前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します！

【番外編】恋とはどんなものかしら？5

「ねぇねぇ、それでどうなの～？」
「どこまで進んだ？」
「キスは、したのよね？」
「……キスとかまだしてないよ。……この前みんなが見てたせいで……」

　恨みがましくみんなを見つめると、「あ」「うっ」「え」と言って慌てて3人がさっと目を逸らす。

「それは……えーっと……」
「悪気はなかったというか……」
「好奇心が抑えきれなくて」
「……私に色々と聞く前に、何か言うことがあるんじゃないの？」
「「「ごめんなさい」」」

　3人が一斉に謝る。
　一応罪悪感はあったらしい。

(なんだかんだ、こうしてみんな素直だから憎めないのよね)

「では、アイザックさんのどこがお好きなんですか？」
「そ、そうそう、それも聞きたかったの」
「クラリスちゃんて男性苦手っぽかったし」
「エディオンさまには全然靡かなかったのに、アイザックくんを好きになった決め手って何～？」
「もう、切り替え早いんだから。それに、いきなり好きなところとか決め手とか急に言われても……」

　ミナの言葉にみんなが追従して聞いてくる。
　アイザックの好きなところを急に聞かれても、考えたことがなかったから難しい。

(何かがきっかけって言うより、自然と惹かれてたって感じだからなぁ)

　思い返してみても最初の出会いの衝撃も大きかったけれど、その後たくさん関わっていくうちにだんだんと好きになって言った気がする。だから、具体的にこれがきっかけ、というのはあまりないような気がした。

「きっかけってのは思いつかないけど、何だろ……優しいところというか、一緒にいて落ち着くところ、かしら？」
「あー、わかるかも～」
「ドキドキも大事だけどそういう空気感の相性も大事よね」
「なるほどね。確かに、私もクラウスと一緒にいてあんまり気負わないというか自然体でいられるのがいいって思うもの」
「一緒にいて、気負わない……なるほど……」

　ミナが何やらメモを取り始めている。
　まさか私が言ったこと全部参考にするつもりなのだろうか。

「他には？」
「他……って言われても……うーん」
「あ、ほら、じゃあフェチとかはどう？」
「いいわね～！　私は胸筋とか腕の筋肉とか好き～！」
「私はヘアメイクするからかどうしても気になっちゃうから、髪が綺麗な人かな」
「私は、身長が高い人がいいかも」
「確かにクラウスは身長高いものね。そういうのだと……私は……アイザックの声は好き、かな」

　落ち着き払った低い声で自分の名を呼ばれると未だにドキッとしてしまう。元々声が好きとかはなかったけど、アイザックは特別だった。

「すっごいわかる～！」
「アイザックくんの声ってセクシーよね」
「低くて胸に響くわよね」
「なるほど。声、ですか……」

　ミナが真剣にメモを取っているのを見て、本当に勉強熱心なのだなと感心する。さすがにこの話題でメモを取るのはどうかとは思うが。

「他には？　他には？」
「アイザックくんと普段はどう過ごしてるの？」
「今度のホリデーはデートとかしちゃうの？」
「え？　いや……えっと……」

　だんだんと興奮してくる3人。
　もう収拾がつかず、どうしようかと考えあぐねていたときだった。