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第百話 カオス

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「というわけで、次にまた同様の事件を起こしたら退学処分とせざるをえませんが、今回は一度目。処分保留ということで、引き続きミナさんはミナ・アーミットとしてこの学園で勉学に励んでいただくことになります」
「そういうことですから、引き続きよろしくお願いしますわ。クラリスさま」

 ニコニコと微笑まれてギュッと抱きつかれる。

 抱きつくことは多いが、抱きつかれることに不慣れな私はどうしたらいいのか、と困惑しながら棒立ち状態。

 とにかく本来のミナはこういう積極的な性格だったようだと解釈することにした。

「それはいいんだけど……なぜクラリスさま? 友達なんだし、普通にクラリスって呼んでほしいわ。というか、さっきの真の愛する方っていうのはどういうことなの?」
「それはもちろん、私はクラリスさまに恋をしているということです」
「こ、恋!?」
「えぇ、私の素直な気持ちを突き詰めて考えたときに気づきましたの。これはまさしく恋だと! あの助けてくださった日、私はクラリスさまのあの強い気持ちに感銘を受けました。私を想ってくださったその御心がとても嬉しくて、クラリスさまから愛を感じましたわ!」
「えーっと親愛はあると思うけど、恋とは違うと思うけどなぁ……?」

(そもそも、別にそんなつもりだったわけじゃないんだけどなぁ……。むしろ自分のためにやった部分が大きいというかなんというか)

 なんて思うも、ミナに前世のことが言えるはずもない。

「それにずっとわたくしはクラリスさまのことを見ていたからわかりますわ。クラリスさまはマリアンヌと普段仲睦まじくしていらっしゃるし、女性もイケるお口なのでしょう? でしたら私にもチャンスがあるかと……!」
「え、えぇーー!? いや、マリアンヌとのあれはあくまで軽口なだけだからね? マリアンヌには婚約者もいるし。本気にしないでちょうだい!」
「そうなんですか?」
「そうなの! それにミナのことは好きだけど、それはあくまで友達としてであって……」
「そうですよ。マルティーニさんはゆくゆくは私の伴侶になるかもしれない方ですし」
「いやいやいやいや、学園長まで何をおっしゃってるんですか!? 混乱するので余計なことは言わないでください!」

 再び学園長室でもカオスな状況になり、つくづく私は面倒ごとに巻き込まれる体質なのだと改めて思うのだった。


 ◇


「はぁ、疲れた……」

 どうにかあの場を切り上げたときにはとっぷりと日が暮れていた。
 夕食を済ませて寮に戻り、自室のベッドに辿り着くと私は思いきりダイブする。

「今日も一日ドタバタだった~」
「ふふ、お疲れさま。もうあとは寝るだけでしょう? もう寝たら?」
「うん、そうする」

 そんな会話をマリアンヌとしていたときだった。
 不意にコンコンと外から控えめにノックされ、マリアンヌとお互いに見つめ合う。

「誰かしら?」
「ハーパーとオリビアではなさそうよね?」

 二人ならわざわざノックなどせずに入ってくるだろう。
 不思議に思いつつドアを開けると、そこには想定外の人物がいた。
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