竜の恋人

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異世界生活スタートです。

ポーション(リカルト•クラレス)

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呼ばれた先、そう、この国『ヒト族の国』ロザリアン神聖国、皇太子であるフェリックス•ロザリアンの部屋だ。

嫌な予感しかしない。
面倒事はごめんだ…
コイツはいつも面倒ごとを俺たちに振ってくる。

二人で大きなため息を吐いた後、背筋を伸ばしてノックする。
開けられ、中へ促されたのは、彼の執務室だ。

彼の側近一名を残し、俺たち以外外に出るよう言われた。
侍従達が出て行った後、遮音と防護の結界を張っていた。
相変わらす、魔法をスムーズに使うことだ。
さすがだね。
彼の詠唱は、まるで聖歌を聴くようだと良く言われている。
聴き惚れてしまうよ。

「よし。久しぶりだな」

いきなり砕けて声をかけてきた。
着ているものは皇太子としての権威を払ったものだが、態度は学生時代と変わらなかった。

「まぁ座れ。アルバートとルーカスに茶を入れてくれ」

そういうと、側近の者がサッとテーブルにあらかじめ準備されていたのか茶菓子を出してきた。その後、紅茶をカップに注いで置いた。

「久しぶりだな。急に呼び止めて悪かった。ちょっと緊急事態でね。君達にしか頼めないんだ」


あ~~~~っ、これはもう決定事項だ。
こいつがこういう態度で、こういう表情の時は決まって………

二人で大きなため息をつく。
本来、この態度は不敬に値するが、許されるだろう…

「で、俺たちに何をさせたい?」

クククッと笑った後、フェリックスは真剣な表情に変わった。
これはマジでやばい…

「さっきの『聖女召喚の儀』で見た通り、今回は何故か二人の聖女が現れた。本来は一人とされているのにだ。これは、この世界がかなりや危険な状態に陥っていると推測される。」

ゴクリと唾を飲み込む。
この世界での『聖女』、黒髪•黒い瞳の少女は常に一人だった。
神からの御告げとされる文献にも、一人とされているからそうなのだろう。
と言うか、それが常識とされている。
もし、二人現れたことが世間一般に知れたら大混乱を起こすだろう。
混沌の時代の再来。人類滅亡の危機を想わせる。
現に、各地で瘴気が従来よりも充満し、魔獣の凶暴化が報告されている。
各国から協力体制で鎮圧を行っているんだ。

自分のところには、そのためのポーション制作増量を依頼されている。
そう、大陸中央を位置する『ヒト族の国』ロザリアン神聖国では、今回の聖女召喚と、『ヒト族』ができる医療行為。
魔力を流しての治療と、ポーション制作。東側は『獣人の国』エステバン獣王国には、戦闘要員と救助活動。
西側は『妖精の国』オリクサ王国確か、エルフ族の方でも、錬金術師に、討伐のための物や傷薬なども依頼されていたか。薬師には内服薬などだ。南側の『竜の国』アステード王国には、遠方の緊急要請にすぐ応じてもらえるよう依頼と、運搬も任されている。北側は『魔人の国』ディール帝国には、魔道具の作成や提供。防衛などだ。
それぞれの得意分野で自国を守りながらも、各国の協力をしていた。

また、我が国の神殿において、教皇より、『魔人の国』ディール帝国に扉が現れるとの予言までされた。

これらの情報は、国同士のトップシークレットとして行ってきたが、今はそれどころではなくなってきているとも言われた。

その状態で、今回現れたのが二人。教皇による鑑定により、一人は確実に『聖女』『女神に愛された者』『女神からの使者』であると鑑定され、もう一人は『精霊に愛された者』とされた。
他にもあったらしいが、今は『聖女』が必要とそれ以上は見ることをやめたのだとか。
『精霊に愛された者』って言うのも必要だと思うんだが、教皇がそう言うのならと、二人を引き離す事が決定された。
教皇派などの教会関係者は、もう一人を自分たちの中に引き込み飼い殺しにする可能性が高いため、自分の信頼できるものを集め、皇族の秘薬を使う事にした。
そして、自分達で隠し護る事にしたんだと。
『精霊に愛された者』ならば、シュタルク領の薬草学研究所の方にとも考えが浮かんだ。
そう、俺たちの顔が浮かんだんだとか。

浮かばなくて良いのに…
まぁ、教会での飼い殺しは碌な事がないだろう。
聖女の為とか言って、無理やりいろんな事をやらされそうだ。
ただ搾取され、ボロボロになって…
想像できるのが怖い。

あと、今は国の存亡にかかっているから大丈夫かも知れないが、あの研究大好き。魔力探究者の集まりである魔塔の一部が彼女を研究材料として見ないとも…
『魔人の国』ディール帝国には、魔道の探究、魔力の探究など研究大好きな異端者が多いと聴く。皇帝を含めての国民はそんな事は無いんだ。まぁ、一部、『ヒト族』大好きのもの達もいないわけでは無いが、あの研究者の集まりである『魔塔』。我が国の教会と同じく危険な集団と言える。
その彼らが狙う可能性が大なのだ。

「だから、俺が悪者になる事にした。この国が中心で彼女達をこの世界に呼び寄せたんだから、俺が悪者になるべきだろう。聖女の方には、もう一人はこの世界にあわず、体調を崩したから、別で療養しているとして、ある時期で死亡したとする。原因は瘴気であるからとして、巡礼の旅に出し、清浄化を願おう。いゃ、そうしてもらう。帰る事は出来ないのだからね。召喚は戻す事は出来ないんだ。残念ながら。で、もう一人は、秘薬で姿を変え、君達のところで匿ってもらう事にした。」
「「おい!」」
「姿を変えるのは髪と瞳の色のみだ。これはもう元には戻らない。これだけでもだいぶと安全性が変わるし、『聖女一人説』も守られる。あと、その女性には、結構厳しい事を言ってしまったから、きっと私は嫌われているだろう。あの時、実は自分の信頼で全てを終わらせようとしたが、遠くで監視の目があったから、かなり厳しい事を言ったんだ。」
「お前~~~」
「それに、実は彼女がこの世界に『番』がいる事が発覚した。竜人族の者だ。高位貴族の者で、尚更彼女を護る必要性がある。その者達は、彼女の護衛として君たちのところに行くからよろしく」

「女性をいじめて護るって、お子様か…まぁ、その時はそれが最善策だと考えてだろうが…かわいそうに…」
「聖女は各国が全力で護るだろうが、彼女はお前達とその竜人族者達はだけだ。今はな…加護で他にも守護者ができるのかも知れないが…とにかく頼む」

そう言って頭を下げられた。
真剣にその女性の事を心配して頭を下げながら俺たちに頼んできた事は理解できた。

「わかった。我がシュタルク領でお守りするよ」
「そうだな、で、出来たらポーション作りでも手伝ってくれたらありがたいね」

そう言って談合を行った後、馬車に連れて来られた女性は、可愛らしい少女のようだった。
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