上 下
57 / 215

スルドを買おう

しおりを挟む
 さて、晴れて『ソルエス』にメンバー入りした私は、スルドの購入を検討していた。

 先輩であるがんちゃんは先生に当たるキョウさんからスルドを譲り受けている。
 師匠と弟子間で道具を継承するみたいな文化があるとしたら、軽々に購入してしまうのはあまり良くないかもしれないが、多分そんな厳密なものは無いだろう。

 
 キョウさんはバンド活動も含め、音楽関連の活動が多く、数種類の楽器を複数ずつ所有しているのでそういうことができるが、私の先生に当たるチカはそうではないから、継承なんてしたら自身の楽器が無くなってしまう。
 とはいえ、チカにあらかじめ相談はしておいた方が安全だろう。

 
 初心者だし私もまずは中古で慣れてからという思いもあるが、せっかくだから新品を買いたい。
 ブラスバンド部の時も思ったが、楽器の選び方について、初心者は安いもの(中古も含む)をまずは買って使い潰す勢いで練習するとか、使いやすいエントリーモデルを買って、慣れたら次の段階のものを買うという考え方がある。理解のできるものではあったが、一方で品質の高い楽器でしか出せない音がある場合がある。
 もちろん、ある程度の水準に至った者が気にするような領域だ。だから段階的にと言う考え方はわかるのだが、本気で取り組み、絶対やめないという強い意志があるなら、最初からそのモデルで練習した方が伸び率は高いと思う。
 それが気に入った楽器なら、練習するうえでもモチベーションになる。
 逆説的だが、本気で取り組み、長く継続するにはモチベーションが不可欠なのだから、気に入った楽器で始めるというのが大切だと考えていた。

 実際に私のブラスバンドの場合でも、部活動は高校生で終わっているが、楽器自体は未だに続けている。

 キョウさんのような本格的な音楽活動ではないから、同じ種類の楽器を複数所有するほどではないが、私がやっていた三種類の楽器については、初代の楽器を未だに使い続けている。まあどれも五年も経っていないので偉そうなことは言えないが、メンテナンスには気を使っているので状態はかなり良い。

 
 がんちゃんが趣味探しだか自己探求だかに迷走していたときもそうだったっぽいが、私も比較的形から入るタイプのようで、これから取り組もうと思ったものがあったら、道具から揃える傾向がある。
 道具を購入しに行くと、心が浮き立った。
 最も自分に合うものをと、選び抜いた道具はどれも愛着が湧いて、取組や活動がはかどる経験も実感している。
 稀に成り行きで手に入れて、使っているうちに愛着を持てた自動車のような事例もあるが。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

女子に虐められる僕

大衆娯楽
主人公が女子校生にいじめられて堕ちていく話です。恥辱、強制女装、女性からのいじめなど好きな方どうぞ

おむつオナニーやりかた

rtokpr
エッセイ・ノンフィクション
おむつオナニーのやりかたです

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おっぱい編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート詰め合わせ♡

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...