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6章【外交編・ブライエ国】

42 策士

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「[シオン!]」
「[ステラか!どうした!!]」
「[作戦がある!一旦下がって!!]」
「[わかった!お前達!一旦下がれ!!]」

シオンの号令と共に部隊が一気に下がり始める。追撃の矢も降ってくるが、どうにか避けながら後退することができたが、やはり人数はだいぶ減ってしまっていた。

「[くそっ、だいぶ削られたか!]」
「[あれだけ強固にしてたらね。恐らく相当な人数を外部に割いているからそのぶん内側は緩いとは思うけど]」
「[そう思うでしょう?ちゃんとその辺りは抜かりなく策を練っております]」
「[どういうこと!?]」

突然口を開くギルデルにキッと鋭い視線を向けると、肩を竦ませられる。だが、協力してくれているとはいえ、元々は敵なのだと理解して、スッと気持ちを鎮めた。

「[どういうことか、教えてくれる?]」
「[おや、素直なことはいいことです]」
「[御託はいいから早く答えて]」
「[では、聞かれたからには答えましょうか。まずは敵戦力を削るために強固な防衛、そのために過剰なまでの攻撃は鉄則です。ここで惜しんでも意味がありませんからね。時間を稼いで戦力を削ぎつつ、第二波で一気に攻めるのが上等手段ですが、今周りの都市は壊滅状態。であれば、選択としてはここで仕留める他ならない]」
「[それで?]」
「[そのため、別口をあえて教えておくのですよ。そこに来たら一網打尽、という寸法です]」
「[なるほど?この策を考えたのは貴方ってことね]」
「[そこは、ほら、策士として登用されてますからね]」

やはり食えない男だ、と思いながらも、今後の戦略について考えを巡らせる。

外部と内部両方から攻められるなら攻めていくのが最も効率的だ。とはいえ、現在ザッと見回しただけでも残りの兵は100人いるかいないか。

まだシグバール国王達の安否もわからないし、このまま攻めてしまっていいものか。いや、かと言ってここで躊躇していては帝国軍の増援もきてモットー国共々飲み込まれてしまう。

(ここに来て詰み、にはしたくない)

となると選択は一択しかない。相手側の策士がこちらにいるならそれを最大限活かしてこの難局を乗り切るしかない、という結論に至った。

「[ギルデルが考えたのなら、攻略法も貴方ならもっているんではなくて?]」
「[まぁ、そうですね。なくはないですけど、危険ではあると思いますよ]」
「[今更危険も何もないでしょ、言いなさい]」
「[あえて別口……さっき言った抜け道を行きます]」
「[それで?]」
「[2手にわかれて陽動として城壁から攻め込む一派と内部から崩していく一派で攻め込みます。その際にリーシェさんはペンテレアの姫ということを最大限に利用していただきます]」
「[ステラを囮にする作戦か]」

ぬっと、シオンが割って入ってくる。この戦況に苛立っているようだった。

「[そんなこと許すとでも?]」
「[許す許さないの問題ではないかと。シグバール国王もご理解いただけると思いますが]」
「[くそっ、とんでもないハズレくじを引かされた気分だ。おれは反対だぞ、お前に何かあってからではそこの鬼みたいな男とうちの親父に何を言われるかわかったもんじゃない]」

シオンは私を預かるに当たってかなり念押しをされたのだろう。確かに自分がこの戦争のキーであり、最重要人物であることは理解している。

でも、だからこそ私は……

「[行くわよ、シオン]」
「[はぁ!?本気で言ってるのか!??]」
「[本気よ本気。言っておくけど、私は勝ちに来たんだから。大丈夫、悪運だけは強いから]」
「[お前、またそんなことを~!何かあってからじゃ遅いんだぞ?]」
「[大丈夫大丈夫]」
「[その自信はどこからくるんだ……]」

呆れたような表情と共に頭を抱えたシオン。我ながらこうも変に思い切りがいいとは思うが、こればかりは性格なのでどうしようもなかった。

「[行くにしてもまずはお前の男に説明して説得しろよ。話はそれからだ。時間もないから手短にな]」
「[わかってる]」

(ここからある意味最難関)

クエリーシェルと対峙して、大きく深呼吸する。言葉はわからずとも不穏な空気は察したらしいクエリーシェルが訝しむ様子でこちらを見ていた。

それを内心ドキドキと緊張しながらも、もうどう叱責されようが何されようが構わない気持ちで、挑むように彼を見据えて私は口を開いた。
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