420 / 437
6章【外交編・ブライエ国】
37 情報交換
しおりを挟む
「[ステラ、終わったか?]」
「[えぇ、ちょうど今終わったとこ。……大丈夫?顔に血がついているけど]」
「[ん?あぁ、おれのじゃないから安心しろ。で、どうだった?]」
(自分のじゃないってことは……つまりそういうことよねぇ。相当バイオレンスな拷問をしたのかしら)
ニコニコとさわやかに言われて逆に怖くなるも、下手に追及しても精神的によくないのであえてスルーしておく。こちらもあらかたギルデルに聞き終えたところだったのでちょうどいいタイミングではあった。
「[えぇ、ギルデルが言うには首都はいくつか包囲網が敷かれているみたい。前衛に帝国兵、後衛にモットー国兵だそうよ]」
「[なるほど。こちらが聞いた内容と一致しているな。それとこちらが聞いた情報によると首都にもいくつか地下施設があるらしい。王族達はそこに潜伏する予定だとか]」
「[いくつか、ってことは当たりとはずれしらみつぶしに当たっていくしかないということね]」
「[あぁ、そういうことになる]」
またここのように迷宮探索となると色々と面倒だな、と思う。きっと首都ではここ以上の仕上がりになっているはずだ。迷うのはもちろん、罠も格段にレベルが上がっていることだろう。
どことどこが繋がっているのか、中で合流することができるのか、最悪一網打尽にすることもできるかもしれないなどと考えると慎重に行かざるを得ない。
「[大体の位置は確認したが、それ以上は聞き出せなかった。定期的に配置人員の場所の変更をしているらしく、やつらも具体的に把握できていないらしい]」
「[でしょうね。こういうのは下手に覚えられたら厄介だろうし。内部構造については誰が把握してるか聞いた?]」
「[上層部だけしか把握していないらしい。この辺りの兵は全く知らないようだ]」
「[なるほど]」
(となると、またギルデルに聞くしかないか)
できればクエリーシェルの精神衛生上置いていきたかったが、首都まで連れていくしかないかもしれない。一体どこから得ているのかは不明だが、やけに情報に長けているのはさすが執政官だったというだけはあるようだ。
本人には本来届くはずの情報をわんさか抱えているところを見ると、相当なキレものであるように思う。本人はあんな感じで飄々としているが。
「[ちなみに他に情報はあったか?こちらは首都の装備や人員については聞き出したが]」
「[ならこれは?ここにいる帝国兵はさして強くもない、という話]」
「[ん?それはどういうことだ。聞いてないぞ]」
「[ということは上層部……しかも限られた人達のオフレコの話ということね]」
「[詳しく話せ]」
ギルデル曰く、ここに集められた人物は自分含めて帝国としては不要だと判断された人物だという。
そもそも今回モットー国と手を結んだ、というのもブライエ国を攻め込むための布石なのだそうだ。
「[まさか……]」
「[お互い消耗したところを漁夫の利で攻め込む、というのが今回の戦争に加担した帝国の真の狙いだそうよ]」
モットー国は酒と交易の国ではあるが、帝国にとってあまり旨味の少ない国ではあると思っていた。だが、先の理由によって今回首を突っ込んできた理由に説明がつく。
ブライエ国は非常に強固であり、盤石な国だ。つまりここさえ落とせば、正直どこの国も攻略可能とも言える。
だからこそわざと国同士を衝突させ、お互いに疲弊したところを掠め取る。実に計画的な作戦であり、狡猾な帝国が仕組みそうなことであった。
「[まぁ実際のところ、現状としてはだいぶ計画としては崩れているようだけどね。予定外のアガ国の介入と私達が入ったことはあっちにとっても想定外だったようで、事態が急転しすぎて攻め込むのに準備する時間がかかってるみたい。だからこの前一気にモットー国を抑えて、帝国を迎え打つ必要があるかもしれない]」
「[なるほど?確かにそうだな。となると、早々にここを引き上げて親父と兄さんに合流しなければ]」
「[えぇ。物資を補給したら行きましょう。下手に時間を与えて時間稼ぎなどされても困るし]」
今後の目的が定まったところで利用できる物資や情報を掻き集めて外に出る。もちろん、ギルデルも一緒だ。
さすがに移動するのにぐるぐる巻きの蓑虫状態では面倒なので、手首を縛っての移動である。やっと解放されたからか、ギルデルはニコニコと微笑みながら私の隣を歩こうとする。
「リーシェさんとご一緒できて嬉しいです」
「あくまで情報のためだから」
「わかってますよ」
「それ以上近づくでないぞ」
「しつこいですねぇ。わかってますよ」
すかさず後ろにいるクエリーシェルからギルデルを制する声。前途多難だ、と思いながら地下から脱出するのだった。
「[えぇ、ちょうど今終わったとこ。……大丈夫?顔に血がついているけど]」
「[ん?あぁ、おれのじゃないから安心しろ。で、どうだった?]」
(自分のじゃないってことは……つまりそういうことよねぇ。相当バイオレンスな拷問をしたのかしら)
ニコニコとさわやかに言われて逆に怖くなるも、下手に追及しても精神的によくないのであえてスルーしておく。こちらもあらかたギルデルに聞き終えたところだったのでちょうどいいタイミングではあった。
「[えぇ、ギルデルが言うには首都はいくつか包囲網が敷かれているみたい。前衛に帝国兵、後衛にモットー国兵だそうよ]」
「[なるほど。こちらが聞いた内容と一致しているな。それとこちらが聞いた情報によると首都にもいくつか地下施設があるらしい。王族達はそこに潜伏する予定だとか]」
「[いくつか、ってことは当たりとはずれしらみつぶしに当たっていくしかないということね]」
「[あぁ、そういうことになる]」
またここのように迷宮探索となると色々と面倒だな、と思う。きっと首都ではここ以上の仕上がりになっているはずだ。迷うのはもちろん、罠も格段にレベルが上がっていることだろう。
どことどこが繋がっているのか、中で合流することができるのか、最悪一網打尽にすることもできるかもしれないなどと考えると慎重に行かざるを得ない。
「[大体の位置は確認したが、それ以上は聞き出せなかった。定期的に配置人員の場所の変更をしているらしく、やつらも具体的に把握できていないらしい]」
「[でしょうね。こういうのは下手に覚えられたら厄介だろうし。内部構造については誰が把握してるか聞いた?]」
「[上層部だけしか把握していないらしい。この辺りの兵は全く知らないようだ]」
「[なるほど]」
(となると、またギルデルに聞くしかないか)
できればクエリーシェルの精神衛生上置いていきたかったが、首都まで連れていくしかないかもしれない。一体どこから得ているのかは不明だが、やけに情報に長けているのはさすが執政官だったというだけはあるようだ。
本人には本来届くはずの情報をわんさか抱えているところを見ると、相当なキレものであるように思う。本人はあんな感じで飄々としているが。
「[ちなみに他に情報はあったか?こちらは首都の装備や人員については聞き出したが]」
「[ならこれは?ここにいる帝国兵はさして強くもない、という話]」
「[ん?それはどういうことだ。聞いてないぞ]」
「[ということは上層部……しかも限られた人達のオフレコの話ということね]」
「[詳しく話せ]」
ギルデル曰く、ここに集められた人物は自分含めて帝国としては不要だと判断された人物だという。
そもそも今回モットー国と手を結んだ、というのもブライエ国を攻め込むための布石なのだそうだ。
「[まさか……]」
「[お互い消耗したところを漁夫の利で攻め込む、というのが今回の戦争に加担した帝国の真の狙いだそうよ]」
モットー国は酒と交易の国ではあるが、帝国にとってあまり旨味の少ない国ではあると思っていた。だが、先の理由によって今回首を突っ込んできた理由に説明がつく。
ブライエ国は非常に強固であり、盤石な国だ。つまりここさえ落とせば、正直どこの国も攻略可能とも言える。
だからこそわざと国同士を衝突させ、お互いに疲弊したところを掠め取る。実に計画的な作戦であり、狡猾な帝国が仕組みそうなことであった。
「[まぁ実際のところ、現状としてはだいぶ計画としては崩れているようだけどね。予定外のアガ国の介入と私達が入ったことはあっちにとっても想定外だったようで、事態が急転しすぎて攻め込むのに準備する時間がかかってるみたい。だからこの前一気にモットー国を抑えて、帝国を迎え打つ必要があるかもしれない]」
「[なるほど?確かにそうだな。となると、早々にここを引き上げて親父と兄さんに合流しなければ]」
「[えぇ。物資を補給したら行きましょう。下手に時間を与えて時間稼ぎなどされても困るし]」
今後の目的が定まったところで利用できる物資や情報を掻き集めて外に出る。もちろん、ギルデルも一緒だ。
さすがに移動するのにぐるぐる巻きの蓑虫状態では面倒なので、手首を縛っての移動である。やっと解放されたからか、ギルデルはニコニコと微笑みながら私の隣を歩こうとする。
「リーシェさんとご一緒できて嬉しいです」
「あくまで情報のためだから」
「わかってますよ」
「それ以上近づくでないぞ」
「しつこいですねぇ。わかってますよ」
すかさず後ろにいるクエリーシェルからギルデルを制する声。前途多難だ、と思いながら地下から脱出するのだった。
0
お気に入りに追加
1,922
あなたにおすすめの小説
ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました
中七七三
恋愛
わたしっておかしいの?
小さいころからエッチなことが大好きだった。
そして、小学校のときに起こしてしまった事件。
「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」
その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。
エッチじゃいけないの?
でも、エッチは大好きなのに。
それでも……
わたしは、男の人と付き合えない――
だって、男の人がドン引きするぐらい
エッチだったから。
嫌われるのが怖いから。
最強賢者、ヒヨコに転生する。~最弱種族に転生してもやっぱり最強~
深園 彩月
ファンタジー
最強の賢者として名を馳せていた男がいた。
魔法、魔道具などの研究を第一に生活していたその男はある日間抜けにも死んでしまう。
死んだ者は皆等しく転生する権利が与えられる。
その方法は転生ガチャ。
生まれてくる種族も転生先の世界も全てが運任せ。その転生ガチャを回した最強賢者。
転生先は見知らぬ世界。しかも種族がまさかの……
だがしかし、研究馬鹿な最強賢者は見知らぬ世界だろうと人間じゃなかろうとお構い無しに、常識をぶち壊す。
差別の荒波に揉まれたり陰謀に巻き込まれたりしてなかなか研究が進まないけれど、ブラコン拗らせながらも愉快な仲間に囲まれて成長していくお話。
※拙い作品ですが、誹謗中傷はご勘弁を……
只今加筆修正中。
他サイトでも投稿してます。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
【R18】らぶえっち短編集
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)
R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。
※R18に※
※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。
※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。
※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。
※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
悪役令嬢は安眠したい。
カギカッコ「」
恋愛
番外編が一個短編集に入ってます。時系列的に66話辺りの話になってます。
読んで下さる皆様ありがとうごぜえまーす!! V(>▽<)V
恋人に振られた夜、何の因果か異世界の悪役令嬢アイリスに転生してしまった美琴。
目覚めて早々裸のイケメンから媚薬を盛ったと凄まれ、自分が妹ニコルの婚約者ウィリアムを寝取った後だと知る。
これはまさに悪役令嬢の鑑いやいや横取りの手口!でも自分的には全く身に覚えはない!
記憶にございませんとなかったことにしようとしたものの、初めは怒っていたウィリアムは彼なりの事情があるようで、婚約者をアイリスに変更すると言ってきた。
更には美琴のこの世界でのNPCなる奴も登場し、そいつによればどうやら自分には死亡フラグが用意されているという。
右も左もわからない転生ライフはのっけから瀬戸際に。
果たして美琴は生き残れるのか!?……なちょっとある意味サバイバル~な悪役令嬢ラブコメをどうぞ。
第1部は62話「ああ、寝ても覚めても~」までです。
第2部は130話「新たな因縁の始まり」までとなります。
他サイト様にも掲載してます。
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる