竜の恋人

異世界で愛を呟かれ

異世界で愛を呟かれ

どのくらい意識がなかったのだろうか…
ふっと目が覚めたら、そこは見たことのない場所だった。
そう、滞在している屋敷やその周りでもなく、あの時この世界に連れてこられたような場所でもなかった。

「いったいここは？」

どう見ても岩か土を固めたような壁が周りを覆っている大きな空間。
天井もかなり高く、照明が幾つも付けられていた。
この世界の明かりは蝋燭も使用したりするが、魔石を使った魔道具なども多く使われたりしている。
初めて見た時は衝撃的だったが、今はだいぶとその生活のも慣れてきたから、多分それだろう…
後、どこから入ってくるのか、空気の流れを微かに感じるけれど…窓らしい窓が無い。
空気浄化機能も付けられているようだ。

さらに周りを見回して確認する。
寝ていた場所はその空間のほぼ中央。
まるでサンルームの様な、箱庭と言っても良い特殊空間の中央に配置された鳥籠の様な檻。
檻の入り口は開けられたままだ。
ここを締め込まれたらとゾッとする。
その中にベットが置かれて横たえられていたんだ。

起き上がり、外に出てさらに確認していく。

檻の周辺には小さな草花が生えており、しゃがむと見えないぐらいの高さに保たれた生垣がところどころに配置されていた。
ただ、足元にはわずかな空間があり、姿を隠す事はかなりの困難な様にも思える。
本当に意味不明な不思議な空間だった。

生垣が多く見られる場所に足を踏み入れれば、源泉掛け流しの温泉が湧き出ているのか、浴槽があり、また洗面所やトイレなども同じ様になっていた。
この世界のトイレなどは今まで現れてきた聖女達の功績のおかげか、衛生面に考慮されており、魔道具をうまく活用されている。
水洗トイレがいい例だ。
この場所もその辺りは同じ様に考慮されている様だった。

向こうに見えるのは入り口らしいドアが二つ。
どちらかが出入り口でどちらかが別の何か？
別室でもあるのだろうか？

近づいて開けてみようと思ったけれど、その手前で見えない壁に阻まれた。
硬質の感じではなくて、そう、まるでゼリー状の様な感じで押し留められた。
だが、先には全然進めなかった。

「どうなっているの？しかもここは何処？軟禁された？誘拐？そうだ。ケイトさんは？」

カツンカツンと靴音を鳴らしながら歩いくる音が聞こえてくる。
とりあえず何処かに隠れなくっちゃ…