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83 休日
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街の散策を行い、時間がかかったものの、やっと到着した冒険者ギルド。
噂の4人組の到着にざわつくギルド内をまっすぐ進み、受付嬢のララに挨拶する。
「ようこそ。『ノブレス・エンジェルズ』の皆さん。ご依頼の件ですね」
「はい。依頼の受注手続きに来ました。
もちろん、3つとも受けますわ。
それで、村への護衛については、3日後の出発にしていただけると助かります。調整していただけますか?」
「はい、依頼主に相談しておきますね。
依頼の出発は、このギルドの前になりますので、3日後の朝、いらしてください」
街の有力者と話し合いを持つ予定があるので、すぐには依頼に出られない。
依頼の魔物討伐……肉の調達くらいはいつでもできるが、村への護衛のついでに行った方が効率がいい。
さらに、領都から出るのだからと、村への護衛を受け、そのまま領内の他の街や村を見に行こうと予定を立てたルリ達。
護衛側の都合で依頼の日程を調整するのは本来有り得ないのではあるが、待遇の良さを利用してわがままを通す。
「では、3日後に参りますね。よろしくお願いします」
依頼の受注処理だけ行い、冒険者ギルドを後にする。
白銀装備の調査については、兜を除いて報告も可能であるが、もう少し兜の情報を集めてから報告する事にした。
「まだ、少し時間はあるけど、屋敷に戻るという予定でいいかなぁ?」
「うん、明日も一応、予定空いてるのよね」
「まあ、たまには休息日でもいいんじゃない? ルリも、屋敷の人と話してないでしょ」
セイラの言う通り。アメイズ領に帰ってきたとはいえ、ほとんどの時間を外出か打ち合わせで過ごしている。
それに、王都を出てからまともな休息をとっていなかった。
「じゃぁ、今日は屋敷に戻る。明日も休息日、決定!」
「「「おー!」」」
そう決定したルリ達。
だが、それぞれ休息日を利用してやりたいことがあった。
ミリアは、魔法に関する書物の閲覧。
セイラも、文献を調べて、アメイズ領の歴史など調べたいと思っていた。
メアリーも、父であり商会長であるメルヴィンに商売の提案できるように、街の様子をもっと庶民視点で見て回りたいと考えていた。
久しぶりの、別行動。
ルリは、屋敷の中を、使用人に声を掛けながら歩いて回る。
王宮のような巨大な建物では無いのでそんなに時間がかかる訳ではないが、古くから子爵家に仕えてくれている使用人は、リフィーナの元気な様子に大喜びだ。
白銀装備の話を聞きながら、懐かしい面々との交流を深めた。
メアリーは、翌日、朝から街に出かけていた。
念の為、護衛兼雑用としてメイド三姉妹が同行している。
街に出て、行ったのは、いわゆる市場調査、マーケティングだ。
庶民がどんな服装をしているのか、どんな食べ物が人気で、店舗はどの位あるのか。
また、メルヴィン商会の扱う商品で、領都で販売されていない物は何か。
観察力に優れるメアリーが見ていたのは、ルリ達の戦闘だけではない。
普段の生活の中での一言一言を胸に刻み、自分の知識として取り入れていた。
ニーズとウォンツ……って言ってたわね。
欲しい商品そのものを考えるより前に、人々が何をしたいのか考えるのか……。
ルリの言葉を思い出しながら、街の様子を眺めてみる。
王都やマリーナル領と比べて、人が多い割には、店舗が少ないように感じた。
幼少の頃からお店の手伝いをしてきたメアリーにとっては、商品の品質の善し悪しを判断する事も簡単だ。
「アルナさん、王都の父宛に手紙を出したいのですが、お手伝いいただけますでしょうか……」
店舗に良さそうな場所や物件の情報、販売すべき商品のリストを記し、メルヴィン宛に手紙を書く。
子爵家の扱いとして届ける事で、無事に届く確率が格段に上がるので、アルナに依頼を行う事にしたのだった。
ルリが言ってた、何でもそろう大きなお店。
個人店が多くて必需品が行き渡っていないこの街なら……。
デパート? スーパー? ホームセンター?
違いは結局わからなかったけど、そういうお店、つくれそうね。
1日街を回り、状況を把握したメアリー。
ほくそ笑みながら、屋敷に戻るのであった。
ミリアとセイラは、1日を読書で過ごしていた。
貴族家ともなれば、屋敷に伝わる書物が多数あり、それぞれ1点物の書物である事も多い。
特に、武闘派のアメイズ子爵家には、王宮にはない内容の本もたくさんあった。
「ふふふ、この魔法、今度試してみましょう。古代魔法というのも興味深いですわ!」
魔法の中には、既に失われた魔法も多数ある。
伝説として存在はしているものの、詠唱方法が不明で、使い手がいなくなってしまった魔法だ。
しかし、事象のイメージで魔法を発動できるミリアであれば、理屈や結果さえ分かれば再現できる可能性もある。
「セイラ、聞いてください! 大地を爆発させる魔法があるらしいですわ」
「大地が爆発!? すごいわね。それで、どうやるの?」
「……まったく分かりませんわ。後でルリに聞いてみましょう……」
化学的に考えれば、可燃性の鉱物などが爆発する魔法なのであろうが、そんな解説はされていない。
たぶん、ルリが見ても分からないであろうが、ミリアは楽しそうだ。
ルリは、久しぶりにゆっくりとした時間を過ごしていた。
母に病状など聞いてみる。
(何か栄養が足りないのかなぁ。青汁みたいなの作ってみようかしら)
厨房を借りて、野菜をゴリゴリと磨り潰す。
味は、正直美味しくない……。
「お母様、これ、グリーンスムージーと言うのですが、カラダにとても良いのです。
毎日コップ1杯で構いませんので、飲んでいただけませんか」
一口飲んで、嫌そうな顔をする母サーシャ。
「不味いわね……」
「野菜を磨り潰した飲み物ですので……」
何とか飲んでもらい、味付けを工夫する事を約束する。
蜂蜜など混ぜれば、多少は良くなる。
(五大栄養素……何だったかなぁ……)
授業で見た事のある栄養素の表を思い出そうとするものの、ハッキリと覚えている訳ではない。
(炭水化物は、パンがある。
ビタミンは野菜で摂れる。
たんぱく質や脂質は、オーク肉とかそれっぽいわ。
あとはミネラル、海藻はここでは無理だし、何だろう……?)
母の虚弱の原因は分からないものの、とりあえず食生活を整えるだけでも違うはずである。
使用人にも食事のバランスの事を伝え、栄養の指導をした。
「食事は、少しずつでもいいので、数多くの食材を食べる事。1日30品目が目標です。
それを簡単にするのが、このスムージーですので、必ず飲んでください。
あと、元気がない時や寒い時は生姜のスープを作ってください。身体が温まります」
貴族家の食卓は、見た目重視で栄養バランスが考えられていない。
精進料理のようなメニューを教えてみた。
「体質がどうすれば治るのか、原因はわかりません。でも、バランスの良い食事で、少しは良くなると思いますので、頑張ってくださいね」
最近は結婚話などで責められてばかりだったので、母に一矢報いたと喜ぶルリ。
本気で心配しての事ではあるが、間近に母を感じた事で、何とか治したいと、改めて心に誓うのであった。
その頃、ラミアとセイレンは、浴室でのんびりお湯に浸かっていた。
「一日中風呂に入っていては、我はふやけそうだぞ」
「ラミア、私は水の中が好きなのよ。何百年もほっとかれたのですから、もう少し付き合いなさいよ」
ヒトとは時間の感覚すら異なる2人。
いつまで経っても風呂から出てこない客人の様子に焦る使用人の気持ちなど知らず、どこか甘い雰囲気を醸し出し続けるのであった。
明日は、街の有力者が屋敷に集まる日だ。
今後の領政の行方を左右する重要な会議になるはずだ。
そわそわとする大臣のマティアス。
何も考えていなそうなルリ。
大一番に向けて、夜は更けていくのであった。
噂の4人組の到着にざわつくギルド内をまっすぐ進み、受付嬢のララに挨拶する。
「ようこそ。『ノブレス・エンジェルズ』の皆さん。ご依頼の件ですね」
「はい。依頼の受注手続きに来ました。
もちろん、3つとも受けますわ。
それで、村への護衛については、3日後の出発にしていただけると助かります。調整していただけますか?」
「はい、依頼主に相談しておきますね。
依頼の出発は、このギルドの前になりますので、3日後の朝、いらしてください」
街の有力者と話し合いを持つ予定があるので、すぐには依頼に出られない。
依頼の魔物討伐……肉の調達くらいはいつでもできるが、村への護衛のついでに行った方が効率がいい。
さらに、領都から出るのだからと、村への護衛を受け、そのまま領内の他の街や村を見に行こうと予定を立てたルリ達。
護衛側の都合で依頼の日程を調整するのは本来有り得ないのではあるが、待遇の良さを利用してわがままを通す。
「では、3日後に参りますね。よろしくお願いします」
依頼の受注処理だけ行い、冒険者ギルドを後にする。
白銀装備の調査については、兜を除いて報告も可能であるが、もう少し兜の情報を集めてから報告する事にした。
「まだ、少し時間はあるけど、屋敷に戻るという予定でいいかなぁ?」
「うん、明日も一応、予定空いてるのよね」
「まあ、たまには休息日でもいいんじゃない? ルリも、屋敷の人と話してないでしょ」
セイラの言う通り。アメイズ領に帰ってきたとはいえ、ほとんどの時間を外出か打ち合わせで過ごしている。
それに、王都を出てからまともな休息をとっていなかった。
「じゃぁ、今日は屋敷に戻る。明日も休息日、決定!」
「「「おー!」」」
そう決定したルリ達。
だが、それぞれ休息日を利用してやりたいことがあった。
ミリアは、魔法に関する書物の閲覧。
セイラも、文献を調べて、アメイズ領の歴史など調べたいと思っていた。
メアリーも、父であり商会長であるメルヴィンに商売の提案できるように、街の様子をもっと庶民視点で見て回りたいと考えていた。
久しぶりの、別行動。
ルリは、屋敷の中を、使用人に声を掛けながら歩いて回る。
王宮のような巨大な建物では無いのでそんなに時間がかかる訳ではないが、古くから子爵家に仕えてくれている使用人は、リフィーナの元気な様子に大喜びだ。
白銀装備の話を聞きながら、懐かしい面々との交流を深めた。
メアリーは、翌日、朝から街に出かけていた。
念の為、護衛兼雑用としてメイド三姉妹が同行している。
街に出て、行ったのは、いわゆる市場調査、マーケティングだ。
庶民がどんな服装をしているのか、どんな食べ物が人気で、店舗はどの位あるのか。
また、メルヴィン商会の扱う商品で、領都で販売されていない物は何か。
観察力に優れるメアリーが見ていたのは、ルリ達の戦闘だけではない。
普段の生活の中での一言一言を胸に刻み、自分の知識として取り入れていた。
ニーズとウォンツ……って言ってたわね。
欲しい商品そのものを考えるより前に、人々が何をしたいのか考えるのか……。
ルリの言葉を思い出しながら、街の様子を眺めてみる。
王都やマリーナル領と比べて、人が多い割には、店舗が少ないように感じた。
幼少の頃からお店の手伝いをしてきたメアリーにとっては、商品の品質の善し悪しを判断する事も簡単だ。
「アルナさん、王都の父宛に手紙を出したいのですが、お手伝いいただけますでしょうか……」
店舗に良さそうな場所や物件の情報、販売すべき商品のリストを記し、メルヴィン宛に手紙を書く。
子爵家の扱いとして届ける事で、無事に届く確率が格段に上がるので、アルナに依頼を行う事にしたのだった。
ルリが言ってた、何でもそろう大きなお店。
個人店が多くて必需品が行き渡っていないこの街なら……。
デパート? スーパー? ホームセンター?
違いは結局わからなかったけど、そういうお店、つくれそうね。
1日街を回り、状況を把握したメアリー。
ほくそ笑みながら、屋敷に戻るのであった。
ミリアとセイラは、1日を読書で過ごしていた。
貴族家ともなれば、屋敷に伝わる書物が多数あり、それぞれ1点物の書物である事も多い。
特に、武闘派のアメイズ子爵家には、王宮にはない内容の本もたくさんあった。
「ふふふ、この魔法、今度試してみましょう。古代魔法というのも興味深いですわ!」
魔法の中には、既に失われた魔法も多数ある。
伝説として存在はしているものの、詠唱方法が不明で、使い手がいなくなってしまった魔法だ。
しかし、事象のイメージで魔法を発動できるミリアであれば、理屈や結果さえ分かれば再現できる可能性もある。
「セイラ、聞いてください! 大地を爆発させる魔法があるらしいですわ」
「大地が爆発!? すごいわね。それで、どうやるの?」
「……まったく分かりませんわ。後でルリに聞いてみましょう……」
化学的に考えれば、可燃性の鉱物などが爆発する魔法なのであろうが、そんな解説はされていない。
たぶん、ルリが見ても分からないであろうが、ミリアは楽しそうだ。
ルリは、久しぶりにゆっくりとした時間を過ごしていた。
母に病状など聞いてみる。
(何か栄養が足りないのかなぁ。青汁みたいなの作ってみようかしら)
厨房を借りて、野菜をゴリゴリと磨り潰す。
味は、正直美味しくない……。
「お母様、これ、グリーンスムージーと言うのですが、カラダにとても良いのです。
毎日コップ1杯で構いませんので、飲んでいただけませんか」
一口飲んで、嫌そうな顔をする母サーシャ。
「不味いわね……」
「野菜を磨り潰した飲み物ですので……」
何とか飲んでもらい、味付けを工夫する事を約束する。
蜂蜜など混ぜれば、多少は良くなる。
(五大栄養素……何だったかなぁ……)
授業で見た事のある栄養素の表を思い出そうとするものの、ハッキリと覚えている訳ではない。
(炭水化物は、パンがある。
ビタミンは野菜で摂れる。
たんぱく質や脂質は、オーク肉とかそれっぽいわ。
あとはミネラル、海藻はここでは無理だし、何だろう……?)
母の虚弱の原因は分からないものの、とりあえず食生活を整えるだけでも違うはずである。
使用人にも食事のバランスの事を伝え、栄養の指導をした。
「食事は、少しずつでもいいので、数多くの食材を食べる事。1日30品目が目標です。
それを簡単にするのが、このスムージーですので、必ず飲んでください。
あと、元気がない時や寒い時は生姜のスープを作ってください。身体が温まります」
貴族家の食卓は、見た目重視で栄養バランスが考えられていない。
精進料理のようなメニューを教えてみた。
「体質がどうすれば治るのか、原因はわかりません。でも、バランスの良い食事で、少しは良くなると思いますので、頑張ってくださいね」
最近は結婚話などで責められてばかりだったので、母に一矢報いたと喜ぶルリ。
本気で心配しての事ではあるが、間近に母を感じた事で、何とか治したいと、改めて心に誓うのであった。
その頃、ラミアとセイレンは、浴室でのんびりお湯に浸かっていた。
「一日中風呂に入っていては、我はふやけそうだぞ」
「ラミア、私は水の中が好きなのよ。何百年もほっとかれたのですから、もう少し付き合いなさいよ」
ヒトとは時間の感覚すら異なる2人。
いつまで経っても風呂から出てこない客人の様子に焦る使用人の気持ちなど知らず、どこか甘い雰囲気を醸し出し続けるのであった。
明日は、街の有力者が屋敷に集まる日だ。
今後の領政の行方を左右する重要な会議になるはずだ。
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