竜の恋人

異世界の扉

異世界の扉

上空から次々と仲間が地上に降り立つ。
器用に他の者達も竜体から人の姿に戻っていた。
騎士服に付いたマントがひるがえす事はあっても、綺麗に降り立つのはさすがとも言えた。

「優里？」

ついつい騎士達の方を見つめてしまい、グッと引っ張られて彼の腕の中に閉じ込められる。
腕の中に閉じ込められながら、上目遣いでアルを見上げる。
へにょっとした眉が可愛らしいと思う。

竜人族男性特有の嫉妬心が、ついつい可愛くも思えてしまうのは許して欲しい。

ちゅっと額に唇を贈られて、頬が染まる。

「みっ、みんなに見られるからね…。」

そう言うと、満足そうにクスクス笑われた。

「こんな可愛らしい顔を他の者に見られたくないな。それに、私以外を見つめると、閉じ込めたくなるからね。」

そう言って、今度は両頬に…
もう、プシュ～～～って音が聞こえそうだよ。

「さてと、牽制はこのぐらいにして…」

そう言って、一点を見ていた。
そう、あのディアブロと名乗った執事をだ。
どうやら、アルはあの男性が気に入らないらしい。

あの男性が私を見る目は恋情とは違うんだけどね。
私とは別の人を常にって感じで…
そう、ディアブロにとっての唯一の主人に関係する人の枠。
もっと言えば、私だけでなく、アルに対しても拝んでいるように見えたんだけどな…
でも、『ご主人様とよく似ておられる』と言って拝んでいたのが私だったから気に入らないのかもしれない。

何とも不思議な感じだ。

「優里、こっちこっち。」

姉に呼ばれて、アルと一緒に歩いていく。
街は閑散とし、上空に扉が現れた時点で住民避難が行われた結果だろう。
残された建物は、この国の騎士達が利用しているようだった。