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新しいお客様?

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 敵対心を持たれているわけではない。警戒心というよりは、心を開いていない感じ。頑なに心を許さないような閉ざし方でなく、自ら積極的に開けるつもりはないが、こちらから開けようと思えば開けられそうな扉。
 そんな印象の彼にどう対応すべきか。まずはたーくんを中心に会話を進めながら、切り口となる情報かタイミングを探すのが良さそうだ。


 特に促すまでもなく、たーくんは連れてきた男性のことを語り出した。


 たーくんとのビジネスを成功させてしばらくした頃に、彼は転職をしていて現在は業界ごとのブティックと戦略ごとのブティックという二軸に対し小規模チームがアプローチを掛ける形をとったベンチャー系の広告代理店に所属している。
 小規模な会社らしいが、年々拡大傾向にあるそうで、なぜかたーくんが自慢気に話していた。

 
 彼を気に入っているたーくんは、新店舗に関する案件が落ち着いてからも、その後都市開発の会社を退職してからも、個人的な付き合いで食事や飲みに何度か誘うくらいの仲だったが、最近改めて、広告代理店としての彼に仕事を頼もうとしているのだそうだ。

 
 席について早々、たーくんより高天さんの紹介を受けた私たちは、たーくんの話がひと段落するのを待って改めて名刺を渡した。

 彼は丁寧に受け取るも、自身の名刺を出す素振りは無かった。ママが「高天さんの名刺もいただけますか?」と品良くおねだりをすると、高天さんは笑いながら「失礼しました」と私たちに名刺を配ってくれた。
 
 積極的に関係性を深める気はないが、拒否反応までは無いって感じなのかな。

 
『高天 あきら』、アカウントユニット第一チームのグループアカウントディレクターというのはどんな仕事で、どれくらい偉いのだろう?

 
 たーくんは彼を「アキ」と呼び、他のメンバーは「アキちゃん」と呼んでいた。
 ママも「アキちゃん」と呼びだしたところで、『Three ducks』での呼び方も定まった。

 席では基本聞き役、適宜相槌を打っていたアキちゃんは、話を振られれば鋭い雰囲気とは裏腹に軽妙にトークし、席に笑いをもたらしていた。接客側の私たちも演技ではなく本当に笑わされてしまっていた。

 もてなされる側でありながらも、私たちに気を使わせないスマートなお客様とも言える。
 もてなされる側でありながら、私たちにもてなしをなるべくさせようとしない、あくまでもクライアントであるたーくんの添え物であろうとするプロフェッショナルとも言える。

 まだ都市開発の会社にいた頃、アキちゃんは店舗に顔を出す機会があったようだが、美容学校を卒業したばかりの見習いの女性にも「アキちゃん」呼ばわりされ、時にはいじられているというユウキくんの証言を、そのまま捉えるならこれが地なのかもしれないが。

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