竜の恋人

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異世界で愛を呟かれ

異世界で愛を呟かれ(マルクス)

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「なっ…何故だ!!」

翌日は魔塔の仕事が忙しく、せっかくのお楽しみ空間には行けなかった。
今日は十分に時間があるとワクワクして訪れ、空間の中にあるもう一つの場所。
まるで拷問部屋の様な研究室の中で楽しく作業をしていた。

愛しい小鳥。愛玩人形。研究対象であるモノを鎖で両手両足を拘束して吊り上げるように立たせていた。
首元の魔力が気に入らず、背中の衣服を引き裂いてみれば、そこには竜人族が『番』に贈るとされるものが浮かび上がっていた。

そう、贈った相手、竜人族の髪と瞳の色で描かれた竜と蔓の様な模様。
この濃さと大きさは、かなりの魔力量を持つものだ。
単なるマーキングだけだと思ったが違った。

腹正しく重い鞭を振るう。
傷がどのくらいで癒えるのか研究してやろう。
傷口から血液サンプルを取り、抉り取った部分も…
そして、この模様がどうすれば消えるのかもだ…

声は奪ったままで良い。
呻き声だけでも興奮してくる…


部屋中に響き渡る音と血液の匂いで興奮してきた。
愛しさと憎らしさ…
こんな感情が私にもあるとは…

ボタボタと落ちる血液で一旦手を止める。

「あぁ、やり過ぎたか…大丈夫、癒して…」

いきなり大きな光と爆音で吹き飛ばされる。

壁に叩きのめされたが、私は『魔人族』このぐらいでは…
プルプルと首を振り、埃が立ち込めた先を見つめる。
そこには私の…

「それは私のだ!!!」

飛びかかり奪い取ろうとしたが遮られまた吹き飛ばされる。

「先に彼女を!!」

目の前の男の後ろからもう一人現れて、渋々姿を消した。
そう、光がいきなり揺らぎ、消えた。

「どういう事だ!!どうなっている!!」

背後に密かに控える黒ずくめの者達に激昂する。
背後にいる黒ずくめの者達も、『あり得ない』と、動揺が走った。
今回の研究で呼んでおいたもの達だ。

なぜだ!?なぜ…
箱庭が崩れていく。
私が作った傑作品が…
私のモノの奪われた…

やっと手に入れた私の…
さっき目の前で奪い取って行った者は不快に思った魔力の持ち主。そしてその背後にいた者は、あの気に食わない男の気配に似ているように感じた。

同族の者。側にいた者か…
まさかと思うが…

「くそッ!!」

今回のために、どれだけ時間と金が動いたのか…
またしても…

いゃ、まだチャンスはあるはずだ。
絶対に諦めない!!


「今回関わったものは、退避させろ。新たな者を送り込む。気取られてはならん。次こそ確実に手に入れるのだ!!今は撤収!!」
「はっ」

控えていた者達は、すぐさま飛び出すように出ていった。

苛つく心をどうにか抑え込む。
どうしても欲しいモノ。
アレは俺のモノだ。
今度こそ…我が手に…

手のひらに魔力を集め、崩れていく空間を後にしてその場を去る。
まるでそこには最初から何もなかったかの様に埋もれていった…

初めて見たモノは、『聖女召喚の儀式』の時。
魔力枯渇で倒れ込み、うっすらと見えたあの…
あの後、直ぐに動けば、今頃は手に入れれたのかもしれない。
時が悪かった…
『瘴気』が各地に発生し、『異世界の扉』。そう、『悪魔』と呼ばれるものがこの世界に降臨しようとしていた。
混沌の世界にする訳にはいかず、他国と協力し、召喚した『聖女』と共に排除していった。
自分はそのメンバーには入れなかったが、それでも…

あの時、もう一人現れたモノ…
手に入れたかったモノは、トカゲに掠め取られたと言ってもいい…

次こそだ。
もっと仲間を集め、完璧に捉える様に準備して…

今度こそ…手に入れる。手に入れて、自分のものとし、研究し尽くす!!

新たな闘志に燃え、扉を閉め、地上にと駆け上がる。

「クックックッ…待っていろ…」

そう笑い、呟く音が響いていった…
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