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1章 僕は魔女?

31.忍び寄る闇

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「はぁ。王族って大変なんだな」
   目まぐるしい新年の挨拶の波に、第三皇太子の伴侶をひとめ見ようと集まった来賓達に僕はもみくちやにされた。
 もちろん、僕の隣にはエドガー、背後にはクロードがぴったりくっついて警護をしてくれている。
「アキトを狙ってる奴がいるかもしれません!」
  いつもよりもピリピリした感じのクロードからはときおり殺気さえ感じた。黒い尻尾もピンと立ったままだ。
「クロ、お客さんが怖がるから出来るだけ気配を消して」
「ぐ‥‥‥申し訳ありません」
 なぜだかここ数日クロードが警戒気味なのだ。なにやらわずかに闇魔法を感じるんだという。でも微量すぎて特定できないらしい。
 エドガーも忙しい合間を見ては僕の側についててくれる。
「心配症だなあ。大丈夫だよ。侍従のバレットもいてくれるし1人には絶対ならないから」
「はい!アキトさま!お任せ下さい」バレットは頬を染めて背筋を伸ばした。
「‥‥‥ったく、アキトは人誑ひとたらしなんだから」
「なんか言った?エドガー?」
「いいえ!なあんにも言ってませーん。無自覚なのが一番タチが悪りぃや」
 その後も謁見や晩餐会等に参加した。アキトが出席することで王族の一員としての顔合わせの意味があるらしい。

 
 王様や貴族たちの会話の意味がさっぱりわかんなかった。立場とかしきたりとかもっと勉強しないといけないなぁ。でもエドガーの隣でただ立っているだけっていうのは違う気がする。僕に出来る事はなんだろう?
 ここしばらくのクロードとの魔法訓練で僕には闇魔法が使えないことが確定した。
 今までは練習すれば出来るんじゃないか? とわずかに望みを持っていたがそういうものじゃないというのがわかった。
 
 めっちゃ沈んだ。僕は魔力は高いのに攻撃魔法が使えない‥‥‥こんな魔女いらね~んじゃねえの?
 そもそも魔女ってなんだよ。誰かとエッチしたらそいつの魔力が上がるってさ。
 これってチートなの? それで身体を狙われるってありえな~い!
「アキト‥‥‥百面相ですか?」
「ひゃいっ! びっくりした」
 くっくっくと隣でクロードが肩を揺らして笑っている。
「なんだよっ。笑わなくてもいいだろ」
 しまった!エドガーの部屋に戻ってたんだった。考え事が顔に出てたらしい。
「すみません。可愛すぎて‥‥‥」
 うぉお。クロード。その流し目エロいよ。それに可愛いって?!
「‥‥‥なっ‥‥‥なんだよ。それ‥‥‥」
 うわあ。顔がっ。顔が熱い。きっと僕ってば赤くなってる。
「アキト。可愛い。可愛すぎて心配です」
 クロードが僕の腰を抱き寄せ、うなじにキスをしてきた。
「ふふ。くすぐったい」
「アキト‥‥‥」
「え? 痛っ!」
  クロードが何かを囁きながら僕の耳たぶにかじり付いた。
「おまじないです。すみません、痛みますか?」
 そのままペロペロと舐められてくすぐったい。頭に生えてる黒耳がへこんと横に垂れてるから申し訳ないと思ってるんだろう。
「ん。ちょっとだけ。あはは、こら、くすぐったいよ」
「はぁ。香りが今日はキツイですね」
「え?僕ってなんか匂い出してたの?」
「おや?無自覚でしたか?甘い雄を誘う匂いがしますよ」
「!!へ‥‥‥へえ。そ‥‥‥なのかあ」
 そう言えば前にも抱かれた次の日がヤバいって言われてたなあ。なんなのそれ?僕の身体ってなに?怖い!てか、恥ずかしい!抱かれた時だけかと思っていたがそうでもないの?!
「え~と、その‥‥‥エドガー遅いね」
「ふふ。そうですね、ココで貴方を押し倒したらまた抜けがけしてる!って怒られそうですね」
 わわわ。そんな僕が抱かれたいみたいじやないか。まぁ、そうなんだけど。。

「お茶でも飲もうか?」
「そうですね」
 そこへバレットがやってきた。
「クロード様、王様がお呼びです」
「また宰相の話かな?」
「お嫌なら早めにお断りされた方がよろしいのではないでしようか?」
「そうだな。では、すぐ戻るので少しの間アキトを頼む。誰がきても扉を開けないように」
「かしこまりました」

「ではアキト様、お茶にしましようか?」
「うん、一緒に飲もうよ」
「え?私のようなものがご一緒してよろしいのですか??」
「当たり前じやないか」
「ありがとうございます!」
 バレットは嬉しそうにアキト共にお茶を飲み始めた。だが、しばらくして‥‥‥。
 
 ん?なんだこの感じ? 嫌な空気がする。バレットを見ると顔色が急に悪くなる。
「どうしたバレット?」
「す‥‥‥すみません、急に胸が」
 バレットがその場にうずくまって身体を震わしていた。
「え? 毒? いや。僕も同じポットからのお茶をのんだから毒ではないな。そのままでいて。治癒をしてあげる」
 アキトは急いでバレットの胸に手を当てた。
「ぐあっ!」
 バレットはのけぞり更に苦しそうにしだした。
「ええ?!大丈夫?」
 どうしよう?!僕の治癒じゃ効かないのか?
「アキト様‥‥‥申し訳ありません。私の部屋まで連れていってもらえませんか?」
「わかった! もう今日は休んでいいからね。連れてくよ」
 僕はバレットを支えて部屋を後にした。


「エドガー戻ってたのですか?アキトは? 」
「は?。クロードとアキトは一緒じゃないのか? 」
「なんっ‥‥‥?!! バレットはどこです?」
「いや、俺が部屋に入った時は誰も居なかった。てっきりお前と一緒だと」
「探さなければ!!」
「おいっ。この部屋は侵入者が外から入ってこれない様に結界を貼ってあるはずだろ?」
「そうです。結界が破られればわたしにすぐにわかるようにしてあります。」
「ということはアキト自身がココから出たというわけだな?」
「バレットがいない‥‥‥」
「‥‥‥あいつはアキトに心酔していたはず。手荒な真似はしねえはずだが」
「だがエドガー。今夜は満月です。アキトの魔力が活性化する日です」
「それってヤバいじゃねえか!」
「くそっ!やられました!なんらかの闇魔法が関係してるはずです」
「今日は来賓客も多い。下手に動いたらアキトに不名誉な噂も流れるかもしれねえ」
「相手はそこを狙ったんでしょう。許せません」
「もしアキトに手を出していたら‥‥‥」
「八つ裂きにしてやるっ!!」
「俺はそういう本性丸出しのクロードの方が好きだぜ」
「うるさいっお前の前だけだ」

~~~~~~~~
「バレット大丈夫か? 」
 おかしい。今日は来賓客が多いはずなのに。何故誰一人出会わないのだろう?
 それにいつも歩いてる廊下のはずが違和感がありすぎる。どこに向かってるのだろう?
「アキトさ‥‥‥ま。私を置いて‥‥‥お戻り‥・・・・ください」
「え?! 何言ってるんだよ。こんなお前を置いていけないよ!」
「ダメ……です……どう・・・・・・か」
「バレット? どうしたんだよ?」
「あう……ぐうっ」
 バレットは何かを言いたげに唇を開きかけるがその場でうずくまってしまった。

「アキト。ここにいたのか? 」
 振り向くとクロードが立っていた。
「クロ!! バレットが苦しそうなんだ」
「そうだな。……無理に
 そういうとクロードがバレットに触れた途端。ドサっとその場に倒れてしまった。
「クロ……バレットに何したの?」
「大丈夫ですよ。抱えやすいように気を失わせました。さあこちらですよ」
 クロードがバレットを抱え、扉を開けた。
「こんなところに部屋なんてあったんだ? 」
「アキト。中へどうぞ。エドガーが待っていますよ」
「エドガーが? どうし……て?」
 部屋の中は甘ったるい香りで充満していた。
 なんだか頭がぼんやりする。身体も熱くなってきたみたいだ。

「よう。待ってたぜ。さあ早くこっちへこいよ」
 エドガーがベットで横たわっている。
「エドガー? こんなところで何をしてるんだ?」
「何ってアキトを抱くためにここに居るんじゃないか?」
「僕を? 僕を抱くの? 」
 確かにこの熱は魔力が高まってる感じがする。でもなんだか変だ。
「なぁ。いつものように俺に足を広げろよ」
  なんだ?エドガーらしくない?僕を見下したような目線だ。
 僕は後退りしようとしたが、後ろからクロードに肩を掴まれた。
「逃がしませんよ」
 僕はそのままクロードに小声で囁いた。
「今日のエドガーは変だ。抱かれるならクロがいい」
 ビシっと背後のクロードが固まった。背中に感じる彼の鼓動が早まったのがわかる。
「クロ? どうしたの?」
 振り返ってクロードを見つめると顔が赤くなっていくのがわかる。綺麗なエメラルドの瞳が揺れている。あれ?クロードってこんな瞳の色だっけ?
「……っ!」
 急に耳たぶがジンジン痛み出す。なんで痛いんだろう?誰かに噛まれたような?

「そうか、アキトは3人プレイが好きなのか? 相手が1人じゃ物足りないんだな? くっふふ。いいぞ。こっちにこい。3人で楽しもうじやないか」
「何を勝手なことを。。」
 クロードがエドガーを睨みつけている。
「ぐふふ。この香りの中ならお前だって雄の部分が興奮してるんじゃないのか? それにアキトからいい匂いがあふれてる。きっとこいつも喜ぶにちがいないさ」
「くっそ……」
 エドガーが言ってることが理解できない。クロードが悔しそうな顔をして僕を見ていた。

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