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掌握のできない、感情(LINK:primeira desejo 98)
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がんちゃんのスピーチは続く。
私の裡で生じた渾沌などお構いもせずに。
「たくさんの方のおかげで、わたしは今この場にいて、この機会をいただけています。
少しずつでも、関わりの繋がりを繋げていくことで、ひとりじゃできないことや思いもよらないことができることがわかりました。
誰かと関わるだけで得られるものがあるなら。誰かと関わるだけで与えられるものがあるはずです」
すーっと息を吸い、同じ長さで吐くがんちゃん。
話す言葉は少し速くなりがちだけど、抑えは効いている。
覚悟が決まっている様子が表情に現れているがんちゃんは、思っているよりも冷静なのかもしれない。
「誰かの人生を変えよう! なんて、大きなことを思わなくても。
ほんの少し関わるだけで良いのなら、わたしでもできそうだと思いました。
わたしに関わってくれた、あるいは関わることになった、知らず知らずのうちに関わっていた、多くのひとたちのように」
いつの間にか辿々しさも影を潜めていた。
それは、用意した言葉ではなく、想いをありのまま言葉にしているからだろうか。
「誰かの人生のほんのひとときに、ほんの少しだけ関わらせてもらって。
その時間が、そのひとの人生にとって、少しだけ良い影響を与えられたら。
わたしがしてもらったことを、返せるんじゃないかって思ったんです」
ああ、なんだかわかってきた。
「わたしに居場所をくれたサンバ。心を掴んだ音。目を奪ったダンス。
演者のひとりとして、阿波ゼルコーバファン感謝祭に来場された多くのファンの方や、もしかなうなら選手やスタッフの方にも、サンバを通して楽しさを感じてもらえたらと思っています」
私の裡で発生し、質量を感じるほど確かに存在しているものの、正体。
「その気持ちは、きっと阿波ゼルコーバやその選手への気持ちに良い影響を与えるはずです。
売り上げとか、ファンの数の増加とか、そういうのにも繋がるはずです。
地元にも経済効果とかあるはずです。そうなったら、姫田グループにとっても良いことだと思います」
少し上擦るがんちゃんの言葉。
用意されていない言葉は、具体的な根拠は伴っておらず、表現も稚拙だ。
だけど。私は.....。
着替えに向かったふたりとは、通話状態のスマートフォンで状況が伝わるようになっている。
スピーチの終盤には部屋に突入できるよう準備を進めてもらう手筈だ。もういつでも入って来れるはず。
私の方も、楽器の準備なんてとっくに終わっている。
スルドを二台置き、その次の演目のための弦楽器の用意と譜面台、譜面を設置する。
歌とメロディは持参したマイクにスピーカーを繋いで直接拾わせる。これも電源に接続する程度だからそれほど時間は必要としない。
私ががんこに作業を終えた様子を見せることで、ダンサー二人の着替えも、楽器のスタンバイも完了している合図としていた。
「安達さんには関係のないことをたくさん言いました。すみません」
がんこも手を止めている私に気づいたようだ。
スピーチを終わらせる段階に入っている。
「お伝えしたかったことは、今回の件に関して、わたしにはいろいろなひととの関わりへの感謝を、今回の件を通してできるだけ多くのひとたちへ返していきたいということです」
だけど私は、顔を上げることができないでいる。
私の裡より生まれたもののせいで。
私の裡で生じた渾沌などお構いもせずに。
「たくさんの方のおかげで、わたしは今この場にいて、この機会をいただけています。
少しずつでも、関わりの繋がりを繋げていくことで、ひとりじゃできないことや思いもよらないことができることがわかりました。
誰かと関わるだけで得られるものがあるなら。誰かと関わるだけで与えられるものがあるはずです」
すーっと息を吸い、同じ長さで吐くがんちゃん。
話す言葉は少し速くなりがちだけど、抑えは効いている。
覚悟が決まっている様子が表情に現れているがんちゃんは、思っているよりも冷静なのかもしれない。
「誰かの人生を変えよう! なんて、大きなことを思わなくても。
ほんの少し関わるだけで良いのなら、わたしでもできそうだと思いました。
わたしに関わってくれた、あるいは関わることになった、知らず知らずのうちに関わっていた、多くのひとたちのように」
いつの間にか辿々しさも影を潜めていた。
それは、用意した言葉ではなく、想いをありのまま言葉にしているからだろうか。
「誰かの人生のほんのひとときに、ほんの少しだけ関わらせてもらって。
その時間が、そのひとの人生にとって、少しだけ良い影響を与えられたら。
わたしがしてもらったことを、返せるんじゃないかって思ったんです」
ああ、なんだかわかってきた。
「わたしに居場所をくれたサンバ。心を掴んだ音。目を奪ったダンス。
演者のひとりとして、阿波ゼルコーバファン感謝祭に来場された多くのファンの方や、もしかなうなら選手やスタッフの方にも、サンバを通して楽しさを感じてもらえたらと思っています」
私の裡で発生し、質量を感じるほど確かに存在しているものの、正体。
「その気持ちは、きっと阿波ゼルコーバやその選手への気持ちに良い影響を与えるはずです。
売り上げとか、ファンの数の増加とか、そういうのにも繋がるはずです。
地元にも経済効果とかあるはずです。そうなったら、姫田グループにとっても良いことだと思います」
少し上擦るがんちゃんの言葉。
用意されていない言葉は、具体的な根拠は伴っておらず、表現も稚拙だ。
だけど。私は.....。
着替えに向かったふたりとは、通話状態のスマートフォンで状況が伝わるようになっている。
スピーチの終盤には部屋に突入できるよう準備を進めてもらう手筈だ。もういつでも入って来れるはず。
私の方も、楽器の準備なんてとっくに終わっている。
スルドを二台置き、その次の演目のための弦楽器の用意と譜面台、譜面を設置する。
歌とメロディは持参したマイクにスピーカーを繋いで直接拾わせる。これも電源に接続する程度だからそれほど時間は必要としない。
私ががんこに作業を終えた様子を見せることで、ダンサー二人の着替えも、楽器のスタンバイも完了している合図としていた。
「安達さんには関係のないことをたくさん言いました。すみません」
がんこも手を止めている私に気づいたようだ。
スピーチを終わらせる段階に入っている。
「お伝えしたかったことは、今回の件に関して、わたしにはいろいろなひととの関わりへの感謝を、今回の件を通してできるだけ多くのひとたちへ返していきたいということです」
だけど私は、顔を上げることができないでいる。
私の裡より生まれたもののせいで。
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