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第十六話 雷

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「おや、起きましたか」
「あ、学園長……っ!」

 ツカツカと入口からやってくるのは、入学式よりもいくらかラフな格好をした学園長だった。
 私が起きているのを確認すると、突然私の腕を掴み、そのあと「ふむふむ」と頷きながら瞳を覗き込んでくる。

「あ、あの……?」
「おや、失敬。突然では不躾でしたね。魔力が安定しているかどうか確かめていましたが、落ち着いたようでよかったです」
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「いえいえ、気になさらないでください。それよりもこんなに魔力の強い生徒が入学してくれたことが何よりも誇らしい! マルティーニさん、貴女は今まで入学してきた生徒の中でも一、二を争うほどの魔法力の持ち主です。これからが楽しみですねぇ」

 立て板に水を流すように一気に捲し立てるような勢いで喋りかけてくる学園長。
 入学式のときとの話し方とは違って、早口で情報量も多いために起きたての頭にはつらいものがあった。

「は、はぁ……?」
「しかも、なんとも美しい! エルフか妖精のハーフです? 今まで出会った人の中でこんなに美しい人間を初めて見ました!! ぜひとも広報としてその美を我が校の宣伝に役立て……いってぇ!!」
「!?」
「……学園長。何をなさってるんです?」

 学園長が喋ってる途中で突然、スパーンと彼に雷が落ちたかと思えば、学園長の背後には青筋を立てた白衣を着た女性が仁王立ちで立っていた。

「し、シーラくん。突然雷を落とすなんて酷いじゃないですか」
「それはこっちのセリフです! 先程まで寝込んでた生徒に何迫ってるんですか! しかも口説いてるし! 教職員ともあろう人がまだ年端もいかない生徒を誑かそうとしてるなんて、NMAの学園長としての品位をお考えください!」
「いやっ、違っ、誤解ですよ!」
「黙らっしゃい!!」
「痛ーーーーーっ!!!」

 再び雷が学園長に落ちる。
 それを口をあんぐりとさせながら、私とマリアンヌは傍観していると、シーラと呼ばれた女性はこちらに気づいたようで「はっ」と驚いた表情をしたあと「ほほほほ」と口元に手をおいて笑い始めた。

「見苦しいものを見せてしまってごめんなさいね」
「い、いえ」
「とりあえず、ここにいても落ち着かないでしょう? 体調が戻ったのなら寮に戻りなさい。ってあぁ、寮の場所とかわからないわよね」
「あ、私はわかります」
「そう? じゃあ、デルトロさん、よろしくね。マルティーニさんは、もしまた体調が悪くなったらすぐに医務室へ来ること。このバカ……んん、失礼。学園長は私が責任持って処理するから気にしないで」
「わ、わかりました」

 なんとなく力関係が見えたような気がしたが、気づかないフリをして私はお礼を言うと、そそくさとマリアンヌと共に医務室を出るのだった。
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