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番外編:見かけによらない

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 イスベルクの公務に同行するのは初めてだ。今日は法案などを決める日らしい。オレをみて好意的な者やそうでない者もいる。まあ、そうだよね。いきなりよその国からやってきて婚儀やなんだと騒ぎになるし、オレときたら見るからに弱弱しいしで、きっと馬鹿にされてるに違いないだろうなと解釈している。
「イスベルク様。これはどういうことでしょうかな?」
 あれは大臣ですと横でシーヴルが教えてくれる。ありがたいな。本当に良い執事だよ。
「なにがだ?文句があるなら言え」
 イスベルクからピシピシと音がする。周りの空気が凍り始めてるんだな。だが大臣も怯んでいない。同じようにピシピシと音がしだす。だめじゃん。氷像づくりしてんじゃないよ。冬の祭典じゃあるまいし。
「差し出がましく会議の邪魔をして申し訳ございません。しかし。本日は一つ議題にのせさせていただきたい重要案件がございましてお集まりいただきました。取り急ぎ皆さまの意見とお知恵を拝借させていただきたいのです」
 と、まあこんな感じで良いかな?前世の大学のプレゼンテーションを思い出して言ってみた。
「は……?」
「へ?……」
「ルミエール様ですよね?」
 なんだよ。皆驚いた顔しちゃって。あ~、その顔は前に炎の国でお前そんなに話せたのかって言われた時の顔とそっくりだわ。ひょっとして皆オレがこんなに喋らないって思ってたのか?それか普段ちょっと間抜けみたいな話し方だからか?悪かったな。両方オレなんだよ。幼げな18歳のルミエールと格闘技オタクの22歳の陽向ひなたが共存してるのがオレだ。普段はできるだけルミエールに合わせてるだけなんだ。

「わかってると思うが別にお前達の意見を聞かずとも俺の一存で、独断で案は通すことが出来るのだぞ。ルミエールがそれではお前らが困るだろうと議題にのせろと言ったのだ。お前達感謝しておけよ」
 イスベルクごめんよ。イライラしてるのはオレが言うこと聞かなかったせいだよね。イスベルクの気持ちは嬉しいけどやっぱり今後の事を考えると皆に納得してもらった方が良いと思うんだ。
「わかりました。ではどのような案件なのかお教え願いますか?」
「はい。まずはこの国の最大懸念は戦ではありません。極寒をどう乗り越えて行くかです。この地をミスリルだけの地にするおつもりですか?鉱物は取り終えたら廃坑が残るだけです」
「ふん。知った口を。ではどうしろというのだ?」
「巨大温室を作成して田畑を造成します」
「はあ?何を馬鹿なことを。吹雪が起き極寒になれば曇った日が続く。陽もあたらぬ冷たい場所で作物なぞできるものか」
「温度管理はおまかせください」
「はっはっは。失礼ですがルミエール殿はろうそくの炎しか出せないと聞きましたが?」
「そうですね。こんな感じです」

 オレは手のひらを上に向けてぽうっとろうそくの炎を出した。その炎はぽうっぽうっぽうっぽうっぽうっ……と雪だるま式に増えていく。あっという間に会議室は常夏のような温度になった。そのまま片手をあげるとらせん状にろうそくの炎が舞い上がりくるくると宙を舞う。疑似太陽っぽいものが出来た。オレの首にはミスリルのネックレスがかけられている。普段の倍以上のチカラが出せてるのだろう。他国がミスリルを欲しがるのもわかる気がする。
「面白そうです!私は賛成だ」
「よし!。わしはこれを投資だと考えるぞ。今はそうでなくてもいづれ大きな資産に化ける可能性が高い」
「ありがとうございます。ではまずこの土地に含まれている成分を調査してください。そして交易で苗や種を集めてください。あとはミスリルの加工が上手いものを紹介してください。温室は可能であればミスリルで作ります」
「ミスリルでだと?」
「はい。鮮度を生かす魔法を構築しましょう。そしてミスリルで作る事によって他国への牽制ともなります」
「他国への牽制とは?」
「皆が欲しがるミスリルを惜しみなく作れて取れる国。それだけの財力とチカラがあるぞという事を他へ知らしめるのです」
「ふむ……なかなか面白い」
「だがそれだけ沢山のミスリルがとれるのかが問題だぞ」
「はい。……実は今言ったのは建前です。作るのは水晶や他鉱石でもいいのです。ただ他国にはミスリルで作ったものだと思わせればいいんだ」
 できれば強化ガラスがいいんだけど。作れるかな? 


「ルミエール。お前凄いな」
「ただ城に籠ってるだけって嫌なんだ。ちゃんとイスベルクの役にたてるようになりたい」
「俺のために一生懸命考えてくれたんだな」
「へへ。まあね。さあこれから頑張るぞ!」
「無茶はしないでくれ。何かあればすぐ俺に言うんだぞ」
「うん。わかってるよ」
「本当はこのまま閉じ込めてしまいたいくらいなんだが……」
 イスベルクが後ろから抱き込んでくる。心配性なんだな。
「気にかけてくれるのはすごく嬉しい。でも甘やかされるばかりじゃ自分が何もできなくなってしまいそうで嫌なんだ。は自分の足でイスベルクの隣に立ちたい」
「ふふ。俺の伴侶はカッコイイな」
「え?本当?ずっとイスベルクにカッコイイって言われたかったんだ!……嬉しい!」
「まったく。可愛すぎる。どうしてくれよう」
「ふふふ」

 こうしてオレたちは更に周囲にバカップルぶりを発揮させてしまった。

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