はとにかくこれらを片付けましょう。ユウリ様、サヤカ様を連れて一旦下がりましょう。手当が必要ですから。エドワード様もアルホンス様もこの階段は崩壊しますから、降りながら討伐していきましょう!!」

ディアブロが無茶振りな指示を出し、それが今の最善と素直に行動を起こしたようだ。
姉が燃えるように痛む腕を抱え込みながら、意識が落ちていくのがわかった…
体感していた感覚は、なぜか切れた。
アルホンスが何かしてくれたのだろう。

『サヤカ。よくやった。が、残念だがあやつを取り逃してしもうた。』

悲しそうに響く声…
だが、とりあえずの最悪は免れたんだよね…
姉が頑張ってくれたんだ。なら、私もこの後頑張って何か手伝わないといけない。
そう思いながら、今は素直にアルホンスの腕の中で守られながら壊れていく階段を降りて行った。
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