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第七話 大騒ぎ

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 あれからはもう、マルティーニ家ではてんやわんやの大騒ぎだった。

「クラリスにNMAから招待状が!!」

 父が帰ってくるなり母と姉は猛ダッシュで父に報告し、それからは使用人を交えての上へ下への大騒ぎ。

 いつもニコニコとおっとりとしている父もこのときばかりは興奮し、「とうとう我が家からもNMA生が!」と、いつにないほどのハイテンションでそのままの勢いで胴上げでもされるのではないかというくらい褒められ、喜ばれた。

 そのため、「実はNMAを辞退して別の学校を受験したいなーっと思って……」と静かに本音を漏らせば、家族どころか使用人達からも一斉に悲鳴が上がり、母なんかはあまりにショックを受けすぎて卒倒してしまった。

 それからは大反対どころではなく、文字通り朝から晩まで家族や使用人達から延々とかわるがわる説得にあたられた。
 時には憤りながら脅され、時には情に訴えながら泣き落としをされ、その延々と続く攻め苦に私はついに根負けして渋々NMAに行くことに決めたのだ。

 我ながら、前世もそうだがどうやら押しに弱いらしい。

 前世の家族に比べたらマルティーニ家の家族はみんな比べものにならないほど優しいが、一度決めたらとても頑固なのだ。
 しかも、みんながみんな「高官になりたいのでしょう? だったら一番の近道はNMAに入学することよ! クラリスのために言ってるのよ?」と自分のためを想いながら言ってくれているのは理解していたので、余計に断りづらかったというのもある。

 そんなわけでNMAに入学すると決めたのだが、そこからは毎日が地獄だった。

 まず、今までちゃんとやってこなかったツケが回ってきたのだ。

 そう、身嗜みについてである。

 NMAは優秀な魔法学校であるために、比較的に王族や貴族が多い。
 いくらコネで入学できないとはいえ、血筋などである程度の素質が決まっているそうで、必然的に庶民からの入学者よりも上流階級の人々が多いと言われている。

 そのため、寮暮らしで侍女も連れていけない以上、そんな上流階級もたくさん集まる学校に普段のようなみすぼらしい格好はさせられないと今までの家族とは打って変わって非常に口煩く、耳にタコができそうなほど身嗜みについて言われまくった。

 もちろん小言は身嗜みだけではない。貴族としてのマナーはもちろん、一応マルティーニ家は伯爵家なのでそれに見合った教養などを全て手厳しく叩き込まれてきた。

 幸い以前の記憶があり、ある程度前世の知識と重複するマナーや教養などがあったのでゼロからスタートでなかっただけマシなのだが、それでも今までサボっていたぶん血反吐が出そうなほどビシバシとしごかれて毎日フラフラだった。

 正直、「違う意味で死にそう……」と弱音を吐く日もあった。いや、吐く日のほうが多かった気がする。

 でも、社交界などを頑なに断り続けていたせいで人脈がまるでなく、入学したらマリアンヌ以外誰も知らないという中に飛び込むことになり、前世のように受け身のままでいると何かイレギュラーなことがあったときにそこで詰む可能性があることは重々承知している。
 なので前世の悪夢を繰り返したくない私は、今できる最大限のことはやっておかなければと、今世での最大目標である平穏な喪女生活を送るために奮起し、毎日そのノルマをこなし続けたのだった。
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