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本章

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 学校を終えたわたしと柊は、電車を乗り継いで祷との待ち合わせの駅まで向かっていた。
 待ち合わせ場所には既に祷が到着していた。

「乗り換えの時間、意外と短いよ。急ごう」

 祷に促され、ホームまで急ぐ。

「あっ、もう来ちゃってる!」

 柊が階段を駆け上る。わたしと祷も同じように走った。

「間に合ったー」

 ほっとした柊の声に合わせるように閉まる電車の扉。

「これで時間通りにつけるね。って言っても、先に着いてるほづみとみことは商店街うろうろして時間潰してるらしいから、そんなに慌てなくても良いだろうけど」

「あ、みことから。あー! なんか美味しそうなの買ってる!」

 柊に言われ、女性学生メンバーだけで組んだトークグループを開いてみると、みことから苺大福の写真が送られていた。それを美味しそうに食べるふたりの様子も。
 既に何人かからはリアクションが入っていた。


 この前のイベントの打ち上げは盛り上がった。この前の打ち上げと言うべきかも。
 毎回大人数の打ち上げは大騒ぎになるし、店舗側が許している場合、後半は楽器を鳴らし歌ったり踊ったりと大騒ぎになる。

 おとなたちが狂乱していて、むしろ学生メンバーの方が冷静で落ち着いているのもいつものこと。
 女性学生メンバーたちはある程度固まって席を占拠し、あまり移動せずそこで会話をしていた。ちなみに今『ソルエス』の会員になっている男性学生メンバーはルイとアリスンと同じ学校で、同じ軽音部でバンドを組んでいる有働うどうくんと名波ななみくんのふたりしかいなく、ふたりとも最初はルイ、アリスンと近い席にいたが、そのうちブラジルのアコースティックギター『ヴィオラン』奏者のまっさんに連れられ別の席に行ってしまっていて、十代女性のみのエリアとなったその場は、ある種聖域のような隔離された場になっていた。
 年長の祷や穂積さんは、さすが社交性が高く、いくつかの島を回って乾杯をしていたが。

 学生メンバーの島では、その日のイベントの感想が話題の中心だったが、そのうち次のイベントの話に推移していった。
 次のイベント、徳島のサッカーチーム『阿波ゼルコーバ』のファン感謝イベントだ。
 チームにとって新規で且つ普段と趣の異なる記念すべきイベント。

 わたしがプレゼンしたイベント。わたしがデビューするイベントだ。

 祷にとってもデビューイベントとなる。

 会話の流れで、祷がデビューに向けてスルドの購入を考えているという話をした。西巣鴨にブラジルの楽器専門店があり、みんなで買い物に行くことになった。
 学生メンバーはバテリアの祷とわたし、カントーラのアリスン以外はみんなダンサーだが、ダンサーでも練習ではリズムを身につけるために『ガンザ』というシェーカーを振ることもあるし、パレードのときにハルさんがやっていたように、パンデイロを鳴らしたり、時にジャグリングのようにパフォーマンスに使用したりもする。
 ダンサーも参加するパゴーヂでも、踊るだけでなく楽器を鳴らすこともある。

 ダンサーの中には既にその類の楽器を所有している者もいるが、おもちゃのようなガンザを使っている者も多く、せっかくだから専門店に行こうという話になったのだ。

 結局その場にいた学生メンバーの中で、都合が合わせられたのは打ち上げ前にお祭りを回ったメンバーからゆうちゃんを抜いた五名だけとなったが、参加できないみんなもいつか絶対に行くから、情報を集めておいてほしいと、先遣隊としての役割を仰せつかったのだ。

 
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