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1 婚約解消されたので若返りました
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セラス・ヴァートン男爵令嬢は24歳の時ハンス・ロッセン卿から婚約を解消された。
「すまないセラス。騎士として世話になった子爵にうちの娘の婿にならないかと言われて、断れなかった」
「……そんな。ハンス様がどうしてもわたくしを妻にと望んだから、医師の道は諦めて騎士の妻になる為、今まで奮闘してきましたのよ?」
それを承知の上で今さら婚約を解消するのかと、セラスはハンスに詰め寄った。だが返ってきたのはため息と共に言われた酷い言葉だった。
「仕方ないじゃないか。それにこの5年で君は老けただろう。エルフの血を引く君は、確かに今も美しい。しかし美少女が美女に成長すると……なんというか、普通だ。新鮮味や魅力を感じなくなった」
「…………え? まさか見た目の事を言っているのですか? エルフの血を引く、このわたくしに?」
「傲慢だな。それに君は美貌に陰りが出始めた24歳……18歳のローズ子爵令嬢の方が若いし肌に張りがある」
セラスは呆れてものが言えなかった。
ハンス様は馬鹿なのかもしれない、とさえ思った。
「そんな顔をしないでくれ。余計老けて見えるぞ。あと、この事はヴァートン男爵も了承済みだ。慰謝料を払ったら、もう二度とセラスを私に近付けさせないと誓約書まで書いてくれた」
確かに、進路変更までして婚約を受け入れて、その5年後にこんな不誠実なことをするハンス様に対してお父様ならそうするでしょうね、とセラスは納得した。
「そうですか」
「ああ、だから今更君がどこに抗議してもこの事実は変わらない。変な噂など流そうと思うなよ。わざわざ法的にも正式な手続きを踏んで解消してやったんだからな」
そう言ってハンスは立ち去っていった。
ため息をついたセラスも踵を返した。
「ローズ嬢は18歳かぁ……男にとったら、見た目だけじゃなく年齢も大事なのね。お父様は20歳も年上のお母様を凄く溺愛していたから……今までは気付きませんでしたわ」
それにしても見た目や年齢、そんな理由で婚約を解消するだなんて……とセラスは落ち込みつつも、次の瞬間、とある目的の為に見た目と体の年齢を16歳に戻した。
騎士のハンスに嫁ぐならとセラスも同じく騎士道を辿った。才能はあったようで、めきめきと芽を伸ばしていった。そのため、日々の鍛練で肌は日焼けしていた。それも透き通るような艶肌に戻り、縮れていた白い髪は絹のようにさらりとした白銀の髪に戻った。女性らしくも引き締まった肉体美はお人形さんのようにほっそりとした手足に戻った。
セラスは見た目が不老のエルフの血を引いていた。寿命は人間と同じく百年前後しかないが、その血の力で年齢を自由に操作できた。6つ年上のハンスに合わせて今まで見た目を実年齢にしていたのにと不貞腐れながらも、セラスは年齢操作により気持ちを新たに家路を辿った。
「すまないセラス。騎士として世話になった子爵にうちの娘の婿にならないかと言われて、断れなかった」
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「仕方ないじゃないか。それにこの5年で君は老けただろう。エルフの血を引く君は、確かに今も美しい。しかし美少女が美女に成長すると……なんというか、普通だ。新鮮味や魅力を感じなくなった」
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「そうですか」
「ああ、だから今更君がどこに抗議してもこの事実は変わらない。変な噂など流そうと思うなよ。わざわざ法的にも正式な手続きを踏んで解消してやったんだからな」
そう言ってハンスは立ち去っていった。
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