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7 まさか王子なのか sideイスベルク
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ユージナルが階段から落ちた少年を抱きかかえる。
「大丈夫生きています」
ほっとしたと同時に怒りがこみあげてくる。なんて国だ。城に来いと誘ったのはそちらだというのに。
「この馬鹿者めがぁああ!」
爆音と共に何かが吹っ飛ばされた音がした。しばらくして琥珀色の筋肉だるまのような男が駆け寄ってきて俺の前で膝間づく。
「誠に申し訳ございません! 私めはフレムベルジュ国第一王子エリュプシオンでございます! あれなるは我が愚弟たち! 裁きは謁見の場でいたします!」
やたらとデカイ声に耳がキンキンする。
「お怪我はございませんでしょうか!」
「俺はないが、この少年が俺の代わりにケガをした。医者を呼んでくれ」
「はは。あ……その者は……?」
言いよどんだ目は少年を侮蔑してるように見えた。なんだ? 使用人は医者に見せる必要もないと言うのか?
「我が名はアヴェランシェ国皇太子イスベルクである。この国は客人として招いた相手の命の恩人を助けようともしないのか? そのような非道な国なら今後の交易にも影響を及ぼしそうだな」
パキパキと足元から凍る音がする。怒り過ぎてちょっと魔力が漏れてしまったか。
「ぐっ。いえ! そんなことはございません! すぐに医者を手配いたします!」
「そうか。では私の勘違いだったのならよい。この者は私の客間に連れて行く。よろしく頼むぞ」
「俺、納得できませんよ。ちゃんとお忍びだって断ったのに無理に呼び寄せて。いきなり業火くらうなんて」
「まったくだ。チカラを制御する事を理解してる者が少ない気がする」
「同感ですね。強さこそが正義とか思い込んでる国に多いですよね」
「この国のどこに吉があるというんだろうか?」
「さあ、占いって当たりはずれがあるんじゃないですか?」
「そんな他人事みたいに言うなよ。俺がこうして本音で話せるのはお前ぐらいなんだぞ」
「すみません……」
「しかし。本当に細いなこの子」
「いくつくらいなんでしょうかね? まだ10代ですよね?」
その後の医者の診察では打撲のみ。しかし頭を強打してるのでしばらくは寝かせておくようにとのこと。
とりあえず奥の寝室に寝かせて様子をみることにした。
「俺思ったんですけどね。これってグラソン宰相あたりが捜索依頼とか出してるんじゃないかと」
ありえる。なんせ何も告げずに出てきたのだから。行先はバレてるんだし。俺でもそうするだろう。
「じゃあ俺が街中で魔法使ったのは関係なかったんじゃないか?」
「いやいや。それが決定打になったんでしようが!」
◇◆◇
寝室で物音がして寝室の扉をあけると先ほどの少年がしゃがみこんでいた。
「大丈夫か?」
心配になり声をかけると見上げてくる瞳を見て息をのんだ。あまりにも綺麗な澄んだ瞳だったから。
「ぁ。頭が痛くて……」
「……そうか。あの高さの階段から落ちたのだからな」
って。何当たり前のこと言ってるんだ俺は。もっと何かマシなことが言えないのか。大きくぱっちりした目がこちらを見てる。思わず抱きしめたくなる。この感情は……可愛いだ!そうだ可愛い!
「おや、起きたのですか? ……可愛い子だったんですね」
俺の後ろにいたユージナルも気づいたか。まだふらふらとした身体を抱き上げるとビクッと身体を固くする。怯えているのか? 日ごろから虐げられてるのだろうか? なんとかしてやりたいという気持ちになる。そうだ、まずは名前を聞いてみよう。
「俺はイスベルクだ。隣にいるのはユージナル」
「ルミエールです」
声まで可愛いじゃないか。しかもベッドに寝かしたときのふわっとした笑顔。嬉しそうだな。
「さきほどは俺を庇ってくれて悪かった……」
ん? 俺の声が聞こえてないのか? なにか考えてるのか? 眉間にしわが寄ったかと思うと今度は眉が下がったぞ。今度は少し笑った。また難しい顔になった。……なんというか。面白い奴だな。
「く、くくく。ルミエールは面白いな」
「ほへ? 何がですか?」
ほへって? なんだほへって? 俺に向かってそんな言葉使ったのお前くらいだぞ。
「ふふふ。百面相していたぞ」
ユージナルもルミエールに興味を持ったのか? なんかむかつく。ああ、俺はルミエールに興味をもったのか。もっとこの子の事を知りたい。もっとたくさん話してみたい。そう思い少しづつ話しかけてみると。
なんと第五王子だというのだ。本当なのか? こんなボロボロな姿なのに?
「炎の国の王子は4人までしかいないと聞いていた」
「……っ。4人って……」
ルミエールの細い指先が、握りしめた拳が震えていた。周りからそんな風に言われてるとは。ショックだったに違いない。悲しかったに違いない。ルミエールの大きな瞳からポロリポロリと涙がこぼれる。それはとてもきれいな涙だった。
俺はユージナルを見た。すかさず頷いてくれる。俺が口に出さなくてもわかってくれたか。こういうときお前は頼りになるな。よし。ルミエールを連れて帰ろう。この子は俺が護ってやる!
さて、どうやって連れ出すか
「大丈夫生きています」
ほっとしたと同時に怒りがこみあげてくる。なんて国だ。城に来いと誘ったのはそちらだというのに。
「この馬鹿者めがぁああ!」
爆音と共に何かが吹っ飛ばされた音がした。しばらくして琥珀色の筋肉だるまのような男が駆け寄ってきて俺の前で膝間づく。
「誠に申し訳ございません! 私めはフレムベルジュ国第一王子エリュプシオンでございます! あれなるは我が愚弟たち! 裁きは謁見の場でいたします!」
やたらとデカイ声に耳がキンキンする。
「お怪我はございませんでしょうか!」
「俺はないが、この少年が俺の代わりにケガをした。医者を呼んでくれ」
「はは。あ……その者は……?」
言いよどんだ目は少年を侮蔑してるように見えた。なんだ? 使用人は医者に見せる必要もないと言うのか?
「我が名はアヴェランシェ国皇太子イスベルクである。この国は客人として招いた相手の命の恩人を助けようともしないのか? そのような非道な国なら今後の交易にも影響を及ぼしそうだな」
パキパキと足元から凍る音がする。怒り過ぎてちょっと魔力が漏れてしまったか。
「ぐっ。いえ! そんなことはございません! すぐに医者を手配いたします!」
「そうか。では私の勘違いだったのならよい。この者は私の客間に連れて行く。よろしく頼むぞ」
「俺、納得できませんよ。ちゃんとお忍びだって断ったのに無理に呼び寄せて。いきなり業火くらうなんて」
「まったくだ。チカラを制御する事を理解してる者が少ない気がする」
「同感ですね。強さこそが正義とか思い込んでる国に多いですよね」
「この国のどこに吉があるというんだろうか?」
「さあ、占いって当たりはずれがあるんじゃないですか?」
「そんな他人事みたいに言うなよ。俺がこうして本音で話せるのはお前ぐらいなんだぞ」
「すみません……」
「しかし。本当に細いなこの子」
「いくつくらいなんでしょうかね? まだ10代ですよね?」
その後の医者の診察では打撲のみ。しかし頭を強打してるのでしばらくは寝かせておくようにとのこと。
とりあえず奥の寝室に寝かせて様子をみることにした。
「俺思ったんですけどね。これってグラソン宰相あたりが捜索依頼とか出してるんじゃないかと」
ありえる。なんせ何も告げずに出てきたのだから。行先はバレてるんだし。俺でもそうするだろう。
「じゃあ俺が街中で魔法使ったのは関係なかったんじゃないか?」
「いやいや。それが決定打になったんでしようが!」
◇◆◇
寝室で物音がして寝室の扉をあけると先ほどの少年がしゃがみこんでいた。
「大丈夫か?」
心配になり声をかけると見上げてくる瞳を見て息をのんだ。あまりにも綺麗な澄んだ瞳だったから。
「ぁ。頭が痛くて……」
「……そうか。あの高さの階段から落ちたのだからな」
って。何当たり前のこと言ってるんだ俺は。もっと何かマシなことが言えないのか。大きくぱっちりした目がこちらを見てる。思わず抱きしめたくなる。この感情は……可愛いだ!そうだ可愛い!
「おや、起きたのですか? ……可愛い子だったんですね」
俺の後ろにいたユージナルも気づいたか。まだふらふらとした身体を抱き上げるとビクッと身体を固くする。怯えているのか? 日ごろから虐げられてるのだろうか? なんとかしてやりたいという気持ちになる。そうだ、まずは名前を聞いてみよう。
「俺はイスベルクだ。隣にいるのはユージナル」
「ルミエールです」
声まで可愛いじゃないか。しかもベッドに寝かしたときのふわっとした笑顔。嬉しそうだな。
「さきほどは俺を庇ってくれて悪かった……」
ん? 俺の声が聞こえてないのか? なにか考えてるのか? 眉間にしわが寄ったかと思うと今度は眉が下がったぞ。今度は少し笑った。また難しい顔になった。……なんというか。面白い奴だな。
「く、くくく。ルミエールは面白いな」
「ほへ? 何がですか?」
ほへって? なんだほへって? 俺に向かってそんな言葉使ったのお前くらいだぞ。
「ふふふ。百面相していたぞ」
ユージナルもルミエールに興味を持ったのか? なんかむかつく。ああ、俺はルミエールに興味をもったのか。もっとこの子の事を知りたい。もっとたくさん話してみたい。そう思い少しづつ話しかけてみると。
なんと第五王子だというのだ。本当なのか? こんなボロボロな姿なのに?
「炎の国の王子は4人までしかいないと聞いていた」
「……っ。4人って……」
ルミエールの細い指先が、握りしめた拳が震えていた。周りからそんな風に言われてるとは。ショックだったに違いない。悲しかったに違いない。ルミエールの大きな瞳からポロリポロリと涙がこぼれる。それはとてもきれいな涙だった。
俺はユージナルを見た。すかさず頷いてくれる。俺が口に出さなくてもわかってくれたか。こういうときお前は頼りになるな。よし。ルミエールを連れて帰ろう。この子は俺が護ってやる!
さて、どうやって連れ出すか
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