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それでも終わりは来る

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 仮定で空想の話だが、タンガ着用が義務付けられて人口が増えるって発想は面白い。
 確かに、タンガを着たいと言う理由でエスコーラに入会する者も居るくらいだ。一方、エスコーラにダンサーとして所属していながら、タンガは着たくないという者もいなくはないのだが。

 サンバの町という考え方も、意外と有りな気がする。町を買うってのは大げさだろうが、町の代名詞になるというのは不可能ではないと思える。

 浅草サンバカーニバルが有名で、日本でサンバと言えば浅草をイメージされることはあるが、浅草がサンバの街かと言われれば、そのようなことにはなっていない。
 歴史ありあらゆる文化が濃く深く醸成されている浅草は、多くの顔を持っている。サンバはそのうちのひとつにすらなれていないのが冷静な評価だろう。
 
 どこかの町おこしの企画と絡め、なんならこちらから持ち込んで、新しいサンバの聖地をつくる余地はあるのではないだろうか。少なくとも検討の価値はありそうだ。
 
 
 転がり続ける話題は尽きないが、買い込んだお菓子が尽きる頃、さすがに話し疲れ、笑い疲れた面々の声からは勢いの衰えが見え始めた。
 

「そろそろ寝よっか」

 
 年長者のほづみが仕切ってくれた。言いながらお菓子の空き袋を整理し、コンビニ袋にまとめてくれている。
 私は空きドリンクをまとめる。みんなも誰ともなく、「そうだねー」と言いながら片付けの動きに入った。全員若干動きが緩慢なのは、矢張り眠くなってきているからだろう。
 

「おやすみー」

 
 私とがんちゃんは居室のエントランスでみんなを見送った。
 一通り就寝前の作業を終えた私は、ベッドに入る。

「おやすみ」
「おやすみ」

 既に隣のベッドに潜り込んでいたがんちゃんに答えて目を閉じた。

 私は寝入りが良い方ではない。
 色々と思考をしてしまうせいか、眠りにつくまでは数分から数十分の時間を要すことが多かった。
 今日は眠いし、長距離と言える移動もしてきた。比較的すぐに眠れると思うが、思考をしてしまう癖に変わりはない。

「寝た?」

「んーん」

 がんちゃんも眠れないようだ。

「祷、ありがとうね」

 え、なんのご褒美だろう?
 余計眠れなくなってしまうじゃない。

「ここまで、連れてきてくれた」

 違うよ。がんちゃんが自分の力で、切り拓き、歩んで、辿り着けたんだよ。

「私の方こそお礼言いたかったんだ。がんちゃん、ありがとう、サンバに出会わせてくれて」

「サンバは、わたしじゃ、ないよ」

 がんちゃんのおかげで、私はここにいる。スルドを楽しめている。だから、がんちゃんにお礼を言いたいのだ。

「朝さ、温泉に入ってこようと思うんだ。がんちゃんも行く?」

「んー」

「うん、一緒に行こ。楽しみだね。それじゃ早く寝よ」

 がんちゃんは既に言語が怪しい。
 程なくして隣からは静かな寝息が聞こえ始めた。


 おやすみ、がんちゃん。
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