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水の中

車椅子の女子高生

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水の中にいるように感じていた。
水の中に潜るようにして藻掻いていた。

わたしは高瀬るり。16歳の高1。女子校に通う女子高生なわけだけど、たぶんいちばん目立つ特徴としては車椅子に乗っていることだと思われる。

逆に云ってしまうなら、それ以外はごくごく一般的な少女であると云える。

車椅子に乗りはじめたのはおととしの中学2年生のとき。
いまは亡き母親から受け継いだ難病が進行したためだった。

もうひとつ、まだ誰にも云っていないこと。わたしは父親から性的虐待を受けている。はじまったのは、車椅子になった直後だった。
その日は、夕方から怠く、学校から帰って制服も脱がないで休んでいた。微睡みの中でドアが開いた気がして、わたしは顔を上げた。
「るり、」
父親だった。
「? どうかしたの?」
険しい表情かおを訝ったわたしの問いにも父親は答えない。
そしてそのまま、ベッドに入ってきた!!
「パパ? ……なにするの? ちょっと、」
父親はしかし答えず、わたしに覆いかぶさり、唇を吸ってきた。
……これは、そう云う対象にしようとしてる?
衝撃で視界が暗くなる。
わたしが一瞬ぼんやりしてしまった隙に、父親はセーラー服のスカーフを解いていた。
我に返り、我武者羅に抵抗をはじめると、頬を張られた。バチン、バチン、バチン、バチン、バチン……3回目くらいから、急速に気力が萎えてゆくのを感じていた。
恐怖に支配され、わたしのついに抵抗をやめた。
為すがまま、バンザイでもするかのように、セーラー服の上着を脱がされた。ブラジャーをズラされる。乳房が零れて父親がむしゃぶりついてくる。はじめての感触に全身が粟だつ。
乳首を舌でなぶりつつ、父親の手はスカートのホックを探って外した。スカートが引きずり下ろされる。容赦のない父親の手はさらに下着に伸び、あっさりとやはり引きずり下ろされた。あっと云う間に裸にされ、羞恥に身を捩ろうとしたが、不可能だった。父親の遠慮ない手が陰部を探り当て、掻き回す。
わたしは恐慌状態に陥っていた。愛撫と云うにはあまりに強引な父親の責めは、しかしやがて、屍と化したわたしに或る種類の変化をもたらした。自分が感じさせられてしまっている事実。それはわたしを打ちのめし、追いつめた。
毀れてしまう。
毀れてしまう。
毀れてしまう。
そう思った。

以来、2年以上、父親からの性的虐待はつづき、肉体苦痛にはすっかり慣れた。だが、精神的苦痛は如何ともし難く、わたしは成績を下げた。結果、高校受験も公立高校は失敗し、すこし遠方の学費のかさむ私学の女子校に、わたしは入学した。そしてそのことで父親は余計にわたしを苛んだ。

そんなわけで、毎日、水の中にいるように感じていた。
水の中に潜るようにして藻掻いていた。
わたしは、水の中に潜るようにして藻掻いている。
ひかりは見えない。
出口は、見えない。


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