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第百五話 思い通りにならない人生

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「きゃー、ノースくんいけいけー!」
「まるでドラマを見てるようだわ……っ! とうとう結ばれる二人……素敵!」
「こらこら、貴女達。はしゃいだら聞こえちゃうわよ!」

 聞こえてくる聴き慣れた声。

 アイザックにも彼女達の声が聞こえたようで、バッと二人で勢いよく振り向くと、そこにいたマリアンヌ、ハーパー、オリビアの三人と目が合った。

「あ、はははは……。お邪魔しちゃったかしら~?」
「もう、ハーパーが騒ぐから! せっかくいいところだったのに!!」
「本当よ! せっかくのクラリスのファーストキスだったのに!」
「マリアンヌー、ハーパ~、オリビア~!!!」
「きゃあ、クラリスちゃん、怒らないでちょうだい!」
「悪気はなかったのよ~」
「ただ好奇心で!」
「それがダメだって言ってるの!!」

 私が顔を真っ赤にしながら彼女達に憤っていると、どこからともなく別の人物達もやってくる。

「アイク、クラリスを幸せにしなかったら承知しないからな!」
「クラリスさま、おめでとうございます!」

 一体どこから湧いて出てきたのかエディオンとミナも加わり、なぜかみんな私達の様子を見ていたような口ぶりに頭が痛くなる。

「キミの恋人になれなくてとても残念ではあるけど……でも、親友の座は誰にも渡さないよ!」
「はい? 何をおっしゃっているんです。いくらエディオンさまと言えど、クラリスさまの親友はわたくしです!」
「ちょっとちょっと!? 私がいることをお忘れではなくて? 私がクラリスの最初の友達であり、親友なのよ!」

 突然、エディオンとミナとマリアンヌの三つ巴の争いが目の前で勃発し始める。
 自分のことで争っていることは承知しているが、ここまでくるともはや私は蚊帳の外だ。

(何でこうなるんだ)

 せっかくアイザックと想いが通じ合ったというのに、どうやら私の人生は一筋縄ではいかないらしい。
 
 今までのことを思い返す。

 引きこもるはずが、なぜかNMAに来ることになり。

 喪女として生きるはずが、なぜかモテモテになり。

 なかなかどうして、今世でも自分の思い通りにならないことの連続である。
 けれど、前世とは違って自分の意思で行動するようになったからか、色々なことに巻き込まれてはいるものの毎日が充実していて楽しいと思える自分がいた。

(とはいえ、いつになったら落ち着くのやら)

 目の前で繰り広げられる騒動は未だ終わる気配はない。
 ふとアイザックを見ると、彼も私と同じことを思っていたのか苦笑している。
 そして、「このままこっそり寮に帰るか?」と耳打ちされて私は小さく頷くと、二人でこっそりとこの場を抜け出すのだった。
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