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かつて私のお母様に婚約破棄を突き付けた国王陛下が倅と婚約して後ろ盾になれと脅してきました
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私のお母様は学生時代に婚約破棄されました。当時王太子だった現国王陛下にです。
現在のお母様は女公爵として領地経営に全力を注いでいますが、たまに酔うとあの時は陛下から酷い事を沢山言われたと今も愚痴ってきます。
話を聞くに、陛下の浮気相手だった当時の隣国の王女を殴ったり蹴ったり池に突き落としたり毒蛇を使って苦しませたりして婚約破棄されたお母様にも問題はあったようですが、陛下にも問題はあったようです。
「リザベリーナ嬢。余の倅と婚約して後ろ盾になれ。これは王命である」
登城要請がきて王宮の謁見室に通されるなり、陛下からそう命じられました。入室した際に見えたのですが、玉座の端には王太子のオスカー殿下もいました。でもなんだか顔色が悪かったようにも見えました。
「王命? 17年前、チャンドラ公爵家は先月永眠された先帝陛下から百年の免除を賜りました。よってあと83年は命令を下すことは不可能です」
「それがどうした。先帝亡き今、余が国王だ。それに賜っただと? ただの口約束を、死人からまたその言葉を引き出せるか?」
どうなんだ? そう陛下が吐き捨てるように言いました。いくら国王とはいえ、これではあまりに先帝陛下に対して不敬です。
「それにしてもそなたはあの女にそっくりだな。これではオスカーと婚約させたところでいずれ母親の二の舞になるだろう。余が見限ったようにな。だが今回はそのようなことはないと、国王自ら保証してやっているのだ」
「保証? それはチャンドラ公爵家が先帝陛下から百年の免除を賜った時のように、制約魔法で契約を結ぶということでしょうか?」
「……ふん。そんなもの口約束で十分だろう。チャンドラ公爵家は王家の臣下だ。わざわざ制約を掛ける必要などない。厚顔無恥も甚だしい」
「口約束? では口頭で約束したということで、婚約契約書にサインは致しませんが、それでよろしいでしょうか?」
「ふざけるな! 臣下としてオスカーの後ろ盾となり、公爵家の利権を渡せと言っているのだ! それがなければあの女の娘などオスカーに近付けさせるものか!」
陛下が声を荒げると、数人の近衛兵が私を囲い腕を捻り上げてきました。その状態で喉元に刃先が向けられ、微かに痛みを感じました。いま唾を飲み込めば薄皮くらいは切れてしまうでしょう。
「ち、父上……いくらなんでも横暴です」
陛下の傍らにいたオスカー殿下が玉座からおりてきました。陛下と同じ銀髪に碧眼。近くで見ると顔までそっくりです。成る程、お母様が言っていた通りですね。
オスカー殿下が近衛兵を下がらせ、すまないと私に頭を下げました。
「父上……リザベリーナ嬢と話がしたいです。庭を案内してきてもよろしいでしょうか?」
「……ふん。好きにしろ」
王宮の大庭園を案内されました。
薔薇の種類の多さに驚いているとオスカー殿下が一際大きい薔薇を一本手折り、私に差し出しました。
受け取ってお礼を伝えるとオスカー殿下の顔に陰がかかりました。
「リザベリーナ嬢。君は私が送った手紙を読んでくれているか?」
「いえ。私に届く物は事前に全てお母様の手入れがはいるので、手紙が送られていたことすら今まで知りませんでした」
「そうか……やはり父上のことをまだ許していないのか」
オスカー殿下は懐から手紙を出しました。そして後で読んでくれと私に渡しました。
「いま王家は隣国と揉めていてね。その事で父上も苛立っているんだ」
「……そういえば、エヴェリーナ女王陛下が第一王女の王配候補にオスカー殿下の名を上げているそうですね」
エヴェリーナ女王陛下は当時学生だった陛下の浮気相手です。陛下とそっくりなオスカー様をどこかで見初め、王女の婿にしたいと思ったのかもしれませんね。
「私は後継ぎだから、父上も何とかしてその話を揉み消そうと躍起になっているんだ。それでリザベリーナ嬢を後ろ盾にしようと……先程は本当に申し訳なかった」
「子を愛する親ですもの。感情優先にもなってしまいますわ」
それに隣国は百万人の兵士団をもつ大国です。継承権一位の王子を差し出すなど、属国になると言っているようなもの。
「平和的解決の為に、最終手段として向こうに婿入りするのも仕方ないと思っている」
そうですわね。それが一番の解決策でしょう。なんせ王室派も貴族派もそれしかないと珍しく意見を合わせてその解決策を支持しているのですから。
「英断ですわ」
本当にそう考えているのなら。
手渡された薔薇を胸ににっこりと微笑む。
「……し、しかし問題もあるのだ」
「属国に落ちることですね」
そうなると周辺諸国はもう我が国を独立国家とみなさなくなるかもしれませんね。外交も隣国の機嫌を窺いながらするしかありません。他国もそんな面倒臭い国に関わりたくない筈です。
「しかしそこはアーレンツ公爵家がなんとかしてくれるでしょう。国民から支持もあるトミー・アーレンツ様が王太子となれば、」
「君は領地に引き込もっていたので知らないだろうが、トミーは暴君となるべく生まれてきたと言っても過言ではない冷酷な男だ! あんな男に国を任せることは出来ない! 」
オスカー殿下の息が上がっています。
「そうなのですか? 優秀だと聞いておりましたが」
きょとんと首を傾げると、オスカー殿下が饒舌になりました。そして私にトミー・アーレンツという男がどれほど冷酷な人間かを語ったのです。
「初めて会ったのは王家主催のお茶会だった。トミーは下位貴族の令嬢を池に突き落として、令嬢が溺れて苦しむ様を見て楽しそうに笑っていた。二度目の再会は魔獣討伐に参加した時だった。一思いにとどめを刺せばいいものを……トミーは瀕死の魔獣の耳や性器を切り落として、わざと苦しみを与え断末魔の悲鳴を上げさせていた。ゾッとしたよ。魔獣とはいえ、痛みや苦しみもあるんだ。放っておいたら被害が出るから、間引く程度に討伐するのが我等の義務だと理解はしているが、彼等だって生きているんだ。共存の道を説いたが、トミーは絶滅するまで止めないと頑なだった。あの頃は本当にトミーが恐ろしくて仕方なかったよ」
「…………そうですか」
魔獣の被害を被った国民からすれば、共存の道など考えられないと思うのですが……。
そう考えながら俯くとオスカー殿下が私の手を取りました。
そして項に口付けを落として言ったのです。
「私が隣国に婿入りすればこの国は乱れる。トミーが王太子となって属国になるのを防いだとしても、先ず最初に粛清されるのはチャンドラ公爵家だろう。不正をでっち上げられ家門が潰される可能性もある。あれはそういう男だ」
「私のお母様なら大丈夫ですわ。心身共々逞しい方ですから」
でっち上げどころか、毒蛇で王女を毒殺しようとした事実さえ揉み消したのですから。まあ、あのような横暴を強いて婚約破棄程度で済んだのも、当時の陛下に独立をちらつかせて国力を下げるとお祖父様が脅したからなのですけれどね。
「……し、しかしリザベリーナ嬢は違うだろう? 君は心優しい人間だ。体も弱く、幼少期から領地に引き込もっていた、深窓の令嬢だ。あのトミーに対抗など出来る筈がない!」
「っ、」
オスカー殿下に引き寄せられ抱き締められました。あまり好きではない金木犀の香りがします。なんとか不快を顔に出さずに引き離すと、また手を取られました。
「君のことは私が守る。どうか私を信じてくれないだろうか?」
「殿下……私はもう戻らなければなりません。陛下も殿下のことを気にかけていますよ。お疲れのようでしたし、こんな時こそ側についてあげなければ」
「……ああ。わかった。しかしリザベリーナ嬢、本音を言うと私は君に惹かれている。父上の失言など、どうか気にしないでくれ」
「失言などと……あれは子を大事に思うが故の親心ですわ。殿下こそ気にしないで下さい」
その後、馬車まで見送ると言ったオスカー殿下に丁重に断りの言葉を並べ、私は迎えの馬車に乗り込んだ。
乗り込んだ瞬間、優しく手を引かれた。
目前に迫ったのは金色の輝く巻き毛に、その前髪の隙間から覗く赤く発光する妖しげな瞳。その目は柔らかく細められ、口角の上がった唇がリップ音を立てて私の額に口付けを落とした。
「トミーちゃぁん、お待たせぇ。待ったあ?」
「リザちゃんお疲れ様。全然待ってないよ。ほらおいで、体が凝っただろう? あの国王は女性にはずっとカーテシーをさせて、決して顔を上げさせないからね。ほんと嫌な奴。退位させたら一生最敬礼させとくね。寝る時以外は椅子にも座らせないから」
恋人のトミーちゃん。
アーレンツ公爵家の嫡男。私の幼馴染でもあり、今はまだ非公開の仲だけど、お母様の気が済んだら籍をいれる予定だ。
「あ、あっ、もう、トミーちゃんたら!」
太腿の外側を指圧されました。
気持ちいい。トミーちゃんの指はごつごつしているのに細いから、的確につぼに入る。
「言ったでしょ? 僕はリザちゃんのお世話するのが人生で唯一の喜びなの。ほら、反対側も」
「あ、あっ、もう、トミーちゃん」
「内側もこうやって血流を流してあげるんだよ」
内股に指が滑り込んできて思わずトミーちゃんの手を止めました。
「もうっ、それ禁止!」
「えぇ……だってこれ好きでしょ? オイルがないから嫌なの?」
「っ、それはともかくここは家じゃありません! お外でそういう事するのは禁止!」
「わかったぁ。帰宅してからにするね。あと城で誰かに何か言われなかった?」
「今は全然言われないよ。大分前にトミーちゃんがそういう人全員消しちゃったから」
「でも王宮の中ではたまに涌くんだよね。だから近付けさせたくなかったのに……」
「……仕方ないよ」
お母様が陛下から手酷く婚約破棄されたことは何十年経った今も消えません。社交界の噂話でもまだ残っています。
幼少期はお茶会でもよくそのことで令嬢達に馬鹿にされ、舐めた態度をとられたものです。高価な髪飾りをよこせと髪を引っ張られたこともありました。大概はそれに気付いたトミーちゃんがやってきて、令嬢達を池に突き落としたり、腰の剣で令嬢達の髪を切ってリザベリーナに手を出すなと周りへ見せしめにしていました。全て下位貴族の令嬢です。トミーちゃんは下位貴族相手ならそんな事をしても許される権力がありました。オスカー殿下が言っていた王家主催のお茶会でも、恐らく私の悪口を言っていた令嬢が池に突き落とされたのでしょう。
そもそもアーレンツ公爵家はどの国にも属さない独立公爵家です。公国として独立したのは大昔に一度だけ我が国が亡国になったからです。再建国家に属さなかったのは、一度自由を知るともう戻れなくなるとかなんとか、よく解らないことをトミーちゃんは少年のようにキラキラした瞳で言っていました。
あと我が国には辺境伯がいませんから。スタンピードで我が国が亡国になった時に辺境伯の血は全て絶えてしまったのです。再建後から現在までアーレンツ公爵家がその役割の殆どを担ってくれているので、国民からも絶大な支持があります。アーレンツ家こそが王家になるべきだとさえ囁かれています。
「あ、そうだリザちゃんこれ、ルビーのペンダントトップ。よかったら使って」
「またそんなにお金使って! 領民から得た税は無駄遣いするためにあるんじゃないのよっ」
「無駄遣いじゃないよ。先月はギルドにオークの耳を百個納品して討伐報酬を得たし、ちょうど街の薬師がダークウルフの性器を欲しがっていたからね。納品したらいい儲けになったんだ」
「……そう、なんだ」
「うん。だから受け取って。アーレンツ家の男は古代から求婚相手に狩った獲物を贈るんだ。でも前みたいにオークの耳とかウルフの性器とか貰っても迷惑でしょ?」
「……いや、あの時のはギルドで換金したから貰って嬉しかったよ」
「嬉しかったんだ。リザちゃん換金したお金全部ミストリア教会にあげちゃったから、嫌だったのかと……」
「……嫌じゃなかったよ。あそこはオークの被害女性が入る教会だから寄付したの」
オークは巨体で歩く二足魔獣ですが、四足になると馬より早く走ります。そして馬車を狙い、人間の女がいたら拐って犯します。繁殖の為です。つまり、人間の女が近くにいなければオークは増えません。それは最近になってようやく解ったことです。オークに孕まされた女性の殆どが証言することなく自害していたからです。現在はオークを絶滅させる為、アーレンツ家が心血を注いで討伐しています。辺境の村にも兵を置き、女性が拐われるのを防いでいます。だからこそ国民からの支持が絶大なのです。他の領主は村娘がオークに拐われたくらいでは討伐に大事な私兵を出しませんからね。王家も建前上、討伐しては冒険者の糧を奪うことになると見てみぬふりをしています。
この国一帯のオークを絶滅させることが出来れば、トミーちゃんはオスカー殿下が隣国に婿入りするより先に王太子となるでしょう。私はオークの討伐数は少ない方ですが、これまで通り公爵家の私兵と共に戦っていく所存です。幼少期のように守られてばかりでは、トミーちゃんの妻となる者として名が廃りますからね。
「リザちゃんそれなぁに?」
「あ、これ?」
足元に置いた薔薇と手紙。
先程のオスカー殿下からのものです。
お母様は王家から届いた物は全てゴミと表現するので、私も「ゴミ」と言うと察したトミーちゃんがビリビリに破いて窓の外に捨てました。
「あ、せっかく王都にきたし……ローズカフェに寄ってくれるー? リザちゃんに合う新しいオイルがないか試用しにいきたいんだ。そのあとは個室画廊でゆっくりしようか?」
「トミーちゃんも久々の休みなんだからゆっくりしてね?」
「うん。リザちゃんとゆっくりするよー」
トミーちゃんが馬車の御者席側の小窓を開けてそう伝えると「奥様が早めに屋敷に戻ってどんな様子だったか伝えるようにと仰せでした」と御者が気まずそうに返してきました。
「また……? お母様も懲りないわねぇ」
「まあこれも親孝行か。リザちゃんのお母さんは僕の義母でもあるからね」
お母様は今頃になって陛下に意趣返しでもしたいのでしょうか。17年も無視していたので今更な気もしますが。百年の免除があるので登城要請のことだって放置していてもなんの問題も無かったのですから。
「そういやもういなくなるから興味なかったけど、二人ともどんな様子だった?」
「殿下は平然を装っていたけど終始怯えていたわ。陛下もいつも通り玉座でふんぞり返ってたけど内心焦ってたみたい。意外にも殿下のことを本当に大切に思われているみたいね。まあ、当時は王女だったけど女王陛下を騙して堕胎させたんだもの。殿下が婿入りしたら、それはそれは酷い目に合わせられるでしょうね」
「あの女王陛下はオーク殲滅だのなんだのって、一ヶ所にオークを集めて魔羅を切り落とした罪人でもオークが反応するか実験とかしてるからねぇ」
「……今聞いた話忘れたい」
「はは、オスカー殿下に何しようとしてるのかなぁ? 想像しただけで怖いよねぇ! でもオスカー殿下は以前僕に魔獣との共存を強いてきたから、案外共存できちゃうかもしれないねっ」
トミーちゃんはオークに襲われた女性を何人も見てきてますからね。オスカー殿下も真実がどれほど残酷かを目の当たりにすれば意見が変わるかもしれません。隣国の王女は後継ぎとして優秀だと評判ですし、きっとオスカー殿下をよき王配として育ててくれることでしょう。
それにしても全く。
トミーちゃんとの結婚を認めると血判まで用意してくれたから全てが終わるまではお母様の茶番に付き合ってあげますが、親に振り回されているのは私も同じですね。とほほ。
【終】
現在のお母様は女公爵として領地経営に全力を注いでいますが、たまに酔うとあの時は陛下から酷い事を沢山言われたと今も愚痴ってきます。
話を聞くに、陛下の浮気相手だった当時の隣国の王女を殴ったり蹴ったり池に突き落としたり毒蛇を使って苦しませたりして婚約破棄されたお母様にも問題はあったようですが、陛下にも問題はあったようです。
「リザベリーナ嬢。余の倅と婚約して後ろ盾になれ。これは王命である」
登城要請がきて王宮の謁見室に通されるなり、陛下からそう命じられました。入室した際に見えたのですが、玉座の端には王太子のオスカー殿下もいました。でもなんだか顔色が悪かったようにも見えました。
「王命? 17年前、チャンドラ公爵家は先月永眠された先帝陛下から百年の免除を賜りました。よってあと83年は命令を下すことは不可能です」
「それがどうした。先帝亡き今、余が国王だ。それに賜っただと? ただの口約束を、死人からまたその言葉を引き出せるか?」
どうなんだ? そう陛下が吐き捨てるように言いました。いくら国王とはいえ、これではあまりに先帝陛下に対して不敬です。
「それにしてもそなたはあの女にそっくりだな。これではオスカーと婚約させたところでいずれ母親の二の舞になるだろう。余が見限ったようにな。だが今回はそのようなことはないと、国王自ら保証してやっているのだ」
「保証? それはチャンドラ公爵家が先帝陛下から百年の免除を賜った時のように、制約魔法で契約を結ぶということでしょうか?」
「……ふん。そんなもの口約束で十分だろう。チャンドラ公爵家は王家の臣下だ。わざわざ制約を掛ける必要などない。厚顔無恥も甚だしい」
「口約束? では口頭で約束したということで、婚約契約書にサインは致しませんが、それでよろしいでしょうか?」
「ふざけるな! 臣下としてオスカーの後ろ盾となり、公爵家の利権を渡せと言っているのだ! それがなければあの女の娘などオスカーに近付けさせるものか!」
陛下が声を荒げると、数人の近衛兵が私を囲い腕を捻り上げてきました。その状態で喉元に刃先が向けられ、微かに痛みを感じました。いま唾を飲み込めば薄皮くらいは切れてしまうでしょう。
「ち、父上……いくらなんでも横暴です」
陛下の傍らにいたオスカー殿下が玉座からおりてきました。陛下と同じ銀髪に碧眼。近くで見ると顔までそっくりです。成る程、お母様が言っていた通りですね。
オスカー殿下が近衛兵を下がらせ、すまないと私に頭を下げました。
「父上……リザベリーナ嬢と話がしたいです。庭を案内してきてもよろしいでしょうか?」
「……ふん。好きにしろ」
王宮の大庭園を案内されました。
薔薇の種類の多さに驚いているとオスカー殿下が一際大きい薔薇を一本手折り、私に差し出しました。
受け取ってお礼を伝えるとオスカー殿下の顔に陰がかかりました。
「リザベリーナ嬢。君は私が送った手紙を読んでくれているか?」
「いえ。私に届く物は事前に全てお母様の手入れがはいるので、手紙が送られていたことすら今まで知りませんでした」
「そうか……やはり父上のことをまだ許していないのか」
オスカー殿下は懐から手紙を出しました。そして後で読んでくれと私に渡しました。
「いま王家は隣国と揉めていてね。その事で父上も苛立っているんだ」
「……そういえば、エヴェリーナ女王陛下が第一王女の王配候補にオスカー殿下の名を上げているそうですね」
エヴェリーナ女王陛下は当時学生だった陛下の浮気相手です。陛下とそっくりなオスカー様をどこかで見初め、王女の婿にしたいと思ったのかもしれませんね。
「私は後継ぎだから、父上も何とかしてその話を揉み消そうと躍起になっているんだ。それでリザベリーナ嬢を後ろ盾にしようと……先程は本当に申し訳なかった」
「子を愛する親ですもの。感情優先にもなってしまいますわ」
それに隣国は百万人の兵士団をもつ大国です。継承権一位の王子を差し出すなど、属国になると言っているようなもの。
「平和的解決の為に、最終手段として向こうに婿入りするのも仕方ないと思っている」
そうですわね。それが一番の解決策でしょう。なんせ王室派も貴族派もそれしかないと珍しく意見を合わせてその解決策を支持しているのですから。
「英断ですわ」
本当にそう考えているのなら。
手渡された薔薇を胸ににっこりと微笑む。
「……し、しかし問題もあるのだ」
「属国に落ちることですね」
そうなると周辺諸国はもう我が国を独立国家とみなさなくなるかもしれませんね。外交も隣国の機嫌を窺いながらするしかありません。他国もそんな面倒臭い国に関わりたくない筈です。
「しかしそこはアーレンツ公爵家がなんとかしてくれるでしょう。国民から支持もあるトミー・アーレンツ様が王太子となれば、」
「君は領地に引き込もっていたので知らないだろうが、トミーは暴君となるべく生まれてきたと言っても過言ではない冷酷な男だ! あんな男に国を任せることは出来ない! 」
オスカー殿下の息が上がっています。
「そうなのですか? 優秀だと聞いておりましたが」
きょとんと首を傾げると、オスカー殿下が饒舌になりました。そして私にトミー・アーレンツという男がどれほど冷酷な人間かを語ったのです。
「初めて会ったのは王家主催のお茶会だった。トミーは下位貴族の令嬢を池に突き落として、令嬢が溺れて苦しむ様を見て楽しそうに笑っていた。二度目の再会は魔獣討伐に参加した時だった。一思いにとどめを刺せばいいものを……トミーは瀕死の魔獣の耳や性器を切り落として、わざと苦しみを与え断末魔の悲鳴を上げさせていた。ゾッとしたよ。魔獣とはいえ、痛みや苦しみもあるんだ。放っておいたら被害が出るから、間引く程度に討伐するのが我等の義務だと理解はしているが、彼等だって生きているんだ。共存の道を説いたが、トミーは絶滅するまで止めないと頑なだった。あの頃は本当にトミーが恐ろしくて仕方なかったよ」
「…………そうですか」
魔獣の被害を被った国民からすれば、共存の道など考えられないと思うのですが……。
そう考えながら俯くとオスカー殿下が私の手を取りました。
そして項に口付けを落として言ったのです。
「私が隣国に婿入りすればこの国は乱れる。トミーが王太子となって属国になるのを防いだとしても、先ず最初に粛清されるのはチャンドラ公爵家だろう。不正をでっち上げられ家門が潰される可能性もある。あれはそういう男だ」
「私のお母様なら大丈夫ですわ。心身共々逞しい方ですから」
でっち上げどころか、毒蛇で王女を毒殺しようとした事実さえ揉み消したのですから。まあ、あのような横暴を強いて婚約破棄程度で済んだのも、当時の陛下に独立をちらつかせて国力を下げるとお祖父様が脅したからなのですけれどね。
「……し、しかしリザベリーナ嬢は違うだろう? 君は心優しい人間だ。体も弱く、幼少期から領地に引き込もっていた、深窓の令嬢だ。あのトミーに対抗など出来る筈がない!」
「っ、」
オスカー殿下に引き寄せられ抱き締められました。あまり好きではない金木犀の香りがします。なんとか不快を顔に出さずに引き離すと、また手を取られました。
「君のことは私が守る。どうか私を信じてくれないだろうか?」
「殿下……私はもう戻らなければなりません。陛下も殿下のことを気にかけていますよ。お疲れのようでしたし、こんな時こそ側についてあげなければ」
「……ああ。わかった。しかしリザベリーナ嬢、本音を言うと私は君に惹かれている。父上の失言など、どうか気にしないでくれ」
「失言などと……あれは子を大事に思うが故の親心ですわ。殿下こそ気にしないで下さい」
その後、馬車まで見送ると言ったオスカー殿下に丁重に断りの言葉を並べ、私は迎えの馬車に乗り込んだ。
乗り込んだ瞬間、優しく手を引かれた。
目前に迫ったのは金色の輝く巻き毛に、その前髪の隙間から覗く赤く発光する妖しげな瞳。その目は柔らかく細められ、口角の上がった唇がリップ音を立てて私の額に口付けを落とした。
「トミーちゃぁん、お待たせぇ。待ったあ?」
「リザちゃんお疲れ様。全然待ってないよ。ほらおいで、体が凝っただろう? あの国王は女性にはずっとカーテシーをさせて、決して顔を上げさせないからね。ほんと嫌な奴。退位させたら一生最敬礼させとくね。寝る時以外は椅子にも座らせないから」
恋人のトミーちゃん。
アーレンツ公爵家の嫡男。私の幼馴染でもあり、今はまだ非公開の仲だけど、お母様の気が済んだら籍をいれる予定だ。
「あ、あっ、もう、トミーちゃんたら!」
太腿の外側を指圧されました。
気持ちいい。トミーちゃんの指はごつごつしているのに細いから、的確につぼに入る。
「言ったでしょ? 僕はリザちゃんのお世話するのが人生で唯一の喜びなの。ほら、反対側も」
「あ、あっ、もう、トミーちゃん」
「内側もこうやって血流を流してあげるんだよ」
内股に指が滑り込んできて思わずトミーちゃんの手を止めました。
「もうっ、それ禁止!」
「えぇ……だってこれ好きでしょ? オイルがないから嫌なの?」
「っ、それはともかくここは家じゃありません! お外でそういう事するのは禁止!」
「わかったぁ。帰宅してからにするね。あと城で誰かに何か言われなかった?」
「今は全然言われないよ。大分前にトミーちゃんがそういう人全員消しちゃったから」
「でも王宮の中ではたまに涌くんだよね。だから近付けさせたくなかったのに……」
「……仕方ないよ」
お母様が陛下から手酷く婚約破棄されたことは何十年経った今も消えません。社交界の噂話でもまだ残っています。
幼少期はお茶会でもよくそのことで令嬢達に馬鹿にされ、舐めた態度をとられたものです。高価な髪飾りをよこせと髪を引っ張られたこともありました。大概はそれに気付いたトミーちゃんがやってきて、令嬢達を池に突き落としたり、腰の剣で令嬢達の髪を切ってリザベリーナに手を出すなと周りへ見せしめにしていました。全て下位貴族の令嬢です。トミーちゃんは下位貴族相手ならそんな事をしても許される権力がありました。オスカー殿下が言っていた王家主催のお茶会でも、恐らく私の悪口を言っていた令嬢が池に突き落とされたのでしょう。
そもそもアーレンツ公爵家はどの国にも属さない独立公爵家です。公国として独立したのは大昔に一度だけ我が国が亡国になったからです。再建国家に属さなかったのは、一度自由を知るともう戻れなくなるとかなんとか、よく解らないことをトミーちゃんは少年のようにキラキラした瞳で言っていました。
あと我が国には辺境伯がいませんから。スタンピードで我が国が亡国になった時に辺境伯の血は全て絶えてしまったのです。再建後から現在までアーレンツ公爵家がその役割の殆どを担ってくれているので、国民からも絶大な支持があります。アーレンツ家こそが王家になるべきだとさえ囁かれています。
「あ、そうだリザちゃんこれ、ルビーのペンダントトップ。よかったら使って」
「またそんなにお金使って! 領民から得た税は無駄遣いするためにあるんじゃないのよっ」
「無駄遣いじゃないよ。先月はギルドにオークの耳を百個納品して討伐報酬を得たし、ちょうど街の薬師がダークウルフの性器を欲しがっていたからね。納品したらいい儲けになったんだ」
「……そう、なんだ」
「うん。だから受け取って。アーレンツ家の男は古代から求婚相手に狩った獲物を贈るんだ。でも前みたいにオークの耳とかウルフの性器とか貰っても迷惑でしょ?」
「……いや、あの時のはギルドで換金したから貰って嬉しかったよ」
「嬉しかったんだ。リザちゃん換金したお金全部ミストリア教会にあげちゃったから、嫌だったのかと……」
「……嫌じゃなかったよ。あそこはオークの被害女性が入る教会だから寄付したの」
オークは巨体で歩く二足魔獣ですが、四足になると馬より早く走ります。そして馬車を狙い、人間の女がいたら拐って犯します。繁殖の為です。つまり、人間の女が近くにいなければオークは増えません。それは最近になってようやく解ったことです。オークに孕まされた女性の殆どが証言することなく自害していたからです。現在はオークを絶滅させる為、アーレンツ家が心血を注いで討伐しています。辺境の村にも兵を置き、女性が拐われるのを防いでいます。だからこそ国民からの支持が絶大なのです。他の領主は村娘がオークに拐われたくらいでは討伐に大事な私兵を出しませんからね。王家も建前上、討伐しては冒険者の糧を奪うことになると見てみぬふりをしています。
この国一帯のオークを絶滅させることが出来れば、トミーちゃんはオスカー殿下が隣国に婿入りするより先に王太子となるでしょう。私はオークの討伐数は少ない方ですが、これまで通り公爵家の私兵と共に戦っていく所存です。幼少期のように守られてばかりでは、トミーちゃんの妻となる者として名が廃りますからね。
「リザちゃんそれなぁに?」
「あ、これ?」
足元に置いた薔薇と手紙。
先程のオスカー殿下からのものです。
お母様は王家から届いた物は全てゴミと表現するので、私も「ゴミ」と言うと察したトミーちゃんがビリビリに破いて窓の外に捨てました。
「あ、せっかく王都にきたし……ローズカフェに寄ってくれるー? リザちゃんに合う新しいオイルがないか試用しにいきたいんだ。そのあとは個室画廊でゆっくりしようか?」
「トミーちゃんも久々の休みなんだからゆっくりしてね?」
「うん。リザちゃんとゆっくりするよー」
トミーちゃんが馬車の御者席側の小窓を開けてそう伝えると「奥様が早めに屋敷に戻ってどんな様子だったか伝えるようにと仰せでした」と御者が気まずそうに返してきました。
「また……? お母様も懲りないわねぇ」
「まあこれも親孝行か。リザちゃんのお母さんは僕の義母でもあるからね」
お母様は今頃になって陛下に意趣返しでもしたいのでしょうか。17年も無視していたので今更な気もしますが。百年の免除があるので登城要請のことだって放置していてもなんの問題も無かったのですから。
「そういやもういなくなるから興味なかったけど、二人ともどんな様子だった?」
「殿下は平然を装っていたけど終始怯えていたわ。陛下もいつも通り玉座でふんぞり返ってたけど内心焦ってたみたい。意外にも殿下のことを本当に大切に思われているみたいね。まあ、当時は王女だったけど女王陛下を騙して堕胎させたんだもの。殿下が婿入りしたら、それはそれは酷い目に合わせられるでしょうね」
「あの女王陛下はオーク殲滅だのなんだのって、一ヶ所にオークを集めて魔羅を切り落とした罪人でもオークが反応するか実験とかしてるからねぇ」
「……今聞いた話忘れたい」
「はは、オスカー殿下に何しようとしてるのかなぁ? 想像しただけで怖いよねぇ! でもオスカー殿下は以前僕に魔獣との共存を強いてきたから、案外共存できちゃうかもしれないねっ」
トミーちゃんはオークに襲われた女性を何人も見てきてますからね。オスカー殿下も真実がどれほど残酷かを目の当たりにすれば意見が変わるかもしれません。隣国の王女は後継ぎとして優秀だと評判ですし、きっとオスカー殿下をよき王配として育ててくれることでしょう。
それにしても全く。
トミーちゃんとの結婚を認めると血判まで用意してくれたから全てが終わるまではお母様の茶番に付き合ってあげますが、親に振り回されているのは私も同じですね。とほほ。
【終】
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その環境で女の子の心は崩壊していた。心を完全に閉ざし無表情で短い返事だけするただの人形に成り果ててしまったのだった。
そんな時兄弟達や両親が立て続けに流行病で亡くなり跡継ぎとなった。その瞬間周りの態度が180度変わったのだ。
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その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。
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