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5気絶したフリも限界です

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うぅ……ここは、どこ…………?

……霧が見える。

「───いやあ! 帰して! 早くあたしを帰してよ! もうあんたなんかと一緒にいたくないのよ!」
「あんたなんか? ……キイちゃんやっぱり嘘ついてたんだね。俺と過ごした記憶あるんでしょう?」
「っ、あんなの! 悪夢以外の何ものでもないわよ! あんたは警視総監の息子だったからテレビでは情報操作されて、英雄だのなんだのと……でもネットでは大勢の目撃者から拡散して散々叩かれてたのよ! 余所見して歩いてた馬鹿女のせいで何の罪も無い女性が巻き込まれて死んで、自分達は未成年だから法律で守られて、あげくの果てに恋人になってんのかよって……! あたしはあんたと付き合ってない! なのに週刊誌には運命の出会いをしたとか書かれて、死んだ女性の両親が泣いてあたしに会いにきたのよ! お前が死ねばよかったのにって、なんで真面目に働いて暮らしてただけの何の罪もない自分達の子が余所見して信号無視して自業自得で死んだことにされてるんだって! やっと手に入れた監視カメラの映像もあんたの父親が向こうの弁護士に手を回して消したんでしょ! あ、あたし……友達もいなくなって、外では白い目で見られるし、家にいても窓硝子が割られたりして、パパとママは死にたいって泣くし、あんな目に合うとわかってたら、あんたに助けられたくなかった……死んだ方がマシだったわ!」
「待て……待ってよ。はあ? 確かに運命の出会いだったじゃないか。だから生まれ変わって君を見た瞬間、キイちゃんだってすぐ気付いた。記憶が無いならまた運命の出会いをやり直そうと努力したんだよ。でもキイちゃん最初から俺のこと毛嫌いしてたから……でもそっか、記憶があるからこそ避けてたんだね。早く言ってくれたらよかったのに。俺、キイちゃんを諦めたら神様からのご褒美としか言えないほど凄い出会い方をした子がいてさぁ。もう運命としか思えなくて。だからキイちゃんにはその子のお世話をして欲しかったんだ。だってあの子はキイちゃんに煙たがられてもいつもニコニコしてたから」
「…………は、はぁ? 意味わかんないんだけど」
「キイちゃんは俺が一度は好きになった子だからね。記憶がなくても運命のあの子の使用人として側に置いてやろうと思ったんだよ」
「……まさかあんた、また誰かを困らせようとしてるの?」
「違うよ。いっぱい尽くしたから、俺のおかげで凄く立派に育ったんだ。そのせいで今は貴族に命を狙われてる。だから今の内に隠して、二人で幸せな家庭を築こうと思ったんだ。でもどうみても良家のお嬢さんだからさ……キイちゃん、やっぱり使用人になってよ。全然知らない奴をあの子の側に置くのは、やっぱり不安だからさぁ」
「ッ頭おっかしいんじゃないの! それ絶対あんたの妄想だから! どうせ向こうはあんたの名前すら知らないわよ! これ以上あんたの都合で苦しめるのはやめなさいよ!」
「ああもう五月蠅いなぁ。これだから何も知らない第三者は察しが悪くて嫌なんだよ」


………困ったなぁ。
非常に困った。
気絶してた意識が戻って早数分。
わたしは状況を察した。
キイラさんとソーヤさんが、わたしと同じ前世の記憶持ち転生者なのを暴露しながら言い争いをしている、この状況。

かなりやばい。

この状況は黒幕であるラスボスの仕業だ。
なんせ黒幕の狙いはいつも男女のペアだった。それも必ず魔力持ちが対象。
間違いなく黒幕の標的は、キイラさんとソーヤさんだ。

二人の様子からキイラさんは前世でソーヤさんと何らかの因縁がある。
男女の諍いというより……二人の話から推測するにストーカーとその被害者ぽいけど。

キイラさんはソーヤさんに誘拐されたと誤解してるけど、そりゃ前世のストーカーが目の前にいたら疑うのも無理はない。
でも最悪な事に二人とも黒幕の標的なんだよね。

地面に倒れたまま辺りを目だけで観察する。
ずっと霧の中だ。視界に建物は見当たらない。
黒幕の霧の化け物はどこだろう?
奴の狙いは霧の中に生きた人間を連れてきて幸せな家庭を築くこと。
先ずはパパとママ。
既に二十歳で成人してるキイラさんとソーヤさんはその為にここに誘拐されてきた。
ならまだイベントの第一段階。

でも誘拐事件が起こる時はゲームでは必ず鐘が鳴った。死合わせの鐘だ。わたしは気絶する前、その鐘の音を聞いていない。

……まぁ、クロフォード様の外套に夢中で聞きそびれた可能性はあるけど。
いやプレーヤーならともかく、わたしはなんの関係も無いモブだから鳴っても耳が聞こえない仕様?
わからない。
けれど、ほんとこの状況はまずい。

一段階目は、冒険者をしていたプレーヤーが突如霧の中を迷い、探索中に男女の遺体を発見したところからイベントが始まる。
つまり今はまだ、プレーヤーは現れない。
現れるとしたら、キイラさんとソーヤさんが殺された後だ。

……というか何故わたし前世も今も事故や事件に巻き込まれてるんだろう。
全く関係ないのに。
でも目の前にいる誘拐された男女は、どちらも顔見知りだ。二人が殺されるところなんて、見たくない。

それにしても黒幕、いつまで経っても現れないな。

「嫌い! 大っ嫌い!」
「別にいいよ! その子、君より上品だし賢いし素直だし! 前世でもあの子が俺の恋人になってたらよかったんだ! 君は俺があれだけ尽くしてやったのに恩知らずで恥知らずで、更には身の程知らずだ!」
「知らないわよぉ! もう嫌ぁ! 消えてよ! 気持ち悪い! うんざりよぉ!」

うぅ……まだ言い争ってる。
そんな場合じゃないのよ!
黒幕が現れた時の保険に死体のふりしてるわたしが言うのもなんだけど、いや言えないけどもっとよく周りを見て! 警戒を怠らないで! そして黒幕が現れたら、なんとかパパとママのフリして今しばし命を繋いで欲しい! どうにか戻れたらわたしは唯一黒幕を倒せるクロフォード様を呼んでくるから!

あとあまり大声出さないで!

まだなんの解決策も浮かばない内に黒幕が現れたらわたし詰むから! 全然関係ないから即始末されると思う! なんでよぉ! 用もないのにわたしまで誘拐しないでよぉ! クロフォード様助けてぇ!
怖くて涙が止まらない。幸せの絶頂時に死ぬなんて、前世の死に方より残酷だよぉ!

「っ……ぅぅ」
「……あ! メグ、目覚めた? 突然のことで驚いたかもしれないけど、何も心配しなくて大丈夫だからね!」

クロフォード様。
最後に握りしめたままだった外套をくんかする。
わたしが死んでもテーブルにあるハンバーグは食べてね。そしてたまにでいいからわたしを思い出して欲しい…………。
愛してます。クロフォード様……永遠に。

「さあメグ、俺の手を取って!」
「…………」
「メグ?」 
「……」
「メグ、もしかしてどこか痛いの!?」
「しつこい! 死体は動けません!」
「メ、メグ?」
「放っておいてよ! 今のわたしは死体なんだから! 触んないで動かさないでそっとしておいてよぉ!」

ソーヤさん、貴方このあとすぐ黒幕に殺されるんですよ?
これだから陽キャは察しが悪くて困る。


「──触るなと、警告した筈だが?」


どこかからクロフォード様の声が聞こえた、その瞬間、急激に霧が晴れて、わたしの意識は真っ白な視界と共に薄れていった。




チチチ、チッ、チーン。

ん……今朝は鳥の鳴き声がやけに短い。
ごろんと寝返りを打つと、肩を掴まれて、またごろんと元の位置に戻った。肌が暖かい。

「ん、?」

そっと目を開けると目前にクロフォード様の雄っぱいがあった。すごくすごい。迫力の巨乳。えろい。揉んでも減らない、神秘の双丘。死ぬならここがいい。死因は雄っぱいによる圧死。ぁあ。息が出来ないのに、苦しくない。これが天国か。

「喋るか吸うかどっちかにしたらどうだ?」
「………」
「寝たふりか?」
「ひゃ、っ」

お尻の割れ目に指が滑り込んできた。
そんなとこ触っちゃらめぇぇ!

「すべすべだ。一体どうなってるんだ。よく見せてみろ」
「たんまっ、たん、た、ひゃあ」

カーテンから透ける朝日が差し込む寝室で、両手で尻を掴まれて親指で左右に穴を拡げられた。その反動で別のとこからとろりとしたものが垂れてきた。

「んなっ、信じられなっ、」
「……こんなに零して、悪い子だ」
「ぅ、あ……!」

クロフォード様の先端が表面をならすように擦り付けられていく。
気持ちよすぎて涙が出てきた。
生きててよかった。
朝は乾燥してからっからなのに、涙も唾液も溢れてきて、入り口を出し入れされた中からもどんどん垂れてきた。

「やあッ、それ……され、っと零れ、っ」
「ああ、悪い子だ。出掛ける前にたっぷりと注いでおこう」

クロフォード様ってパイパンが好きなのかな? 指毛すら丁寧に描かれたクロフォード様とは反対に、データが重くなるからか産毛すら短縮されるモブに生まれてきてよかった。

チチチ、チッ、チーン。
ぁあ。異世界転生、最高。




「……え? ソーヤさんて辞めたんですか?」
「ああ。故郷に戻ったよ」

午後。
わたしはクロフォード様に連れられてギルドにきた。そしてクロフォード様の執務室で昨夜起きた誘拐事件の概要を聞いた。
わたしもなるべく昨夜の出来事を覚えてる限りクロフォード様に伝えた。

「あの、……霧の中から現れる魔物はご存じですよね? 老婆のような髪に、鮮血の眼をした化け物です」
「……ああ。冒険者なら、一度は遭遇しているだろう」
「その魔物がキイラさんとソーヤさんを誘拐したんです」
「そうだな。食堂の女性店員は無事保護された。しばらくしたら仕事に復帰するだろう」
「よかった。二人とも無事で……」

あっ……さっき出されたばかりのものが出そうになった。クロフォード様の膝の上で、少し体勢を直す。

「ラスボ……いえ、クロフォード様が現れたあのあと、霧の魔物と遭遇しましたか?」
「あれは夢魔だな。上位種だった。全く、悪さをしなければ放っておいてやったのに」

……凄い。
そう、そうなのよ!
ラスボスは夢魔なのよ!
ただ上位種だから、夢の中だけじゃなく現実に顕現させた霧を使って人間を誘拐できる、力のある夢魔だ。

「た、倒したんですね……流石クロフォード様!」
「目に余ったのでな。動悸を聞こうと少し話してみたが、甚だしい勘違いをしていた。だから身の程を思い知らせてやった」

……すごくすごい!
不機嫌なクロフォード様かっこ良!

「それはそうと……昨夜の約束は覚えているか?」
「っ……覚えて、ます」

昨夜。
誘拐されてクロフォード様が助けに来てくれて、そのあと気絶して気付いたらベッドでクロフォード様にめちゃくちゃ犯されてた。 

既に何度も中に出された後で、出した回数を当てたら今すぐの監禁は見逃してやるとか言われて、変なプレーが始まった。善がりながらも頭の中ではどこかで聞いたような重厚な鐘の音が鳴り響いていて、とにかく気持ちよすぎて……。

『っ、そん、わからなっ……クロフォードさまぁ、きゃっこいい~』
『……正解だ。何度出したか私も覚えていない』

なんか、うん、正直に答えたらたまたま正解してた。

「昨夜は、気絶する前に、必ず冒険者登録をすると、約束しました、っ」
「ああ。既に手続きは終えている。これが新しいギルドカードだ。商業ギルドと併用できる。以前のものは記録も金も全て新しいカードへ移行しておいた」
「あ、ありがとうございます」

仕事早っ。
正直、わたしなんかが冒険者登録してもなんの貢献もできないけど。

「そのカードに魔力をこめてみろ。今まで溜まりに溜まった経験値が加算される」
「へっ?」

経験値?
確か魔物を倒したら、その命が散った時に出てくる生命エネルギーが魔導具でもあるギルドカードに吸収されて、冒険者のレベルが上がる仕組みになっているけど。
でもわたし、何も倒してこなかったよ?

魔力をこめると、カードが光った。
更新されたようだ。
Fランクの青いギルドカードがCランクの白いギルドカードになった。

「え? えっ?」

おまけにカードにこめた魔力が、凄いパワーを宿してわたしに戻ってきた。

「……こ、これ」
「メグは今まで魔力の実を食べてきたと、私に教えてくれたことがあっただろう?」
「……はい。わたし……ズルして魔力持ちになったんです。でも後悔はしてません」

クロフォード様に頭を撫で撫でされた。あそこがきゅんとなる。

「メグの言う魔力の実とは、霧の中の魔物が散った時に出される魔力エネルギーだ。それが赤い実となって現れる」
「……はい。見つけたらすぐ食べてたので、魔力が上がりました」
「だがそれと経験値は違う。メグが喜んで食べていた実はむしろ、魔力値は上がるがおまけ程度のものでしかない」
「え?」
「恐らくメグは採取中もギルドカードを所持していたのだろうが、元々のギルドカードは薬師ギルドのものだった。あれは記録と金を表示するだけものであって、冒険者登録を済ませた後に渡される魔導具でもあるギルドカードではない。だから実を食べることで討伐とみなされ経験値を得ても、生命エネルギーはメグの体に蓄えられ、そのままになっていた。いくら魔物を倒したところでその魔導具のカードを経由しなければ、強くはなれないからな」
「…………あ。あ~、成る程。だから初めて冒険者登録をした人の中に、いきなりBランクとかDランクとか、差が出る人達がいるんですね」
「そうだ。新人冒険者はこの仕組みがなかなか理解できない。新人でも登録前に数多の魔物を討伐してきた者はすぐに理解するが、殆ど戦ったことがないランクが低い者ほど詐欺だの不公平だのと騒ぎ立てる」
「……あ~。ひとつランクが上がるだけで成功報酬が倍になりますからね。この仕組みだからこそ限りなく公平なのに」

またクロフォード様に頭を撫で撫でされた。
っ、だから……不意打ちでそれをされると、力が抜けてあそこから垂れてきちゃうから。

それにしてもクロフォード様ってほんと凄いなぁ。
この魔導具でもあるギルドカードを開発して冒険者の生存率を上げたのもクロフォード様だし。
なんか古代の力とか、異国の凄い技術が込められていると、公式情報にあった。
ギルドの機密だから流石に聞けないけど。

「なんかわたし……ズルして魔力持ちになったのにまたズルしてCランクになって、申し訳ないです」
「そうか? これでもうそう易々とは気絶しなくなった。むしろ喜ばしいことだ」
「え?」
「今夜が楽しみだな」
「え」


そのクロフォード様の言葉の真意を知ったのは、帰宅後に散々抱かれて喘がされて、それでもなかなか気絶しなくてどうしたものかとシーツに突っ伏せていた時だった。

隣でゴクリと水を飲み込むいやらしい音がした。そのあと目も合わせてないのにクロフォード様の意識がわたしに向いたと、何故かわかってしまった。

「……メグ、」

湿度のある声で呼ばれても動かない。
わたしは石。無機物。
抱かれすぎてずっと子宮が痙攣してる。せめてこれがおさまるまでは……。

「気を失っている君も可愛いから、私は構わないのだが……寝たふりはよくないぞ?」

背中に乗りかかられてそのまま挿入された。
もうだめ、声がっ、漏れる。

「ま、だ待っ、け、痙攣し、て、っらめえ」
「ああ。今夜は達する度に締まりがよくなる。中も私の形を覚えて、的確に弱いところに絡んでくる。悪い子に育ったものだ」
「ぁあ、あっ、んんっ、」

逃れる術がない。
気絶はおろか、ちょっとの間の懇願も聞いてくれない。なんの逃げ道もないまま、また中に出されて、その熱の余韻に浸る暇もなくて、更に喘がされて、もうどうしようもない。

「ほら、早く孕まないと、この生活から抜け出せないぞ?」
「ぁあ、す、る……孕む、からぁ……きゃう! そこ、やらぁ……漏、れちゃ……!」
「寝たふりも禁止だ」
「ぁあん、ごめんなさぁ……!」
「私が君をどれほど愛し、欲し、……蝶よ花よと慈しんできたか……きちんと頭で理解するまでは、外出も禁止だ」
「わかっ、……っ、は、い」

ぁあ……なにこれ……。
ラスボスはもういないのに、頭の中に鐘の音が聞こえてくる。でもおかしい。死合わせの鐘はゴーンだ。今聞こえるリンゴ~ン♪は……これ絶対エラーとかバグだ。こっちは今それどころじゃないのに!
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