竜の恋人

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異世界の扉

試練(シルバー)

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もう、どれぐらいの月日が経ったのだろうか。
かつての自分は、神に使える騎士であった。
神の御心のまま、神が邪悪とした物を滅失、神を守る者。
神の剣であり、盾であった。
神のお側に仕え、その栄光に酔いしれていたのかも知れない。

神の世界にも色んな方々がおられる。
我が神を陥れようとする神も実在した。

神は基本自己中心的だ。
自分がその世界を創り上げているのだから、それは当たり前なのかも知れない。
創りがげる神もいれば、また反対に破壊する神も存在する。
他の神が創り上げたものを、必要以上に破壊する神もまた存在した。

ただ破壊される事を受け入れられないから、抵抗もする。
理にかなった破壊なら受け入れられるが、そうでない場合…

我が神が悲しまれるから、自分は敵わないとわかっていても、その力を振るい、結果がこの姿だ。
我が神が今どうしているのかはわからない。
神にも寿命のようなものはある。神力が落ちれば身体が朽ち果て、新たな身体に再生される。
完全消滅させられない限りは、それを繰り返すと話されていた。
力の無いものは、神の消滅とともに消え去るが、力あるものは取り残される。
だから、我が神がどうなってしまったのかは、自分にはわからない。
自分には力があったと思うから…
ただ、力があったとしても、挑んだ神にこのような呪いをかけられた。

自分の魔力属性分の種類に分けられ、更に分離されて…
握りしめていた剣は、封印の鍵として…

どんどんと寂れていく自分の剣を守るようにここにいた。
そう、スライムとしてだ…

思考が途絶えそうになった時、衝撃が走った。
自分の見知ったものを感じ取ったのだ。
急いでそれを辿っていく。
かつての身体のように駆けていけないのが歯がゆい。

やっと辿り着けば、そこには一人の少女がいた。
見た目と実際の色が違うのが理解できた。
この少女は、我が神と同じ黒を纏いし者だ。今は金色の髪に蒼い瞳であるが、実際は黒い髪に黒い瞳の。
何らかの理由で元の姿には戻れないだろう。
そして、その少女には、彼の方の欠片が…
彼の方は、もう…
だが、それでも、ここに来られた。この私の目の前に。

『その者を支え仕えよ。』そう頭の中で鳴り響く声は、あの時の…

封印を解いていただけなければ、お仕えすることはできない。
案内しなければと、必死でアピールすると、この方は微笑んでついて来て下さった。
変えられてしまった私の今の現状の姿と行動に驚かれたが、嫌がれてはいないようだ。
そして、その方は、封印の鍵となる剣に手を伸ばされた。
初めはぎこちなく。そして更に…
びくともしない剣に悩んでおられたが、頑張ってくださり、その身から流れ出る血液を通して魔力を注いでくださった。
剣の封印が解け、力を取り戻した時、大切な方のお力が抜けて、意識が途絶え出す。
慌てて支え、自分の名前をお伝えしようと思ったが、その名前がもう過去のものとなってしまった。
新たな名前が必要だ。そして、この方のお名前を教えていただかなくては…

「我が君。お名前を教えてください。そして、私めに名を与えてください。」

震える声で懇願する。

朦朧としながらも、小さく掠れた声で呟かれた。

「秋本 優里 。名前はみんなユウリとかユーリと呼んでくれている…綺麗な髪ね。シルバー…」

私の中で彼女の魔力が定着した。
可愛らしいお声は、閉ざされた唇で聞くことはできない。

この方の真名が『秋本 優里』なのだろう。誰しもが呼んで良い名前では無い。真のお相手やそれに繋がる者以外は口にしてはならないお名前。そして、『ユウリ』もしくは『ユーリ』と呼ぶ事をお許しになってくださった。
私の髪色を綺麗だと言われ、『シルバー』と与えられた名。

朦朧とされていたから、目を覚まされたら、今の事をお忘れの可能性が高い。だが、私とユウリ様との間にはもうしっかりと結ばれている。

「これから、しかとお守りいたします。私は貴方様の剣であり盾。」

眠っておられるマスターに忠誠を誓う。
この場を出て、気がつかれれば、もう一度更なる忠誠を誓おう。
もう決して離れない事をお約束して。

この地を去る前に、神より授かりし物。守ってきた物を異空間に仕舞う。
そして、そっと大切な主人を抱き上げて、この地を去った。

去った途端に崩れ去ったのは言うまでもない。



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