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10俺のご主人様 Sideユージナル

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 俺の主人であるイスベルク様と俺は幼馴染であり親友である。弟様と年が離れているせいか、長兄として、皇太子として常に冷静沈着に国を治められてきた。そのため、感情を出すのが上手ではない。あまり表情が出ないせいか、ついたあだ名が冷酷皇太子。得意魔法が氷属性だから余計にそう思われたのだろう。
 俺たちの故郷、氷の国アヴェランシェ国には貴重な鉱物資源が多く産出する。中でも有名なのは極寒の地でしか取れない「ミスリル」だ。水晶に似た鉱物で七色に光る。魔法効果が倍増するだけでなく、使い手の特性を伸ばすことが出来る。それを手に入れようと戦を仕掛けてくる国も多い。だがイスベルク様とアイスドラゴンがいれば我国は安泰だろう。

 戦いが終わり平和になれば今度は後継者問題が出てくる。イスベルク様はまだ成人の儀を終えられていない。当の本人は興味がなさそうだが寿命にかかわるらしい。俺も気にはなっている。
 
 イスベルク様自身が自分の事を占ったと噂になった。きっと宰相のグラソンに言われたのだろう。占いなんて信じてなさそうなので冷やかしに行ったら、南へ逃避行することとなった。ははは。よほど占いが嫌だったのか、グラソンの慌てる顔が目に浮かぶぞ。
 良い気分転換になると思った。たまには羽目を外してみても良いだろう。俺もイスベルク様も常夏の国は初めてだし見るもの聞くものが目新しい。

 それにしても暑い。炎の国と言われるだけはあるな……って?! ありゃ、なに吹雪だしてんですか! 暑いから? そりゃまあ涼しいですが。いやいや、目立ちますって! お忍びで吉とやらを探すんでしょ? あれ? なんか暑くなくなったって……冷風だしてんですか?! まあ快適ですがひゅんひゅん音がしてますよ。おかしいでしょ。止めたら暑い? だって南国ですもん。暑いのは当たり前でしょ。文句言うなら離れろって? 無茶言わないでくださいよ。俺護衛なんですってば。え? 俺は親友。そうだけど。親友って言ってくれるのはありがたいけど。んがぁ!もういいか。好きにしてくれ。
 
 次の日、案の定炎の国の城から使いが来た。面倒くせえ。無表情なこの外見で吹雪魔法ばんばん繰り広げていたらそりゃ氷の皇太子ってバレるわなぁ。仕方なく城に行くと…… いきなり豪火が襲ってきた。イスベルク様を庇って落下したのは痩せた少年だった。使用人なのか? この城は食べ物もろくに与えてないのか!

 少年が目を覚ます。前髪をあげるとめちゃくちゃ可愛い顔が隠れていた。第五王子だと?なぜ王子がこんなボロボロなのだ? こりゃ訳アリだな。さしずめ側室あたりの子かな?
 イスベルク様が俺を見た。うんうんわかるぜ。助けてやりたいんだな。おれも同感。なんとかしてやろうぜ。というか、この子に腕を触られただけで何固まってんの?耳赤いぞ!どーした?え?とりあえずこの子は薬飲ませて寝かしちまおう。

 その後の晩餐会ではイスベルク様の手腕が凄かった。腹の探り合いになるとは思っていたがこれほどまでとは。氷の国から来た事はやはりうちの宰相のグラソンが捜索依頼をだしたからわかったのだそうだ。
 まず豪火を放った兄弟二人は謹慎させる事で収まった。その後国交を深めに来たと話題を変えて、命の恩人に礼をしたいと申し出ると、そこで初めてあれは第五王子だと言い出した。

 王は国交を深めるならミスリルを寄こせと言う。そこでイスベルク様は貴重な鉱物だ。ただではやらんと渋る。ならば貢ぎ物としてルミエールをやろうと王は言い出した。命の恩人と感謝の気持ちがあるのならくれてやるから品物をよこせというのだ。自分の子を品物のように言うのか。俺はムカついたがこれであの子が自由になるならいいかとイスベルク様を見ると口の端がぴくぴくしている。めっちゃ喜んでるんじゃねえの? 他の者にはわからねえけど。俺にはわかるからね!

 部屋に戻るとルミエールは薬がよく効いているようでぐっすりと眠り込んでいる。念のため俺とイスベルク様で夜中は交代で様子を見ながら眠りについた。
 翌朝になってルミエールの容態を診ると医者や侍従達がやって来た。そのまま身なりを整えますと第一王子とやらが伝えに来た。先に謁見の間で待っていると見違えるほどきれいになったルミエールが現れる。髪の毛洗って切りそろえたんだな。こんな髪の色見たことないぞ。

「…………」
 イスベルク様。ルミエールをガン見しすぎ。怖いってば。睨まれているとルミエールは怯えてないのか。お? 目があった。可愛いなにこって笑ったな。
「天使……」
 へ? イスベルク様何をつぶやいてらっしゃるので? 大丈夫っすか?

「嫌だっ! 離せっこのくそジジイっ!」
 ルミエールの声にイスベルク様が消えた。と思ったらその腕に抱き込んでいる。速い。いや、その前に一瞬炎がルミエールを包んでなかったか? イスベルク様がすぐに反撃されたからわからなかったがあのままではルミエールは火だるまになっていた? この王何しやがるんだ? 貢ぎ物だと言ったのはお前じゃねえか!

「炎の国の王よ。平和的に交渉に及んだ俺をないがしろにするつもりか?」
 イスベルク様のこめかみに青筋がぴくぴくと立っている。やべえ。本気で怒っているぞ。
「ぶぁははははは。冗談だ。冗談。ただの親子喧嘩ではないか」
 何を言っているんだ。笑えないぞ。見下げ果てた王だぜ。

 さあ、こんな国とっととおさらばしようぜ。


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