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4宰相は狸親父

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 ユウマは探索魔法だけは苦手だったようで、ゴードンの気配を察することが出来ず途方に暮れていた。そんなユウマの気持ちを知ってか知らずか、宰相はユウマのチカラを感嘆し褒たたたえてくる。
「勇者様。凄いおチカラでございます。どうかどうかお願いでございます。魔王討伐にお力をお貸しくださいませ。魔王が復活してしまえばこの国が。いいえ。この世界が滅んでしまいます。さすれば貴方の師匠であるゴードンも……」
「師匠は今どこに居るんだ?」
「ゴードンは、利き腕を魔物に呪われてしまったのです。そのため、隣国の療養所に送らせていただきました」
 宰相は悲しそうな顔をしてみせる。
「隣国の? 先程の奴は国外追放などとほざいていたぞ」
 鋭い視線のままユウマが宰相を睨みつける。
「そ、それは。ゴードンは平民出身のため、一部の貴族からはあまりよく思われてなかったので、そのような言い方になってしまったのでしよう」
「本当だろうな? 師匠は無事だろうな?」
「勇者様、ゴードンは常日頃からユウマさまこそが魔王を討伐できる勇者だと胸をはっておりました。どうぞその思いをむげにしないでやってくださいませ」
「わかった。魔王討伐には参加する」
「おお! ありがたきお言葉!」
「だが討伐のメンバーは僕が決める。実力重視で行くから階級関係なく選ぶことにする。ゴードンもそのメンバーだ」
「おそれながら、ゴードンの利き腕はもう動きますまい、危ない旅路に連れて行くのは危険でございます。それに本人も足手まといになると気を使うでしょう」
「師匠はそんなにひどいのか?」
「はい。そのためすぐに隣国へと旅立ったのでございます」
 ユウマはあの時もてるチカラを一気に放出し結界を壊したが、そのせいで気を失ってしまったのが残念で仕方がなかった。その間に何が起こっていたのかが分からない。ゴードンを人質にとらえられてるのかもしれない。もっと強くなるために鍛錬しないと。そしてチカラの使い方を覚えないといけない。宰相のいう事を真に受ける気はないが何があったか情報を収集しなければ。あれは絶対誰かが仕掛けた罠に違いない。 
  そう思い今回は宰相のいう事を信じるふりをすることにした。

「お優しい勇者様。ご心配には及びませんよ。ゴードンはほんの1~2年もすれば元気になって戻ってきますよ」
「1~2年? そんなにかかるのか?」
「はい。魔物の呪いをバカにしてはいけません。魔王でもない限り呪いを解除するのはなかなか難しいものなのです」
「それって魔王を倒せば呪いがとけるかもしれないということなのか?」
「あるいは。そうかもしれません。是非とも勇者様が魔王を倒し、ゴードンを迎えにやってくださいませ」
「魔王を倒すまでは会いに行けないというのか?」
「はい。その方がよろしいかと。ゴードンのことですから動かぬ利き腕をみせたくないでしょうし。勇者様が魔王を倒すのが早いかゴードンが戻るのが早いか競争ですね」
「わかった。なるべく早く倒すようにがんばる」
「おお。それがいいです。弟子がこの国を救ったと知ったら師匠であるゴードンは喜ぶに違いありません」
「師匠が? ……そうだろうか」
「当たり前じゃありませんか。ささ、そうと決まれば討伐メンバーの選択について相談しましょう」
 嬉々として前を行く宰相を疑わしく思いながらユウマは後をついて行った。

◇◆◇
 

「宰相殿」
 物陰から声がかかり宰相が足を止める。
「首尾はどうだ?」
 宰相が振り向かず声だけをかける。
「はっ。誰にも気づかれず国外に追放してまいりました。そして探索できない様に奴めに他人から認識されない認識阻害魔法もかけてまいりました」
「そうか。勇者はまだ子供だ。この世界に来て初めて懐いた相手に心を許してるだけでしばらくたてば奴の事なぞ忘れるだろうさ」
 回復魔法が使えるヒーラーは女性が多い。美人でスタイル抜群の子をメンバーに加えたら良いだろう。若い初心な子供なぞ色仕掛けで骨抜きにしてしまえばこちらの思うつぼだ。女性には報酬の倍を弾ませとけば何とかなるだろうと宰相は試算していた。
「それよりも奴がこちらへ舞い戻る事はないだろうな?」
「はっ。所詮は下世話な平民出の男。呪われ、利き腕ももはや使えない相手でございます」
「くく。お前まさか回復魔法もかけずに捨ててきたのか?」
「かけなくてもよろしかったのではございませんか? そのほうが宰相様のお気が済むのではと思いまして」
 ゴードンさえいなければ異世界から来た子供なぞあっという間に口車に乗せてしまっていたはずだったと宰相は思い込んでいた。
「ただチカラが強いだけの異世界人の子供だ。これからどうにでも出来るわい。ここからがわしの腕の見せ所じゃな」
「さようでございますね」
「もう良い。下がれ」
「はっ。かしこまりました」

「あの魔術師少ししゃべり過ぎだな。早いところ口封じをしておいたほうが良いかもしれぬな」
 宰相はニヤリと笑うとユウマが居る部屋へと歩き出した。
 
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