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聖女巡礼の旅

聖女巡礼(エドワード)

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「出発は明後日以降になりそうだ。オズバン達がある程度道を確認してくれているが、やはり例の魔素溜まり近くはこの雨のせいで危険度が高いと判断された。雨が止んで一日後に出発だ」
「そうなんだ。」

彼女が窓の外をまた眺めてしまった。
それにしても、こんなに本を持ち込んだのか?
時間潰しには良いが、疲れないだろうか…

「こんなに本を溜め込んで、何を読んでいた?」

ヒョイっと数冊手にとって内容を確認した。
彼女が読んでいたのは、オリクサ王国の事が書かれている物と、初級から中級の魔法書。薬草からポーションの事が載っている物だった。
気になるのか…

「この国の地形と植物、歴史が少し書かれた物?それと、この魔法書は癒し系が多いな攻撃と防御は少しか。ポーションは、それに必要な薬草とか、ポーションの種類と効能、あとシュタルク領の事が少し書かれているものか…」

こっちのも、そんな感じだなって確認した。

彼女には聖女の力。『浄化能力』が備わっている。魔素を多く含んだ『魔素溜まり』を抑える事は、神官職でもできる。できかけの小さな物なら浄化も可能だ。だが、多くの魔獣が発生する物や凶暴化させる大きな物や濃い物は聖女の力でなければ対処できない。
私たちにとって猛毒なのだ。

神に選ばれたメンバーは、聖女の『浄化能力』を補佐する為に、他の者達よりは猛毒が中和されるが、それでも動きは鈍くなる。魔獣から聖女を護るぐらいは動けれるが、そのぐらいだ。

聖女を守り護るために、攻撃や守護結界を駆使できる。力を分け与えれる。
でも、彼女からしたら、この前のことを考えたのだろう。
あの時は、他の者達もいたが、運悪く一人であった時。そういう事には絶対にさせないが、もしそんな場面の時、自分の身を守れる程度にはなりたいのだろう。そして、少しの傷ぐらいは癒したいのかもしれない。

過去の聖女にも、そう考えて行動した者はいた。
私も、彼女の事を心配して作ったんだ…

指輪にそっと触れて、中から取り出す。


「サヤカ、手を出して」
「何?」

言われるまま手を出してくれた彼女。
どっちの手かわからなかったから、とりあえず利き手の右手を出してくれたが、利き手でない方が扱いやすいだろう。だから、『こっち』と左手を取ってつけ、そのまま魔法展開させる。

シャランと金属の心地よい音がする。
手首に巻かれた金と白金。魔石の色合いも彼女の肌に合っていた。

手首に巻かれたブレスレットをいろんな方向から確認している。
表情は喜んではいるようだ。

「留め具は…無い。何故に無い?外す事は無理そう?」

そう呟いていたが、聞かなかった事にする。

「これは護身用。防御と補助魔法も付与している」
「補助魔法?」

良い反応。

「この前呟いていたのを耳にしたから作ってみたんだ。攻撃魔法出来ないだろ?防御の方も教えられてもいない。私も教える機会が無かったし。で、少し教えようと思ってね。聖女の魔力でどこまで出来るか知りたいのもあるけど、自分の身は自分で守りたい。出来たらって呟いていたから、もし出来にくくても補助があれば少しの力でもうできると思うんだ。後、暴発防止ね」
「留め具が見当たらない理由は?」
「防犯のためだよ。誰かに奪われても困るしね。特別性だから」

少し考え込む表情も可愛いな。

「じゃ、教えてくれますか?師匠!」

そう言って、カップを空にしてお願いしてきた。
嬉しいけど、師弟関係か…今回は仕方ないね。

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