竜の恋人

文字の大きさ
上 下
67 / 216
異世界生活

異世界(アルホンス)

しおりを挟む
あの後、何を話したのか…
領主であるアルバート殿や、リカルト殿が戻られてから、もう一度話し合おうという事になった。
今は皇女の対応で忙しいらしい。

ユウリが狙われている。俺の『運命の番』がだ。
どちらともが、己の欲望のために、俺のユウリを。
今直ぐ叩き殺しにいきたい衝動に囚われるが、一人はこの国の皇女。もう一人は魔塔に在籍している皇子だ。
下手にすれば瘴気問題で荒れているのに、更に国際問題になる。

皇女はあの男にユウリを渡すか、もしくは殺害しようとするだろう。
そんな事をしても、俺が手に入るはずがないのに、『ヒト族』であり、『皇女』という身分による傲慢か。
大人しく城に引き下がればいい。だがそうしない場合は…
魔獣に襲われた事にして闇に…

だが、私がそうすれば、彼女は…あの優しい女性。愛しいユウリが悲しむような気がする。
ユウリ、今どうしているのだろうか。
不安に思っているだろう。直ぐに側に行き抱きしめたいが、それではあの女にユウリの居場所がバレる。
それはまずい。
皇女であるから、連れて来た者達はこの国でて手練れの者達であろう。
皇太子側の者か皇女側の者かはまだ分からないが…

「早く戻られないだろうか…夜に話し合おうと言われた。まだ時間がある」

コンコンとノックされる

「誰だ」

機嫌が悪い今、ぶっきらぼうに返事をしてしまった。

「失礼致します」
「お前か」
「申し訳ありません。皇女殿下の使者より、庭園を一緒に散策して欲しいと来られていますが」

自分の部下の一人だった。
ユウリの護衛で私も数人連れて来ていたその一人だ。

「どうされますか?」

なぜ自分がという気持ちもあるが、間違えて彼女の側にあの女が行かれるのは困る。
ユウリに勘違いをされるのは悲しいし、辛すぎるが、ユウリの身の安全が一番だ。

殿下に魔法陣を飛ばして報告する。
すぐさま『同席せよ』との命が降った。
殿下側でも対応してくれるのだろう。

「了承を伝えてくれ。庭園でお待ちすると」
「了解しました」

本当は、迎えに行く事からの依頼だろうが、そこまでする気はない。
部下もその辺りは理解しているのだろう。すぐさま皇女の使者の方に向かってくれた。
向こうの方で少し揉めているが、直ぐに収まった事から、予想した通りだろう。

剣帯をして、身なりを確認していく。
剣は別として、あの女が触れられたら破棄してもいいように考えてだ。
あの女が触れた物は着たくない。側にも置きたくないのだ。悍ましい。
それがユウリであれば…

もう寝る時に抱きしめてもいい気がする。
彼女の移り香があれば尚更…

「いゃいゃ、今はそうではなくて」

ユウリ不足である自分。
なぜ側に居れないのだろうか。
考えても仕方ないか。

ドアを開けて、目的の場所に向かった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

処理中です...