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第一章:「転生編」
第四話「急転」
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統一暦一一九二年五月八日。
グライフトゥルム王国王都シュヴェーレンブルク、ラウシェンバッハ子爵邸。マティアス・フォン・ラウシェンバッハ
大賢者マグダに何者かと問われた。
そこで自分が何者なのか分からない。人とは何のために生まれてきたのかという哲学的な問いで返した。
しかし、大賢者はその言葉に納得することはなかった。
「そのように煙に巻けば、誤魔化せるとでも思ったか? そなたのような童に先ほどの話ができようはずがない。坊よ。もう一度尋ねる。そなたは何者じゃ?」
「では、どうすればよいのでしょうか? 私自身、何者か分からないのに……」
自分の正直な思いを吐露する。
しかし、大賢者には確認する方法があるのか、自信ありげに説明を始めた。
「儂が調べればすぐに分かることじゃ。魔象界から顕現する魔獣であれば、どのように化けようがの」
魔象界とはこの世界である具現界とは違う異世界のことで、魔獣や魔導を生み出すエネルギーが渦巻くところらしい。概念的には何となく分かるが、ここにある本では詳しくは分からなかった。
分かっているのは大賢者が私を魔獣の一種、悪魔か何かではないかと疑っていることだ。こうなったら言い逃れることはできないと腹を括る。
「お調べください。私自身、自分が何なのか知りたいと思っておりますので」
「良い覚悟じゃ」
それだけ言うと、大賢者は私に近づいてきた。
「危険ではございませんか」
それまで沈黙を保ってきたネッツァー医師が焦りを含んだ表情で声を上げる。
「そなたは下がっておれ。儂であれば災厄級の魔神であろうと、どうにかできる」
災厄級とは魔獣の階級を表すもので、国家の存続が危ぶまれるほど危険な存在のことをいう。
それすら問題ないと言い切れる実力を、目の前の老婆は持っていることに驚嘆する。
大賢者はそれだけ言うと、私の心臓のある辺りに手を翳した。
ぼんやりとそれを見ているが、ほのかに温かい感じがあるだけで特に違和感はない
大賢者は一分ほど手を翳していたが、ゆっくりと手を離した。そして、その表情は先ほどまでの厳しいものから、慈愛に満ちたものに変わっていた。
「この坊が魔獣でないことが分かった。魔素を一切感じぬ。それどころか、魔導器すら持っておらぬ」
ネッツァー氏がその言葉に反応する。
「魔素を一切感じない……魔導器がない……なるほど、だから私が治癒を行った際、手応えがなかったのですね……確かに魔導器がない魔獣は存在し得ません」
その言葉に大賢者が満足げに頷く。
「その通りじゃ。魔象界から顕現した者であれば、魔象界と自らを繋ぐ魔導器がなければならぬ。それなしに力を保つことができぬからじゃ。それに魔素を持たぬことはあり得ぬし、儂をたばかることもまた不可能なことじゃ」
私には半分以上分からないが、どうやら魔力を一切持たず、魔力を変換する器官も持っていないらしく、魔獣である疑いは消えたようだ。
その言葉に安堵の息を吐き出しそうになるが、それを意志の力で微笑むだけに押し留めた。
「疑って済まなかったの。坊が普人であることは間違いない。まあ、特殊な体質ではあるがの」
そう言いながら、私の頬を触った。
後で知ったことだが、人間、この世界で言う普人であっても通常は魔導器という器官を有している。ごく稀に魔導器を持たない者が生まれてくるが、その場合、魔導を使うことが一切できない。
「気にしておりません」
そう答えるものの、その手の感触に違和感を覚えた。見た目は節くれだった老人の指なのだが、妙に柔らかく、更に若い女性のような甘い香りがしたためだ。
そして、そのことを思い切って聞いてみた。
「お姿を変えていらっしゃるのでしょうか?」
大賢者は私の問いに目を見開く。
「なぜそう思うのじゃ?」
「手の感触が見た目と違い、とても柔らかでした。それに長命種である森人は年老いた姿にならないと本に書いてありました。もしかしたら、森人ではないのかと思ったのです」
大賢者は感心したような表情を浮かべる。
「坊は聡いの。握手をしたことは数え切れぬほどあるが、手の柔らかさに言及した者は初めてじゃ」
そう言ってニヤリと笑い、ゆっくりと背中を向ける。
「確かにこの姿は仮初のものじゃ。まあ、森人ではないがの」
そして、クルッという機敏な動きで私の方に向き直った。
白髪の老婆から黒髪の妙齢の美女に変わっていた。秀でた額に白皙の肌、漆黒の大きな瞳に桜色の形のよい唇。地球のどの人種とも違うが、その美しさに圧倒される。
「これが儂の本当の姿じゃ。叡智の守護者の者たち、そしてグライフトゥルム王家の一部の者しか知らぬがの。この姿では大賢者らしくないと評判は良くないのじゃ。フォフォフォ」
このしゃべり方なら鋭い目つきの老婆の方がしっくりくる気がする。
大賢者はそこで表情を真面目なものに変える。
「坊よ。己が何のために生まれてきたのか、試してみたくはないかの?」
突然の問いに戸惑う。
「どういうことでしょうか?」
「そなたには類稀なる知性がある。しかしじゃ、知性は知識がなくば、十全に生かすことができぬ」
一般論としては分かるが、何を言いたのか理解できず、更に困惑する。
「おっしゃることは分かりますが……」
「我が叡智の守護者の塔には数万冊にも及ぶ書物がある。それこそ数千年前、すなわち皆が言う神話の時代のものすらあるのじゃ。儂の他にも大導師や導師たちなら、そなたの疑問に答えられるじゃろう。どうじゃ、我が塔に来ぬか?」
大賢者の言葉に後ろに控えていたネッツァー氏が驚きの声を上げる。
「マグダ様が直々に勧誘するなど、初めてのことではありませんか!」
「そうじゃの。じゃが、この坊には魔導を使う素質がない。魔導師として受け入れるわけではないからの。気まぐれのようなものじゃ」
そんな会話を聞いているが、頭に入ってこない。
神話の時代から生きる伝説の人物に勧誘された。それもこの私の能力を買って……。
しかし、私にそれほどの価値はない。今回のことも日本にいた時の知識があったから言えたことであり、八歳の少年ならともかく、きちんとした教育を受けた社会人ならこの程度のことを言える者は日本なら掃いて捨てるほどいるだろう。
誘われるまま、魔導師の塔に行けば、すぐにボロが出ることは間違いない。
そうなった時、再び私に疑念の目が向く可能性がある。一応、世界最高の知恵者のお墨付きを得たから、そう簡単には疑われないと思うが、自分に別の記憶があるという事実を知られることは危険だ。
「お言葉はうれしいのですが、私はこの通り身体も弱いですし、第一、まだ初歩的な教育すら受けていません。大賢者様はもちろん、導師様方のお手を煩わす価値はございません」
そう言って断ろうとしたが、大賢者はニヤニヤと笑いながらネッツァー氏に視線を向ける。
「マルティンよ。坊はこう申しておるが、そなたの意見を聞かせてくれぬか?」
ネッツァー氏はそこで軽く頭を下げてから話し始める。
「マティアス君の言う通り、彼の身体は万全ではありません。ですので、塔で治療を受けることは彼にとっても良いことだと思います。教育云々のことですが、この二ヶ月間、見てきましたが、彼ほど一を聞いて十を知るという言葉が相応しい者を私は知りません。確かに知識に足りない部分はあるでしょうが、ここで教育を受けるより、塔で導師様たちに指導を受けた方がはるかに効率的だと思います」
「うむ。儂も同意見じゃ。儂を唸らせるほどの知者に出会ったのは何十年ぶりじゃろうか……そうじゃ。まだ皇帝を名乗る前のオスヴァルト以来じゃから、五十年以上前のことかの」
その言葉にネッツァー氏が驚きの表情を浮かべる。
「オスヴァルトとはゾルダート帝国の建国を宣言した初代皇帝オスヴァルト二世のことでしょうか?」
「そうじゃ。じゃが、奴も四十を超えておったからの。この坊とは比較にならん」
どうやらゾルダート帝国という新興国家の創始者と比較されているようだが、徐々に評価が高くなることに胃が痛くなる。
ちなみにこれも後から知ったことだが、初代皇帝なのにオスヴァルト二世という名であるのは、ゾルダート帝国の前身、ゾルダート共和国が成立した年を帝国の建国元年とした関係で、オスヴァルト一世という皇帝がいることになっているためらしい。
「では子爵には治療目的のために叡智の守護者が預かると伝えましょう。子爵夫妻もマティアス君の身体のことが心配でしょうから」
「それがよいの。では、決まりじゃ」
いつの間にか決定事項になり焦る。
「えっ! あ、あの……」
そう言って止めようとするが、大賢者もネッツァー氏も私の話を聞くことなく、段取りの話を始めた。
「ここからだと十日ほどの旅となるの。季節的には今が良いが、今少し体力をつけた方がよかろう……いろいろと準備もあるじゃろうし、半月ほど時があった方がよいの……」
私に意見を聞くことなく、ドンドン話が決まっていく。
何度か断りの言葉を言ったが、謙遜していると思われ、真剣に受け取ってもらえない。
両親を交えての話が始まると、父も母も大賢者が自ら治療の手配をしてくれることに感激し、断るという流れは完全に断ち切られた。
(何とかボロを出さないようにしないと……でも、私にそんなことができるのか? 私は天才でも何でもない、一般人に過ぎないんだが……)
内心で頭を抱えながらも、これ以上何もできないため、諦めて苦笑を浮かべるしかなかった。
グライフトゥルム王国王都シュヴェーレンブルク、ラウシェンバッハ子爵邸。マティアス・フォン・ラウシェンバッハ
大賢者マグダに何者かと問われた。
そこで自分が何者なのか分からない。人とは何のために生まれてきたのかという哲学的な問いで返した。
しかし、大賢者はその言葉に納得することはなかった。
「そのように煙に巻けば、誤魔化せるとでも思ったか? そなたのような童に先ほどの話ができようはずがない。坊よ。もう一度尋ねる。そなたは何者じゃ?」
「では、どうすればよいのでしょうか? 私自身、何者か分からないのに……」
自分の正直な思いを吐露する。
しかし、大賢者には確認する方法があるのか、自信ありげに説明を始めた。
「儂が調べればすぐに分かることじゃ。魔象界から顕現する魔獣であれば、どのように化けようがの」
魔象界とはこの世界である具現界とは違う異世界のことで、魔獣や魔導を生み出すエネルギーが渦巻くところらしい。概念的には何となく分かるが、ここにある本では詳しくは分からなかった。
分かっているのは大賢者が私を魔獣の一種、悪魔か何かではないかと疑っていることだ。こうなったら言い逃れることはできないと腹を括る。
「お調べください。私自身、自分が何なのか知りたいと思っておりますので」
「良い覚悟じゃ」
それだけ言うと、大賢者は私に近づいてきた。
「危険ではございませんか」
それまで沈黙を保ってきたネッツァー医師が焦りを含んだ表情で声を上げる。
「そなたは下がっておれ。儂であれば災厄級の魔神であろうと、どうにかできる」
災厄級とは魔獣の階級を表すもので、国家の存続が危ぶまれるほど危険な存在のことをいう。
それすら問題ないと言い切れる実力を、目の前の老婆は持っていることに驚嘆する。
大賢者はそれだけ言うと、私の心臓のある辺りに手を翳した。
ぼんやりとそれを見ているが、ほのかに温かい感じがあるだけで特に違和感はない
大賢者は一分ほど手を翳していたが、ゆっくりと手を離した。そして、その表情は先ほどまでの厳しいものから、慈愛に満ちたものに変わっていた。
「この坊が魔獣でないことが分かった。魔素を一切感じぬ。それどころか、魔導器すら持っておらぬ」
ネッツァー氏がその言葉に反応する。
「魔素を一切感じない……魔導器がない……なるほど、だから私が治癒を行った際、手応えがなかったのですね……確かに魔導器がない魔獣は存在し得ません」
その言葉に大賢者が満足げに頷く。
「その通りじゃ。魔象界から顕現した者であれば、魔象界と自らを繋ぐ魔導器がなければならぬ。それなしに力を保つことができぬからじゃ。それに魔素を持たぬことはあり得ぬし、儂をたばかることもまた不可能なことじゃ」
私には半分以上分からないが、どうやら魔力を一切持たず、魔力を変換する器官も持っていないらしく、魔獣である疑いは消えたようだ。
その言葉に安堵の息を吐き出しそうになるが、それを意志の力で微笑むだけに押し留めた。
「疑って済まなかったの。坊が普人であることは間違いない。まあ、特殊な体質ではあるがの」
そう言いながら、私の頬を触った。
後で知ったことだが、人間、この世界で言う普人であっても通常は魔導器という器官を有している。ごく稀に魔導器を持たない者が生まれてくるが、その場合、魔導を使うことが一切できない。
「気にしておりません」
そう答えるものの、その手の感触に違和感を覚えた。見た目は節くれだった老人の指なのだが、妙に柔らかく、更に若い女性のような甘い香りがしたためだ。
そして、そのことを思い切って聞いてみた。
「お姿を変えていらっしゃるのでしょうか?」
大賢者は私の問いに目を見開く。
「なぜそう思うのじゃ?」
「手の感触が見た目と違い、とても柔らかでした。それに長命種である森人は年老いた姿にならないと本に書いてありました。もしかしたら、森人ではないのかと思ったのです」
大賢者は感心したような表情を浮かべる。
「坊は聡いの。握手をしたことは数え切れぬほどあるが、手の柔らかさに言及した者は初めてじゃ」
そう言ってニヤリと笑い、ゆっくりと背中を向ける。
「確かにこの姿は仮初のものじゃ。まあ、森人ではないがの」
そして、クルッという機敏な動きで私の方に向き直った。
白髪の老婆から黒髪の妙齢の美女に変わっていた。秀でた額に白皙の肌、漆黒の大きな瞳に桜色の形のよい唇。地球のどの人種とも違うが、その美しさに圧倒される。
「これが儂の本当の姿じゃ。叡智の守護者の者たち、そしてグライフトゥルム王家の一部の者しか知らぬがの。この姿では大賢者らしくないと評判は良くないのじゃ。フォフォフォ」
このしゃべり方なら鋭い目つきの老婆の方がしっくりくる気がする。
大賢者はそこで表情を真面目なものに変える。
「坊よ。己が何のために生まれてきたのか、試してみたくはないかの?」
突然の問いに戸惑う。
「どういうことでしょうか?」
「そなたには類稀なる知性がある。しかしじゃ、知性は知識がなくば、十全に生かすことができぬ」
一般論としては分かるが、何を言いたのか理解できず、更に困惑する。
「おっしゃることは分かりますが……」
「我が叡智の守護者の塔には数万冊にも及ぶ書物がある。それこそ数千年前、すなわち皆が言う神話の時代のものすらあるのじゃ。儂の他にも大導師や導師たちなら、そなたの疑問に答えられるじゃろう。どうじゃ、我が塔に来ぬか?」
大賢者の言葉に後ろに控えていたネッツァー氏が驚きの声を上げる。
「マグダ様が直々に勧誘するなど、初めてのことではありませんか!」
「そうじゃの。じゃが、この坊には魔導を使う素質がない。魔導師として受け入れるわけではないからの。気まぐれのようなものじゃ」
そんな会話を聞いているが、頭に入ってこない。
神話の時代から生きる伝説の人物に勧誘された。それもこの私の能力を買って……。
しかし、私にそれほどの価値はない。今回のことも日本にいた時の知識があったから言えたことであり、八歳の少年ならともかく、きちんとした教育を受けた社会人ならこの程度のことを言える者は日本なら掃いて捨てるほどいるだろう。
誘われるまま、魔導師の塔に行けば、すぐにボロが出ることは間違いない。
そうなった時、再び私に疑念の目が向く可能性がある。一応、世界最高の知恵者のお墨付きを得たから、そう簡単には疑われないと思うが、自分に別の記憶があるという事実を知られることは危険だ。
「お言葉はうれしいのですが、私はこの通り身体も弱いですし、第一、まだ初歩的な教育すら受けていません。大賢者様はもちろん、導師様方のお手を煩わす価値はございません」
そう言って断ろうとしたが、大賢者はニヤニヤと笑いながらネッツァー氏に視線を向ける。
「マルティンよ。坊はこう申しておるが、そなたの意見を聞かせてくれぬか?」
ネッツァー氏はそこで軽く頭を下げてから話し始める。
「マティアス君の言う通り、彼の身体は万全ではありません。ですので、塔で治療を受けることは彼にとっても良いことだと思います。教育云々のことですが、この二ヶ月間、見てきましたが、彼ほど一を聞いて十を知るという言葉が相応しい者を私は知りません。確かに知識に足りない部分はあるでしょうが、ここで教育を受けるより、塔で導師様たちに指導を受けた方がはるかに効率的だと思います」
「うむ。儂も同意見じゃ。儂を唸らせるほどの知者に出会ったのは何十年ぶりじゃろうか……そうじゃ。まだ皇帝を名乗る前のオスヴァルト以来じゃから、五十年以上前のことかの」
その言葉にネッツァー氏が驚きの表情を浮かべる。
「オスヴァルトとはゾルダート帝国の建国を宣言した初代皇帝オスヴァルト二世のことでしょうか?」
「そうじゃ。じゃが、奴も四十を超えておったからの。この坊とは比較にならん」
どうやらゾルダート帝国という新興国家の創始者と比較されているようだが、徐々に評価が高くなることに胃が痛くなる。
ちなみにこれも後から知ったことだが、初代皇帝なのにオスヴァルト二世という名であるのは、ゾルダート帝国の前身、ゾルダート共和国が成立した年を帝国の建国元年とした関係で、オスヴァルト一世という皇帝がいることになっているためらしい。
「では子爵には治療目的のために叡智の守護者が預かると伝えましょう。子爵夫妻もマティアス君の身体のことが心配でしょうから」
「それがよいの。では、決まりじゃ」
いつの間にか決定事項になり焦る。
「えっ! あ、あの……」
そう言って止めようとするが、大賢者もネッツァー氏も私の話を聞くことなく、段取りの話を始めた。
「ここからだと十日ほどの旅となるの。季節的には今が良いが、今少し体力をつけた方がよかろう……いろいろと準備もあるじゃろうし、半月ほど時があった方がよいの……」
私に意見を聞くことなく、ドンドン話が決まっていく。
何度か断りの言葉を言ったが、謙遜していると思われ、真剣に受け取ってもらえない。
両親を交えての話が始まると、父も母も大賢者が自ら治療の手配をしてくれることに感激し、断るという流れは完全に断ち切られた。
(何とかボロを出さないようにしないと……でも、私にそんなことができるのか? 私は天才でも何でもない、一般人に過ぎないんだが……)
内心で頭を抱えながらも、これ以上何もできないため、諦めて苦笑を浮かべるしかなかった。
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