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18宰相グラソンの憂鬱
しおりを挟む「この放蕩息子め!あっははは。よくぞ戻った」
皇帝陛下はすでに玉座にお座りになっておいでだった。
「ただいま戻りました。皇帝陛下においてはご機嫌麗しゅう……」
「ああ。よいよい。堅苦しい挨拶は抜きだ。早く紹介してくれ」
「はい。この度は炎の国よりわが伴侶にとルミエール王子を城に連れ帰りました」
「炎の国フレムベルジュの第五王子ルミエールでございます」
凛とした透き通るような声が広間に響いた。この少年が炎の国の王子だと言うのか?
「うむうむ。よくぞ参った。イスベルクの父親のイゴールだ」
なるほど本日は皇帝陛下というよりもイスベルク様の父上という態度であらせられるのですね。
「お初にお目にかかります。イゴールさま」
キラキラした目で見上げられイゴール様は前のめり気味だ。まさかこのような若くて可愛い子が来るとは誰も思っていなかったのだから。
「本当に炎の国の者なのか?」
しまった。私としたことが思わず口走ってしまった。
「はい。僕の母は北の産まれです。第五王子だったので王位継承も関係なく過ごしておりました」
ルミエールがまっすぐに私を見る。可愛い。が!その横にいるイスベルク様の顔が怖い。これは私への牽制か?この感じはイゴール様がご自身の番となる皇后さまを見つけて来られた時に似ている様な?まさかな。相手は男の子だ。
「失礼しました。私はこの氷の国の宰相であるグラソンと申します」
「はじめましてグラソン様」
なかなか行儀の良い少年のようだ。我々氷の国の者が惹かれる透き通るような瞳をしている。これは手元に置いておきたいと思うのもわかる気がする。
「ルミエール。グラソンに様付けは必要ない。敬称が必要なのは父上と母上のみだ。それ以外に敬称は必要ないぞ」
「そうなの? わかった。イスベルクの言うとおりにする」
ふふ。と笑った顔が愛らしい。なによりイスベルク様がこんなに優しい口調と眼差しでいるなんて。
「ぶぁっはははは。グラソン、そんな呆けた顔をするな。いやあ。そうかそうか……見つけたのか」
「皇帝陛下?」
「イスベルク。後で二人だけで話がある。ルミエールを部屋に案内したら来てくれるか」
「御意。後で参ります」
「よし! 今宵は宴を披露しよう!ルミエールの歓迎会じゃ」
「わあ。ありがとうございます!」
素直だな。興奮すると頬がバラ色に染まるのか。見た目は確かに好ましい。だが性格はどうだ?私はまだごまかされないぞ。そのうちわがままを言い出して暴れ回るのではないか。炎をまき散らさない様に見張らなくては。
「父上……皇帝陛下にお願いがございます」
「なんだ申して見ろ」
「早急にルミエールとの婚儀を認めると他国へ打診していただきたく」
「ほう。それはかまわないが……揉めたか?くっくくく」
「はあ。少し」
なんですと!揉めたとは?炎の国に喧嘩を売ってきたのではないでしょうね?
「ですがあちらの王との契約書はここにあります。署名捺印も目の前でしました」
「契約書? ……婚儀を前提に勝手に契約を結んだのですかっ!」
思わず声を荒げてしまった。契約書など国と国が決める協議ではないか?それを単独で判断するなどとはまだ思慮が浅い!
「そうだ。だからあちら側に不利な内容だとバレて少々面倒になりそうなのだ」
「はああ?」
何が面倒なのだ?何をしてくれた?ああ、胃が痛くなってきた。そんな淡々と言わないで欲しい。
「あーっはっはははははは。やってくれたな。ひぃひぃ。はあ、久しぶりに笑ったわい」
「陛下!笑い事ではありません!」
「くくく。そうだがな。息子が初めて年相応な事をしたのだぞ。嬉しいではないか」
ご存じでいらっしゃったのか。イスベルク様はこれまで人の上に立つようにとご自身の年齢を超えるほどの努力をかさねてきた。統率をとるためにはチカラと威厳が必要だったためだ。そのため子供らしさは失われてしまっていた。冷静すぎるほど冷静で感情すら凍らせてしまったのではないかと思われるほどに。
「ルミエールよ。お前は自分が生まれ育った国や親族をイスベルクが滅ぼしたらどうする?」
「かまいません。炎の国に良い思い出はないので。ただ民に罪はありませんのでご容赦くださればと」
「うむうむ。良い答えだ!イスベルクよ。お前そこまで考えてなかっただろう?」
「……はい。不覚でした。俺は自分本位だったようです」
「あ、あの!イスベルクは悪くないんです。僕を助けようとしてくれて。僕はもうイスベルクのものなのです」
「なんと!お前達すでにそういう関係なのか?」
そうか色仕掛けでこの少年が落としたのか?
「か、関係?いえ、まだ何も。だから婚儀だけでも先にシたい。いやシたいじゃなくて。あぅう」
……イスベルク様の耳が真っ赤だ。こんなに取り乱した姿は初めて見た。どうしたのだ急に?
「イスベルク大丈夫?どうしたの?」
この様子ではまだなのか?何が一体どうなってるいのだ?
「なんじゃ。ふがいないのう」
ああ。とりあえずルミエールという少年には王族としてのマナーを教え込まねばなるまいな。はああ。胃が痛い。
皇帝陛下はすでに玉座にお座りになっておいでだった。
「ただいま戻りました。皇帝陛下においてはご機嫌麗しゅう……」
「ああ。よいよい。堅苦しい挨拶は抜きだ。早く紹介してくれ」
「はい。この度は炎の国よりわが伴侶にとルミエール王子を城に連れ帰りました」
「炎の国フレムベルジュの第五王子ルミエールでございます」
凛とした透き通るような声が広間に響いた。この少年が炎の国の王子だと言うのか?
「うむうむ。よくぞ参った。イスベルクの父親のイゴールだ」
なるほど本日は皇帝陛下というよりもイスベルク様の父上という態度であらせられるのですね。
「お初にお目にかかります。イゴールさま」
キラキラした目で見上げられイゴール様は前のめり気味だ。まさかこのような若くて可愛い子が来るとは誰も思っていなかったのだから。
「本当に炎の国の者なのか?」
しまった。私としたことが思わず口走ってしまった。
「はい。僕の母は北の産まれです。第五王子だったので王位継承も関係なく過ごしておりました」
ルミエールがまっすぐに私を見る。可愛い。が!その横にいるイスベルク様の顔が怖い。これは私への牽制か?この感じはイゴール様がご自身の番となる皇后さまを見つけて来られた時に似ている様な?まさかな。相手は男の子だ。
「失礼しました。私はこの氷の国の宰相であるグラソンと申します」
「はじめましてグラソン様」
なかなか行儀の良い少年のようだ。我々氷の国の者が惹かれる透き通るような瞳をしている。これは手元に置いておきたいと思うのもわかる気がする。
「ルミエール。グラソンに様付けは必要ない。敬称が必要なのは父上と母上のみだ。それ以外に敬称は必要ないぞ」
「そうなの? わかった。イスベルクの言うとおりにする」
ふふ。と笑った顔が愛らしい。なによりイスベルク様がこんなに優しい口調と眼差しでいるなんて。
「ぶぁっはははは。グラソン、そんな呆けた顔をするな。いやあ。そうかそうか……見つけたのか」
「皇帝陛下?」
「イスベルク。後で二人だけで話がある。ルミエールを部屋に案内したら来てくれるか」
「御意。後で参ります」
「よし! 今宵は宴を披露しよう!ルミエールの歓迎会じゃ」
「わあ。ありがとうございます!」
素直だな。興奮すると頬がバラ色に染まるのか。見た目は確かに好ましい。だが性格はどうだ?私はまだごまかされないぞ。そのうちわがままを言い出して暴れ回るのではないか。炎をまき散らさない様に見張らなくては。
「父上……皇帝陛下にお願いがございます」
「なんだ申して見ろ」
「早急にルミエールとの婚儀を認めると他国へ打診していただきたく」
「ほう。それはかまわないが……揉めたか?くっくくく」
「はあ。少し」
なんですと!揉めたとは?炎の国に喧嘩を売ってきたのではないでしょうね?
「ですがあちらの王との契約書はここにあります。署名捺印も目の前でしました」
「契約書? ……婚儀を前提に勝手に契約を結んだのですかっ!」
思わず声を荒げてしまった。契約書など国と国が決める協議ではないか?それを単独で判断するなどとはまだ思慮が浅い!
「そうだ。だからあちら側に不利な内容だとバレて少々面倒になりそうなのだ」
「はああ?」
何が面倒なのだ?何をしてくれた?ああ、胃が痛くなってきた。そんな淡々と言わないで欲しい。
「あーっはっはははははは。やってくれたな。ひぃひぃ。はあ、久しぶりに笑ったわい」
「陛下!笑い事ではありません!」
「くくく。そうだがな。息子が初めて年相応な事をしたのだぞ。嬉しいではないか」
ご存じでいらっしゃったのか。イスベルク様はこれまで人の上に立つようにとご自身の年齢を超えるほどの努力をかさねてきた。統率をとるためにはチカラと威厳が必要だったためだ。そのため子供らしさは失われてしまっていた。冷静すぎるほど冷静で感情すら凍らせてしまったのではないかと思われるほどに。
「ルミエールよ。お前は自分が生まれ育った国や親族をイスベルクが滅ぼしたらどうする?」
「かまいません。炎の国に良い思い出はないので。ただ民に罪はありませんのでご容赦くださればと」
「うむうむ。良い答えだ!イスベルクよ。お前そこまで考えてなかっただろう?」
「……はい。不覚でした。俺は自分本位だったようです」
「あ、あの!イスベルクは悪くないんです。僕を助けようとしてくれて。僕はもうイスベルクのものなのです」
「なんと!お前達すでにそういう関係なのか?」
そうか色仕掛けでこの少年が落としたのか?
「か、関係?いえ、まだ何も。だから婚儀だけでも先にシたい。いやシたいじゃなくて。あぅう」
……イスベルク様の耳が真っ赤だ。こんなに取り乱した姿は初めて見た。どうしたのだ急に?
「イスベルク大丈夫?どうしたの?」
この様子ではまだなのか?何が一体どうなってるいのだ?
「なんじゃ。ふがいないのう」
ああ。とりあえずルミエールという少年には王族としてのマナーを教え込まねばなるまいな。はああ。胃が痛い。
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