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第九十八話 過保護
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「クラリス、どこに行くの? 一緒について行きましょうか?」
「大丈夫よ、トイレに行くだけだから」
「それでも、一緒に行きましょう? 何かあってからでは遅いわ」
「マリアンヌ、過保護すぎよ~」
「そうよ。トイレにまで一緒にくっついて行くなんて」
あのミナの一件から数日経った今、マリアンヌはさらに過保護になり、私がどこかに行こうとすればすぐさま「どこに行くの?」と聞くほどの徹底ぶりだ。
もうミナも改心したし大丈夫だと言っているというのにこのありさまで、さすがの私もここまでべったりなのはどうかとちょっとうんざりしていた。
「……さまー! クラリスさまぁ~!」
「あれ、クラリスちゃん呼ばれてない?」
「うん? 誰だろう」
現在カフェテリアにいるため人が多く、どこの誰から呼ばれているのかわからず、キョロキョロと見回す。
そもそも私をさまづけする人物に心当たりがなく、一体誰だろうと思考を巡らせていると、何かが勢いよくこちらに向かって走ってくるのが見えた。
「クラリスさまー!!」
「ミナ!?」
ギョッとしたのも束の間、ミナが勢いよく私に向かって抱きついてくる。
椅子ごとひっくり返りそうになるのを足で踏ん張って受け止めると、「さすがクラリスさまですわ!」とうっとりした表情で見つめられて、頭が混乱する。
(え、誰? ミナ、よね?)
見た目はミナなのに、一体何が起こっているのか。
どう考えてもキャラ違いすぎでしょう、と戸惑っていると、「こらこら、マルティーニさんが困ってますよ」とミナの後ろから学園長が現れる。
「えっと、学園長……これは一体? ミナに何かしました? 性格変わりすぎじゃありません?」
「性格? いえ、今まで受けた心の傷などのカウンセリングは行いましたが、他に何か特別なことはしてませんが」
「えぇ?」
(とはいえ、どう考えてもも別人としか言いようがない気が……)
未だに私にすりすりと頬を擦り寄せてくるミナ。まるで愛玩しているペットのようである。
こんなに懐かれるようなことをした記憶がなくて戸惑っていると、ミナにギュッと手を握られた。
「私、気づきましたの。真の愛する方はどなたかを……! それは、クラリスさま、貴女ですわ!!」
「えぇぇえええーーーー!?」
「相変わらず面白いことになってるわね、クラリスちゃん」
「見てて飽きないわよね、本当」
「クラリス、一体どういうことなの!?」
場が混沌としてきたところで学園長から、「とりあえず先日の一件の詳細をお話したいのですが、ここではなんですから、マルティーニさんご一緒に学園長室まで来ていただけますか?」と提案を受け、とにかくこの状況を抜け出したかった私はすぐさま承諾したのだった。
「大丈夫よ、トイレに行くだけだから」
「それでも、一緒に行きましょう? 何かあってからでは遅いわ」
「マリアンヌ、過保護すぎよ~」
「そうよ。トイレにまで一緒にくっついて行くなんて」
あのミナの一件から数日経った今、マリアンヌはさらに過保護になり、私がどこかに行こうとすればすぐさま「どこに行くの?」と聞くほどの徹底ぶりだ。
もうミナも改心したし大丈夫だと言っているというのにこのありさまで、さすがの私もここまでべったりなのはどうかとちょっとうんざりしていた。
「……さまー! クラリスさまぁ~!」
「あれ、クラリスちゃん呼ばれてない?」
「うん? 誰だろう」
現在カフェテリアにいるため人が多く、どこの誰から呼ばれているのかわからず、キョロキョロと見回す。
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「クラリスさまー!!」
「ミナ!?」
ギョッとしたのも束の間、ミナが勢いよく私に向かって抱きついてくる。
椅子ごとひっくり返りそうになるのを足で踏ん張って受け止めると、「さすがクラリスさまですわ!」とうっとりした表情で見つめられて、頭が混乱する。
(え、誰? ミナ、よね?)
見た目はミナなのに、一体何が起こっているのか。
どう考えてもキャラ違いすぎでしょう、と戸惑っていると、「こらこら、マルティーニさんが困ってますよ」とミナの後ろから学園長が現れる。
「えっと、学園長……これは一体? ミナに何かしました? 性格変わりすぎじゃありません?」
「性格? いえ、今まで受けた心の傷などのカウンセリングは行いましたが、他に何か特別なことはしてませんが」
「えぇ?」
(とはいえ、どう考えてもも別人としか言いようがない気が……)
未だに私にすりすりと頬を擦り寄せてくるミナ。まるで愛玩しているペットのようである。
こんなに懐かれるようなことをした記憶がなくて戸惑っていると、ミナにギュッと手を握られた。
「私、気づきましたの。真の愛する方はどなたかを……! それは、クラリスさま、貴女ですわ!!」
「えぇぇえええーーーー!?」
「相変わらず面白いことになってるわね、クラリスちゃん」
「見てて飽きないわよね、本当」
「クラリス、一体どういうことなの!?」
場が混沌としてきたところで学園長から、「とりあえず先日の一件の詳細をお話したいのですが、ここではなんですから、マルティーニさんご一緒に学園長室まで来ていただけますか?」と提案を受け、とにかくこの状況を抜け出したかった私はすぐさま承諾したのだった。
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