竜の恋人

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異世界生活

異世界

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それからは、ルシルを連れて屋敷の中をウロウロしていた。
妖精であるからか、樹々や花々が多い所は特に喜んでいた。
自然のものが一番であるが、人工的に作られた庭なども好きなんだとか。
ルシルの好む魔力が多いのかも知れない。
私にはよくわからないけれど、何となくそんな気がする。

庭の中央に位置した噴水を眺める。
あれからアルと接する事はない。
全くないとは言わないけれど…

「あれだけ悩んだのに、バカみたい」

ポツリと呟いた。
誰も側にはいない。
ルシルだけだ。

アルは戻って来たけれど、直ぐに出ていった。
この国のあの男、皇太子に呼ばれたとかで。
そして、数日後、帰って来た時に、見知らぬ人を連れて帰って来ていた。
この世界、この国においては有名な人なのだろう。
しかも高貴な…
私はまだ知らない。
紹介されていないんだ。

屋敷の者達が大忙しで動き回り、その人に接していた。
ここから見えるのは、綺麗な金色の長い髪。
白を基調にされた衣服を着ていて、大切にされていた。
アルはその人に付いている。
護衛を依頼されたのだろうか?
手を取り、エスコートしながら向こうの庭園に歩いていった。

話し声は聞こえない。
ただ一瞬、その人がアルに微笑みを見せていたのが見えただけ。
アルの表情は見えていない。

いつも世話をしてくれる、ふくよかな優しい雰囲気の女性のエルザさんに聞いてみたら、やはりこの国の皇族の一人だった。
この世界で今必要とされているポーションに興味があり、慰問も兼ねて来られているのだとか。
私の事が知られるのは余り良くないらしく、極力会わないように配慮しているとのことだった。

領主様や所長達からも以前言われたことを思い出し、関わらない方が良いよねって判断して今に至る。
私がいた部屋は今はその人が使っている。
私は別館に移動させられた。
まぁ、客人の警護に一番適した部屋があの部屋だったのだから仕方がない。
この国の重要人物が来られたのであれば、仕方がないのだけれど…

また『要らない•必要ない』と言われたようで寂しかった。
理解はしているのだ。
しているのだけれど、心が…

「大丈夫~。痛いの痛いの飛んでけ~」

この前ちょっとした怪我をした時、家族がそう呪文をかけてくれたんだって話を聞いてから、ルシルは時々懐かしい呪文を唱えてヨシヨシしてくれるようになった。

ほんの少し、心が解れる。
あの人が来てから、研究所に足を余り運べていない。
でも、ポーションは必要だよね。せめて在庫だけでも確認したいし、薬草園の世話ぐらいなら…

そう思い達、急いで着替えて出かけることにした。
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