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本章

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 次の『Vou fostejar』も格好良い系の曲で、曲は途切れさせずそのまま続けて演奏に入る。
 身体が暖まって来たのか、踊る穂積さんと柊のダンスも激しさが増して来た。

「柊ー! ほづみさーん!」
「ぎゃー‼︎」
「びゃーっ‼︎」

 テンションが上がった三人も楽器を鳴らしながら踊り始めた。

 周囲も異様に盛り上がっていて、ただ観てるひとは日本人のなかの六割くらいだ。ブラジル系の人たちはほとんど踊っていて、一部は楽器を振るか歌うかしている。日本人も、同年代くらいの子たちが一緒に踊り始めたり、小さい子も見よう見まねで踊り、母親らしき女性が子どもに手拍子を送っていた。


 うわあっ......!
 これ、すごいっ!


 スタッフとして参加したイベントでも観客からの熱量をその身に感じたが、演者として受ける観客からの歓声や観客の放つ熱気は身が震える感覚だった。
 大音量が観客を震わすものと承知していたが、演者側が観客から震わされるとは思ってはいなかった。
 この前のイベントと比較するまでもなく、小さな街のローカルスーパーのささやかなイベントに集まった観客の数は、数字だけで言えばごく少数と評せざるを得ない。
 そんな人数からでも、これほどの情熱を感じられたのだ。
 徳島のイベントではどうなってしまうのか。
 楽しみであり、怖くもある。

 とにかく今は、この瞬間を燃やし尽くそう。

『Vou fostejar』は勢いが衰えないまま終わっていく。
 スルドも尻すぼみにならないよう、気合を入れて叩いた。

 二曲合わせてたった五分。

 それでもこんなに......こんなに、気持ちが高揚するなんて。
 これが、アゲってやつ? いや、なんだかそんなものでは括れないなにかが、わたしの中心に宿って、その塊が強く熱された金属のように、周囲に熱をじわりと伝導させて際限なく広がりながら身体を満たし、皮膚まで届いたその熱が外に向かって放出するような感覚になった。
 息が上がるほどには身体的に疲れてはいないのに、上気した身体はしばらく冷めそうにない。


「がんちゃん! おつかれさま!」
「かっこよかったぁ」
「すっごい楽しかった!」

 演奏を終え、観客、司会者、演奏してくれたユニットとゲストにそれぞれ一礼し、ステージから捌けたわたしと祷とキョウさんを、一汗かいたスポーツマンのような柊と、意外と余裕の表情の穂積さん、何故か柊よりも疲労困憊で肩で息をしている三人が迎えてくれた。

「ねぇ、なんでみんなの方が疲れてるの」

 そんな三人の様子を見て、わたしは笑ってしまった。


 本気で楽しんでくれたみたいで、とても嬉しい。

 元々はキョウさんがわたしを元気づけるために誘ってくれたお祭りだ。
 でも、わたしの演奏で誰かが楽しんでくれたり、もしかしたら元気になってくれたり、そんな影響が与えられるのだとしたら、その方が嬉しいと思った。


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