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25 残った結果③
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ドロテアとネイサンが対峙した同日同時、クワイス騎士団に天下りを希望した三名の王立騎士達は故意にその訓練場に来ていた。
実は彼等は王立騎士を退任したのではなく、かの御方に命じられてクワイス騎士団に天下りを希望していた。
彼等の狙いはドロテア・クワイス。
いま社交界におけるドロテアの評価はうなぎ登りで、誰もがドロテアに取り入りたくてやきもきしていた。しかし誰もが接触は叶っていなかった。
ドロテアに押し寄せる王侯貴族、その立ちはだかる壁として社交界の頂点と名高いクワイス侯爵夫人が塞き止めていたからだ。
主治医のバリュ王宮医も業務外のことはしないと誰に対しても頑なな態度だった。
勿論ドロテアはなにも知らない。侯爵夫人どころか夫のブラッドリーすらも可愛い嫁を欲望渦巻く社交界へ出すのは、あと二十年は先でいいと思っているくらいなのを。
あと二年もすればブラッドリーは妻と息子を連れて領地へ帰ってしまう。それがもっと速まる可能性もある。婚姻時から変わらずブラッドリーにお姫様抱っこをされているドロテアを遠目にして、王立騎士達はそう感じた。
三名の王立騎士の役目は如何なる手を使ってでもドロテアを王都に繋ぎ止めることだった。そしてかの御方が今は文官として側に侍らしている実子ティアラとドロテアとの接触をはかること。
学園で唯一ブラッドリーとドロテアの結婚式に招待され宮殿に宿泊までしたティアラは、生徒達からの評価が変わっていた。元々優秀で性格は素直だ。ネイサンとのよくない噂はあったものの、式の招待をきっかけにして周りは彼女の本当の姿に気付いた。夏休みを終えた後も好成績をおさめ、卒業するまで生徒会の仕事を真面目にこなした、聡明なティアラの姿に。ティアラは卒業と同時にかの御方の文官に採用された。当主となるまでの一時的な登用だが、やはり過去の噂のせいで周りから苦言が出てしまった。
今ドロテアは幸運と子宝を授かる白鴛鴦そのものとして世間に認識されていたので、かの御方が娘の名誉回復、その足掛かりとしてドロテアに目をつけたのもやむをえなかった。
「ドロテア! 久し振りだな!」
「…………」
「おい聞いてんのか!」
次期侯爵夫人に一介の騎士があまりにもな言動。
王立騎士達はたまたま目にしたその衝撃の場面に歩む足を止めた。もしかしたらドロテアに取り入る機会があるかもと傍観したのだ。ここで騎士が暴れたら取り押さえてやろうと。
「お、俺をお前の騎士にしてくれよ!」
「…………」
「なあ、俺あと数日で騎士じゃなくなるんだ。そしたら平民になっちまう。家はもう兄貴が爵位を継いだし、父さんもドロテアと会うまでは帰ってくるなって」
王立騎士達が目で探りをいれていると、ドロテアは貴族の奥方らしく知らぬ存ぜぬの一点張りで、すっとぼけた顔をしていた。逆に妻を抱いている夫は今にも斬りかかりそうな眼で騎士を見ていた。
これは妻がいるから今はしないだけで後で斬られるだろうな。王立騎士達はそう予感した。
「なあってば!」
「…………」
「お前の騎士になってやるって言ってんだよ!」
法的にも正式な夫人の騎士が目の前にいる状態で、一体こいつは何を言ってるんだと常に冷静な王立騎士の一人が内心苛立った。ネイサンはそういう事に関しては天才なのだ。
「あ、前に俺の剣を台無しにしただろ? そ、それも許してやるからさあ!」
「…………」
「俺達は幼馴染だろ? だから、そのさあ、助けると思って……」
「…………」
「なんとか言えよ、おい!」
「なんとか」
「はあ!?」
「だからなんとか」
「ふざけてんのか!」
王立騎士達は式を終えた後のブラッドリーとドロテアの姿を思い出した。しかし夫の時のように弄る気は無さそうだ。むしろ夫人の無関心を助長させていると感じた。
名指しで呼んでいるので本当に幼馴染なのだろうが、夫人にとってこの騎士は弄る価値もないのだろう。側にいる護衛も取り押さえる合図を待っている……が、夫人はすっとぼけた顔で何も言わない。その労力すら使いたくなさそうだ。
王立騎士達がこの訳の解らない事態を収束させようと一歩前に出ると、頭のおかしい騎士が剣を引き抜いた。そして刃先を夫妻に向けた。
「お前は幼馴染だったけど、助けてくれないならここで叩っ斬るぞ!」
これは幸い!と見せ場がきたと悟った王立騎士達は周りにいる護衛よりも我先にと動いた。
だがドロテアがネイサンが踏み込むよりも速く、剣に触れずに弾き飛ばしたのが先だった。
「……な、なっ」
「ブラッドリー様に剣を向けないでッ! 誰か、早く彼を取り押さえてッ!」
王立騎士達はポカンとした。
夫人の手から魔力が飛び出した。
それも鋭い刃物のような魔力。
魔力操作は完璧で、的確に剣だけを狙って弾いた。
距離は5mはあった。いま目の前で見たものが信じられなかった。
「……今のは、刃のように鋭い魔力だった。この距離で剣を弾くとは……ナイフを投げるように魔力を飛ばしたのか。本当に君には驚かされてばかりだなぁ」
でも身重なんだ、君が勤勉なのは知っている、だからこそ無理はしないでおくれと、ブラッドリーは仔猫のようにフー!となっているドロテアを言い宥めた。
「だってブラッドリー様ぁ」
「よしよし。頬を膨らませても可愛いだけだぞ」
うっとりとした様子でドロテアに頬擦りしたブラッドリーは踵を返した。
そして固まっていた王立騎士達に気付いた。
「もう到着したのか……?」
「…………退任はまだですが、訓練場に来られていると知り、一度ご挨拶にと思いまして」
「先触れもなくすみません」
「いや……いい。今度リカルドと一緒に手合わせを願おうと思っていたところだ」
「それでしたらいつでも」
「何度でも」
「はは、楽しみだな。今日は新しく建てた宿舎を見ていってくれ。私達はこれで失礼する」
「「「は!」」」
王立騎士達は頭を垂らしたまま夫妻を見送った。そして憤怒のリカルドにボコボコにやられているネイサンを横目に、ため息をついた。その胸中はこの役立たずが!とか、次期侯爵夫人には取り入る隙もあったもんじゃないとか、様々な落胆を抱えていた。
「……しかし懐妊により領地に帰るのがまた数年延びた」
「ああ……これは好機だ」
「何年かかろうとも絶対に取り入ってあの凄技を手に入れてからかの御方の元に戻ろう」
「では作戦を練るか。まずは夫人をよいしょしてあの凄技を再び見せてもらい──」
王立騎士達の中では勝手に任務が増えたようだった。
「若奥様。あやつはやはりあの時息の根を止めておくべきでした」
待機させている馬車の中でコリンが顔をしかめた。あの時に早く叩っ斬っておけばと、今からでも断首しにいきそうな顔で。
「そうね。あの時は彼にも自分の人生があるから、そう思ったんだけど今はどうでもいいわ」
ドロテアの手にはネイサンの情報が書かれた書類があった。先ほどコリンがマーカス卿を経由して手に入れたものだ。
「居残りを命じられたら木刀を壁に叩き付けて折って、訓練をサボっていたんですって。おまけにクワイス騎士団の騎士なのに熊すら間引いたことがないですって? こんな冒険者以下の無能に平民の何十倍も高い年収を払っていたの!?」
人間の整備が入る森の熊ほど臆病になり、更に凶暴になる。その間引きには剣に魔力を纏わせる必要がある。それができなければ牙や爪に魔力を纏う魔獣を討伐することもできない。
ドロテアはジューン領地では熊は平民がよく狩って食べているとヴァルキンから聞いていたので、ネイサンは冒険者以下から鍛えてる平民以下だと言い直した。
「一度騎士として採用したら任期が終わるまで雇わないといけないのよねぇ……それがどんなに無能だとしても」
「はい。契約上はそうです……しかしマーカス卿は冷酷無慈悲の鬼教官です。これまでもそのような騎士がいたら速やかに事故死で処分されておりました。恐らくまだ貴族のあやつには利用価値があったのでしょう」
「ふぅん。でもなんの功績も無い金食い虫には早く出ていってもらわないとね~」
私達と領民が毎日ご飯を食べる方が大事だからね~、とドロテアは腹の子を撫でた。
「……ブラッドリー様はまだかしら?」
「事務手続きを終えられたらすぐに戻ってきますよ」
ドロテアから書類を返されたコリンはそれを懐に仕舞った。
「なんだか申し訳ないわ。さっきはまるで夫を独り占めする駄々っ子な悪妻みたいに見えてなかった?」
「まさか……沢山の目撃者がいたので、今後は騎士からも狙われますね……はぁ」
「?」
そうこうしている内に、ブラッドリーが馬車に戻ってきた。
そっと抱き締められたドロテアはブラッドリーが汗をかいていることに気付いた。急かしてしまったのかと、申し訳なさと嬉しさが同時に込み上げてきた。
「ブラッドリー様ぁ。まだ仕事が残っているのでは? 送らなくてもよいのですよ」
「何を言う。君の顔を見たらもう二度と離れたくないと感じた。しばらくは家で仕事する。そうだな……今は領地にいる側近を呼び戻そう」
戻ってきたブラッドリーの気が僅かに高揚していることに、コリンは気付いていた。血の匂いはしない。だが解る。コリンには経験がある。命を刈り取る程の殺気を鎮めた後には必ず残る魔力の残滓。直ぐに掻き消すには難しい粘ついた闘気とでもいおうか。上手く隠してはいるが、ブラッドリーが今し方誰か斬ってきたと、悟ったのだ。
実は彼等は王立騎士を退任したのではなく、かの御方に命じられてクワイス騎士団に天下りを希望していた。
彼等の狙いはドロテア・クワイス。
いま社交界におけるドロテアの評価はうなぎ登りで、誰もがドロテアに取り入りたくてやきもきしていた。しかし誰もが接触は叶っていなかった。
ドロテアに押し寄せる王侯貴族、その立ちはだかる壁として社交界の頂点と名高いクワイス侯爵夫人が塞き止めていたからだ。
主治医のバリュ王宮医も業務外のことはしないと誰に対しても頑なな態度だった。
勿論ドロテアはなにも知らない。侯爵夫人どころか夫のブラッドリーすらも可愛い嫁を欲望渦巻く社交界へ出すのは、あと二十年は先でいいと思っているくらいなのを。
あと二年もすればブラッドリーは妻と息子を連れて領地へ帰ってしまう。それがもっと速まる可能性もある。婚姻時から変わらずブラッドリーにお姫様抱っこをされているドロテアを遠目にして、王立騎士達はそう感じた。
三名の王立騎士の役目は如何なる手を使ってでもドロテアを王都に繋ぎ止めることだった。そしてかの御方が今は文官として側に侍らしている実子ティアラとドロテアとの接触をはかること。
学園で唯一ブラッドリーとドロテアの結婚式に招待され宮殿に宿泊までしたティアラは、生徒達からの評価が変わっていた。元々優秀で性格は素直だ。ネイサンとのよくない噂はあったものの、式の招待をきっかけにして周りは彼女の本当の姿に気付いた。夏休みを終えた後も好成績をおさめ、卒業するまで生徒会の仕事を真面目にこなした、聡明なティアラの姿に。ティアラは卒業と同時にかの御方の文官に採用された。当主となるまでの一時的な登用だが、やはり過去の噂のせいで周りから苦言が出てしまった。
今ドロテアは幸運と子宝を授かる白鴛鴦そのものとして世間に認識されていたので、かの御方が娘の名誉回復、その足掛かりとしてドロテアに目をつけたのもやむをえなかった。
「ドロテア! 久し振りだな!」
「…………」
「おい聞いてんのか!」
次期侯爵夫人に一介の騎士があまりにもな言動。
王立騎士達はたまたま目にしたその衝撃の場面に歩む足を止めた。もしかしたらドロテアに取り入る機会があるかもと傍観したのだ。ここで騎士が暴れたら取り押さえてやろうと。
「お、俺をお前の騎士にしてくれよ!」
「…………」
「なあ、俺あと数日で騎士じゃなくなるんだ。そしたら平民になっちまう。家はもう兄貴が爵位を継いだし、父さんもドロテアと会うまでは帰ってくるなって」
王立騎士達が目で探りをいれていると、ドロテアは貴族の奥方らしく知らぬ存ぜぬの一点張りで、すっとぼけた顔をしていた。逆に妻を抱いている夫は今にも斬りかかりそうな眼で騎士を見ていた。
これは妻がいるから今はしないだけで後で斬られるだろうな。王立騎士達はそう予感した。
「なあってば!」
「…………」
「お前の騎士になってやるって言ってんだよ!」
法的にも正式な夫人の騎士が目の前にいる状態で、一体こいつは何を言ってるんだと常に冷静な王立騎士の一人が内心苛立った。ネイサンはそういう事に関しては天才なのだ。
「あ、前に俺の剣を台無しにしただろ? そ、それも許してやるからさあ!」
「…………」
「俺達は幼馴染だろ? だから、そのさあ、助けると思って……」
「…………」
「なんとか言えよ、おい!」
「なんとか」
「はあ!?」
「だからなんとか」
「ふざけてんのか!」
王立騎士達は式を終えた後のブラッドリーとドロテアの姿を思い出した。しかし夫の時のように弄る気は無さそうだ。むしろ夫人の無関心を助長させていると感じた。
名指しで呼んでいるので本当に幼馴染なのだろうが、夫人にとってこの騎士は弄る価値もないのだろう。側にいる護衛も取り押さえる合図を待っている……が、夫人はすっとぼけた顔で何も言わない。その労力すら使いたくなさそうだ。
王立騎士達がこの訳の解らない事態を収束させようと一歩前に出ると、頭のおかしい騎士が剣を引き抜いた。そして刃先を夫妻に向けた。
「お前は幼馴染だったけど、助けてくれないならここで叩っ斬るぞ!」
これは幸い!と見せ場がきたと悟った王立騎士達は周りにいる護衛よりも我先にと動いた。
だがドロテアがネイサンが踏み込むよりも速く、剣に触れずに弾き飛ばしたのが先だった。
「……な、なっ」
「ブラッドリー様に剣を向けないでッ! 誰か、早く彼を取り押さえてッ!」
王立騎士達はポカンとした。
夫人の手から魔力が飛び出した。
それも鋭い刃物のような魔力。
魔力操作は完璧で、的確に剣だけを狙って弾いた。
距離は5mはあった。いま目の前で見たものが信じられなかった。
「……今のは、刃のように鋭い魔力だった。この距離で剣を弾くとは……ナイフを投げるように魔力を飛ばしたのか。本当に君には驚かされてばかりだなぁ」
でも身重なんだ、君が勤勉なのは知っている、だからこそ無理はしないでおくれと、ブラッドリーは仔猫のようにフー!となっているドロテアを言い宥めた。
「だってブラッドリー様ぁ」
「よしよし。頬を膨らませても可愛いだけだぞ」
うっとりとした様子でドロテアに頬擦りしたブラッドリーは踵を返した。
そして固まっていた王立騎士達に気付いた。
「もう到着したのか……?」
「…………退任はまだですが、訓練場に来られていると知り、一度ご挨拶にと思いまして」
「先触れもなくすみません」
「いや……いい。今度リカルドと一緒に手合わせを願おうと思っていたところだ」
「それでしたらいつでも」
「何度でも」
「はは、楽しみだな。今日は新しく建てた宿舎を見ていってくれ。私達はこれで失礼する」
「「「は!」」」
王立騎士達は頭を垂らしたまま夫妻を見送った。そして憤怒のリカルドにボコボコにやられているネイサンを横目に、ため息をついた。その胸中はこの役立たずが!とか、次期侯爵夫人には取り入る隙もあったもんじゃないとか、様々な落胆を抱えていた。
「……しかし懐妊により領地に帰るのがまた数年延びた」
「ああ……これは好機だ」
「何年かかろうとも絶対に取り入ってあの凄技を手に入れてからかの御方の元に戻ろう」
「では作戦を練るか。まずは夫人をよいしょしてあの凄技を再び見せてもらい──」
王立騎士達の中では勝手に任務が増えたようだった。
「若奥様。あやつはやはりあの時息の根を止めておくべきでした」
待機させている馬車の中でコリンが顔をしかめた。あの時に早く叩っ斬っておけばと、今からでも断首しにいきそうな顔で。
「そうね。あの時は彼にも自分の人生があるから、そう思ったんだけど今はどうでもいいわ」
ドロテアの手にはネイサンの情報が書かれた書類があった。先ほどコリンがマーカス卿を経由して手に入れたものだ。
「居残りを命じられたら木刀を壁に叩き付けて折って、訓練をサボっていたんですって。おまけにクワイス騎士団の騎士なのに熊すら間引いたことがないですって? こんな冒険者以下の無能に平民の何十倍も高い年収を払っていたの!?」
人間の整備が入る森の熊ほど臆病になり、更に凶暴になる。その間引きには剣に魔力を纏わせる必要がある。それができなければ牙や爪に魔力を纏う魔獣を討伐することもできない。
ドロテアはジューン領地では熊は平民がよく狩って食べているとヴァルキンから聞いていたので、ネイサンは冒険者以下から鍛えてる平民以下だと言い直した。
「一度騎士として採用したら任期が終わるまで雇わないといけないのよねぇ……それがどんなに無能だとしても」
「はい。契約上はそうです……しかしマーカス卿は冷酷無慈悲の鬼教官です。これまでもそのような騎士がいたら速やかに事故死で処分されておりました。恐らくまだ貴族のあやつには利用価値があったのでしょう」
「ふぅん。でもなんの功績も無い金食い虫には早く出ていってもらわないとね~」
私達と領民が毎日ご飯を食べる方が大事だからね~、とドロテアは腹の子を撫でた。
「……ブラッドリー様はまだかしら?」
「事務手続きを終えられたらすぐに戻ってきますよ」
ドロテアから書類を返されたコリンはそれを懐に仕舞った。
「なんだか申し訳ないわ。さっきはまるで夫を独り占めする駄々っ子な悪妻みたいに見えてなかった?」
「まさか……沢山の目撃者がいたので、今後は騎士からも狙われますね……はぁ」
「?」
そうこうしている内に、ブラッドリーが馬車に戻ってきた。
そっと抱き締められたドロテアはブラッドリーが汗をかいていることに気付いた。急かしてしまったのかと、申し訳なさと嬉しさが同時に込み上げてきた。
「ブラッドリー様ぁ。まだ仕事が残っているのでは? 送らなくてもよいのですよ」
「何を言う。君の顔を見たらもう二度と離れたくないと感じた。しばらくは家で仕事する。そうだな……今は領地にいる側近を呼び戻そう」
戻ってきたブラッドリーの気が僅かに高揚していることに、コリンは気付いていた。血の匂いはしない。だが解る。コリンには経験がある。命を刈り取る程の殺気を鎮めた後には必ず残る魔力の残滓。直ぐに掻き消すには難しい粘ついた闘気とでもいおうか。上手く隠してはいるが、ブラッドリーが今し方誰か斬ってきたと、悟ったのだ。
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