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2章 竜騎士団編
54.潜入
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団長の部屋から抜け路を繋いだ先のひとつは王の寝室だった。
僕とクロードの二人で行くはずだったが、どうしてもエドガーがついて行くと言い張り三人で偵察に行く羽目になった。騎士団のことは隊長格の皆にまかせてきた。
もしクロードが考える様に王の身辺に居る人物が首謀者だとしたら僕らが偵察に来ていることは見つけられてはいけない。見つからない様に隠密にこなさないといけない。
王はベットに横になっていた。辺りには誰もいないようだ。
「おや?どこから入ってきたのかな?」
「みぃ……」
「おやおや。かわいいねえ。おいで」
そうなのだ。僕は覚えたての魔法で擬態してみたのだが、何故か子猫になってしまった。
ちなみにエドガーは犬になった。見た目はビーグル犬のようだ。
どうもまだ自分のなりたいものになるには経験不足らしい。
僕はベットの傍に寄じ登って王様の顔を覗き込んだ。
「みゃみゃっ??」
驚いて声をあげてしまう。少し前まで王は元気ではつらつとしていたはずだった。
なのにそこには青い顔にやせこけた老人が寝ていたからだ。
「ふふ。驚かせてしまったかね?どうやら私の魔力もそろそろ底がついてきたようでね」
「わふっ!……くぅん」
エドガーが王にすり寄る。
「ははは。体格の良い犬だね。よしよし」
エドガーは王の顔をぺろぺろ舐め続けていた。
「くすぐったいよ。ははは」
「……」
黒猫のクロが王の傍に寄ってきた。
「……賢そうな猫だね。そうだ、私の独り言を聞いてくれるかい?」
「私の前の、私の先代の竜騎士団団長はね、珍しく直系ではなかったんだよ……」
ドラクル王も孵化に時間がかかったのだそうだ。
孵化に時間がかかる。それは卵に注がれる親からの愛情が足りない場合に起こる現象だ。
僕もそうだった。だとしたら王の両親は早くに亡くなったのかな?
慰めるつもりで僕は王様の手をちろっと舐めた。
ふふって笑いながら王は僕の喉を撫でてくれる。
おお!気持ちいい。そうかこんな風にかんじるんだな。ゴロゴロと喉が鳴ってしまう。
「王の座を空白にすることはできず、母方のいとこの息子が王代理となった。だが、彼は竜が苦手でね。初めて竜を見た時に腰を抜かしてしまったんだよ」
そういえば過去の団長の中に竜の姿に怯えて王都からでなくなったのがいるって聞いた。
「その上、竜の秘密が隠されているこの城を暇を見つけては改造を繰り返していたらしい」
なんだか子供っぽ過ぎる。竜が苦手でその秘密が隠されてる場所を壊すなんて。
「彼には息子が一人いてね。その子は自分が次期王になると思い込んでいた。いや、確かにその可能性はあったんだよ。しかし私が孵化してしまった。生まれた私は父親にそっくりだったそうだ」
側近たちはすぐに世代交代を主張し、もとより公務や政治に詳しくなかった先代王は失脚したらしい。
「成人したわたしは伴侶をみつけユリウスが産まれた。側近らは喜んだ。わたしにそっくりだったからだ。次にラドゥが産まれた。彼は伴侶にそっくりで私は幸せだったよ」
だが、この頃から王の伴侶は寝込むことが多くなったという。
王はそれまでの仕事を減らし、出来るだけ伴侶の傍にいるようにした。
思えば仕事にあけくれ伴侶の事を思いやることが少なかったと反省したのだという。
そして第三皇太子のエドガーが産まれ……しかし、伴侶はその後すぐに亡くなってしまった。
「エドガーはわたしと伴侶の良いところを受け継いでくれたのだよ」
王がコホっと軽く咳をすると傍に居る犬がぺろりと王の頬を舐めた。
「お前は可愛い子だね。」
「くぅん……」
犬が心配げにすり寄った。
「エドガーには愛する人と生きて欲しい。ふふ、しゃべりすぎたかな?少し疲れたようだ。さあ、もう行きなさい」
三匹はうながされるようにそっと王の寝室から出て行った。
「行って己が人生を見極めておいで。振り返る必要はないよ。自分の足で歩んでいきなさい」
ぽつりと王が囁いた。
~~~~~~~~~
「父上。薬の時間ですよ」
「……ラドゥか。もうそんな時間かい?世話をかけるね」
「なんだか、この部屋獣臭くありませんか?」
「ん?獣人が掃除にでも来てたんだろう?寝ていたから気づかなかったよ」
「獣人が王の部屋に出入りすること自体がおかしいと思うのですがね」
「そんなことはない。能力のある者は人も獣人も同等に扱ってやるべきだ」
「そうですか……さぁ、しっかり飲み干してくださいよ。残したりせずにね」
「あぁ。わかっているよ」
ラドゥはにこやかに王が薬を飲むのをみていた。
「ほら。全部のんだよ。この薬の苦さは何度飲んでも慣れないね」
「ふふ。良薬は口に苦しというではありませんか」
「笑った顔が、お前は本当に我が伴侶に似ているね」
「ええ。……父上には似てませんね」
「だが、エドガーはお前にも似ているぞ」
「あの子は私の弟です」
「ユリウスもお前の兄だぞ」
「ええ。でも兄上は父上に似すぎております」
「そうか……ごほっごほっ……」
「もうお休みください。しゃべりすぎたのではないですか?」
ラドゥは笑顔のまま王をじっと見ていた。
~~~~~~~~~
『ねえ、王様は僕らの事勘づいてたんじゃないかな?』
『まさか!野良ネコと野良犬って思ったんじゃぁ……ないだろうな』
『ないでしょうね。おそらくわかってらしたと』
『そうか。さすが親父だな』
『うん。ひょっとして見張られてるんじゃないのかな』
『親父がか?王だぞ?』
『いや、その可能性は高いでしょうね。近くに首謀者がいたのかもしれません』
『そっか。気を付けよう。とりあえず偵察に行くよ!』
三匹は城の中を手分けして駆け巡った。
途中から子猫のアキトはクロに首根っこを咥えられながらだったが……。
『城の中の兵士の数が多すぎる!』
『ああ。以前の倍以上に増えている』
『なんだか皆目が血走ってる。おかしいよ』
『そうだな、まるで誰かに操られてるようだぞ』
操るなんて……まるで思いのままに人を動かすなんてことが出来るはず……。
いや、いる。そんなことが出来る奴が一人いた!
~~~~~~~~~~
次回、血なまぐさいシーンあり。
僕とクロードの二人で行くはずだったが、どうしてもエドガーがついて行くと言い張り三人で偵察に行く羽目になった。騎士団のことは隊長格の皆にまかせてきた。
もしクロードが考える様に王の身辺に居る人物が首謀者だとしたら僕らが偵察に来ていることは見つけられてはいけない。見つからない様に隠密にこなさないといけない。
王はベットに横になっていた。辺りには誰もいないようだ。
「おや?どこから入ってきたのかな?」
「みぃ……」
「おやおや。かわいいねえ。おいで」
そうなのだ。僕は覚えたての魔法で擬態してみたのだが、何故か子猫になってしまった。
ちなみにエドガーは犬になった。見た目はビーグル犬のようだ。
どうもまだ自分のなりたいものになるには経験不足らしい。
僕はベットの傍に寄じ登って王様の顔を覗き込んだ。
「みゃみゃっ??」
驚いて声をあげてしまう。少し前まで王は元気ではつらつとしていたはずだった。
なのにそこには青い顔にやせこけた老人が寝ていたからだ。
「ふふ。驚かせてしまったかね?どうやら私の魔力もそろそろ底がついてきたようでね」
「わふっ!……くぅん」
エドガーが王にすり寄る。
「ははは。体格の良い犬だね。よしよし」
エドガーは王の顔をぺろぺろ舐め続けていた。
「くすぐったいよ。ははは」
「……」
黒猫のクロが王の傍に寄ってきた。
「……賢そうな猫だね。そうだ、私の独り言を聞いてくれるかい?」
「私の前の、私の先代の竜騎士団団長はね、珍しく直系ではなかったんだよ……」
ドラクル王も孵化に時間がかかったのだそうだ。
孵化に時間がかかる。それは卵に注がれる親からの愛情が足りない場合に起こる現象だ。
僕もそうだった。だとしたら王の両親は早くに亡くなったのかな?
慰めるつもりで僕は王様の手をちろっと舐めた。
ふふって笑いながら王は僕の喉を撫でてくれる。
おお!気持ちいい。そうかこんな風にかんじるんだな。ゴロゴロと喉が鳴ってしまう。
「王の座を空白にすることはできず、母方のいとこの息子が王代理となった。だが、彼は竜が苦手でね。初めて竜を見た時に腰を抜かしてしまったんだよ」
そういえば過去の団長の中に竜の姿に怯えて王都からでなくなったのがいるって聞いた。
「その上、竜の秘密が隠されているこの城を暇を見つけては改造を繰り返していたらしい」
なんだか子供っぽ過ぎる。竜が苦手でその秘密が隠されてる場所を壊すなんて。
「彼には息子が一人いてね。その子は自分が次期王になると思い込んでいた。いや、確かにその可能性はあったんだよ。しかし私が孵化してしまった。生まれた私は父親にそっくりだったそうだ」
側近たちはすぐに世代交代を主張し、もとより公務や政治に詳しくなかった先代王は失脚したらしい。
「成人したわたしは伴侶をみつけユリウスが産まれた。側近らは喜んだ。わたしにそっくりだったからだ。次にラドゥが産まれた。彼は伴侶にそっくりで私は幸せだったよ」
だが、この頃から王の伴侶は寝込むことが多くなったという。
王はそれまでの仕事を減らし、出来るだけ伴侶の傍にいるようにした。
思えば仕事にあけくれ伴侶の事を思いやることが少なかったと反省したのだという。
そして第三皇太子のエドガーが産まれ……しかし、伴侶はその後すぐに亡くなってしまった。
「エドガーはわたしと伴侶の良いところを受け継いでくれたのだよ」
王がコホっと軽く咳をすると傍に居る犬がぺろりと王の頬を舐めた。
「お前は可愛い子だね。」
「くぅん……」
犬が心配げにすり寄った。
「エドガーには愛する人と生きて欲しい。ふふ、しゃべりすぎたかな?少し疲れたようだ。さあ、もう行きなさい」
三匹はうながされるようにそっと王の寝室から出て行った。
「行って己が人生を見極めておいで。振り返る必要はないよ。自分の足で歩んでいきなさい」
ぽつりと王が囁いた。
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「父上。薬の時間ですよ」
「……ラドゥか。もうそんな時間かい?世話をかけるね」
「なんだか、この部屋獣臭くありませんか?」
「ん?獣人が掃除にでも来てたんだろう?寝ていたから気づかなかったよ」
「獣人が王の部屋に出入りすること自体がおかしいと思うのですがね」
「そんなことはない。能力のある者は人も獣人も同等に扱ってやるべきだ」
「そうですか……さぁ、しっかり飲み干してくださいよ。残したりせずにね」
「あぁ。わかっているよ」
ラドゥはにこやかに王が薬を飲むのをみていた。
「ほら。全部のんだよ。この薬の苦さは何度飲んでも慣れないね」
「ふふ。良薬は口に苦しというではありませんか」
「笑った顔が、お前は本当に我が伴侶に似ているね」
「ええ。……父上には似てませんね」
「だが、エドガーはお前にも似ているぞ」
「あの子は私の弟です」
「ユリウスもお前の兄だぞ」
「ええ。でも兄上は父上に似すぎております」
「そうか……ごほっごほっ……」
「もうお休みください。しゃべりすぎたのではないですか?」
ラドゥは笑顔のまま王をじっと見ていた。
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『ねえ、王様は僕らの事勘づいてたんじゃないかな?』
『まさか!野良ネコと野良犬って思ったんじゃぁ……ないだろうな』
『ないでしょうね。おそらくわかってらしたと』
『そうか。さすが親父だな』
『うん。ひょっとして見張られてるんじゃないのかな』
『親父がか?王だぞ?』
『いや、その可能性は高いでしょうね。近くに首謀者がいたのかもしれません』
『そっか。気を付けよう。とりあえず偵察に行くよ!』
三匹は城の中を手分けして駆け巡った。
途中から子猫のアキトはクロに首根っこを咥えられながらだったが……。
『城の中の兵士の数が多すぎる!』
『ああ。以前の倍以上に増えている』
『なんだか皆目が血走ってる。おかしいよ』
『そうだな、まるで誰かに操られてるようだぞ』
操るなんて……まるで思いのままに人を動かすなんてことが出来るはず……。
いや、いる。そんなことが出来る奴が一人いた!
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次回、血なまぐさいシーンあり。
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