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6章【外交編・ブライエ国】
14 勝敗予想
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「なんだなんだぁ?随分と熱い視線だな。オレさまに穴が空いちまうぜ?」
「いいから早く行ってください」
朝食を食べ終えたあと早々にセツナに声をかけ、クエリーシェルとの手合わせを挑む。セツナは「ちょっとは休ませろよな~」と言いつつも乗り気なようなのは見てわかった。
「よろしくお願いします」
「おーおー、かしこまらねぇで適当にやろうぜ?」
「ケリー様、頑張ってくださいね!」
「あぁ、ありがとう」
「なんだよ、クソ餓鬼。オレさまへの応援は?」
「そんなものはないです」
「けっ、ケチなやつだなぁ」
そんなことを言い合いながら模擬戦場へと向かおうとしていたときだった。
「[おぉ、お前達何をやっているんだ?]」
「[シグバール国王!これからセツナさんとクエリーシェルが手合わせをするんです]」
「[ほう。それは面白い。確か、ヴァンデッダ卿はコルジール国の軍総司令官だとか]」
「[えぇ。ですからそれなりには見応えがあると思いますよ]」
「[そうか、ではワシもちょっくら拝見させてもらおうかな。デュオンとシオンも参加するか?]」
「[俺達は見る専だから。なぁ、シオン]」
「[そうそう。それに体力は温存しとくのがいざというときにできる男ってやつだしな]」
相変わらずこういうときだけ仲いいな、と思いながらめんどくさがり兄弟を見る。シグバール国王も我が子達のことだ、承知の上のようで、はぁと小さく溜め息をついたあとに私の肩に手をかけた。
「[では、行こうか]」
「[はい]」
そのままシグバール国王と共に模擬戦場にやってくる。噂を聞きつけた他の兵達も集まって、わいわいと賑やかになっていた。
クエリーシェルとセツナとは別れ、観覧席の方へ向かうとシグバール国王が来たことに気づいた兵達が、皆一斉に静かになる。
だが、シグバール国王は手を挙げてそれを制すと、皆一斉に恭しく頭を下げてから、再びザワザワと騒がしくなる。
(凄い。さすが長年国王として君臨しているだけはあって統制がとれている)
あまりのカリスマ性に思わず感心してしまう。そして、これが国王なのだと改めて畏敬の念がわいた。
「[ここはワシと嬢ちゃんが座るから、お前達は適当にどこかで観ておれ]」
「[うーわ、酷っ!]」
「[実の息子よりも女を取ると言うのか!?]」
「[随分と口が減らないようだな。お前達に王命として模擬戦に出場させることなど造作もないのだが?]」
「[あー、俺……日陰の席に行きたかったんだよなぁ!]」
「[あ、ずるい!お、おれも兄さんと同じく別のとこで観てくるわー]」
2人は藪蛇だったとそそくさ逃げるようにその場からいなくなる。こうも連携を取れるというのもある意味感心してしまった。
「[しょうもないものを見せて悪かったな。さぁ、特等席だ。しっかりと観せていただこう]」
そして一番見渡し易い席へと行くと、そのままシグバール国王はどかりと腰掛ける。私も隣を促されて、静かに隣に腰掛けた。
「[嬢ちゃんは、どっちが勝つと思う?]」
「[そうですね。願望としてはクエリーシェルですが、セツナさんですかね]」
「[お、意外に現実的だな]」
「[なんだかんだ強いですからね、あの人]」
クエリーシェルにコテンパンにのされたらいいのに、という気持ちはあるが、実際のところこの模擬戦を勝つのはセツナだろうと考えている。
というのも圧倒的に実戦経験が違うだろうし、セツナは死地を幾度となく掻い潜ってきたという実績があることは知っていた。
そもそも彼のモットーは「頭を潰せ」だ。
兵が隊列を組んでいた場合、その頭……つまりトップから先に殺せば必然的に他の者は機能を停止するという考えである。
実際それは正しいのであるが、頭を叩くというのは当たり前だが、トップの重要度が高ければ高いほど難易度が高い。本人の力量はもちろんのこと、それを守る護衛がごまんといる。
それを跳ね除け、頭を潰す。そのことをやってのけてしまうのが、このセツナという男であった。
「[そうだな。計り知れない、というのはワシも感じることはある。底知れぬ強さというやつか?初めてあの男と会ったときは正直驚いた]」
シグバールの意外な言葉に目を見開く。
「[シグバール国王でもですか?]」
「[あぁ。まさかこんな猛者が極東の島国にいるとは夢にも思わなんだ。だが、最近まで戦乱であり、小さな島だというのにいくつも国があり競り合っていると聞いて納得した]」
「[あの国は少々他国と違って変わってますから]」
「[そうだな。島国というのは変わっているところが多いのかもしれない。ペンテレアも随分と興味深い国であったしな]」
「[そうおっしゃっていただきありがとうございます]」
「[何、別に世辞ではないぞ?本当にそう思っておる。……あの国は穏やかでよい国であった]」
「[えぇ、私もそう思います]」
私がそう言うと、シグバール国王が慰めるかのように頭を撫でてくれる。
「[お、そろそろ開始のようだな。さて、結果はどうなるか]」
「[ちなみに、シグバール国王はどちらが勝つと?]」
「[そりゃあ、もちろん……]」
「いいから早く行ってください」
朝食を食べ終えたあと早々にセツナに声をかけ、クエリーシェルとの手合わせを挑む。セツナは「ちょっとは休ませろよな~」と言いつつも乗り気なようなのは見てわかった。
「よろしくお願いします」
「おーおー、かしこまらねぇで適当にやろうぜ?」
「ケリー様、頑張ってくださいね!」
「あぁ、ありがとう」
「なんだよ、クソ餓鬼。オレさまへの応援は?」
「そんなものはないです」
「けっ、ケチなやつだなぁ」
そんなことを言い合いながら模擬戦場へと向かおうとしていたときだった。
「[おぉ、お前達何をやっているんだ?]」
「[シグバール国王!これからセツナさんとクエリーシェルが手合わせをするんです]」
「[ほう。それは面白い。確か、ヴァンデッダ卿はコルジール国の軍総司令官だとか]」
「[えぇ。ですからそれなりには見応えがあると思いますよ]」
「[そうか、ではワシもちょっくら拝見させてもらおうかな。デュオンとシオンも参加するか?]」
「[俺達は見る専だから。なぁ、シオン]」
「[そうそう。それに体力は温存しとくのがいざというときにできる男ってやつだしな]」
相変わらずこういうときだけ仲いいな、と思いながらめんどくさがり兄弟を見る。シグバール国王も我が子達のことだ、承知の上のようで、はぁと小さく溜め息をついたあとに私の肩に手をかけた。
「[では、行こうか]」
「[はい]」
そのままシグバール国王と共に模擬戦場にやってくる。噂を聞きつけた他の兵達も集まって、わいわいと賑やかになっていた。
クエリーシェルとセツナとは別れ、観覧席の方へ向かうとシグバール国王が来たことに気づいた兵達が、皆一斉に静かになる。
だが、シグバール国王は手を挙げてそれを制すと、皆一斉に恭しく頭を下げてから、再びザワザワと騒がしくなる。
(凄い。さすが長年国王として君臨しているだけはあって統制がとれている)
あまりのカリスマ性に思わず感心してしまう。そして、これが国王なのだと改めて畏敬の念がわいた。
「[ここはワシと嬢ちゃんが座るから、お前達は適当にどこかで観ておれ]」
「[うーわ、酷っ!]」
「[実の息子よりも女を取ると言うのか!?]」
「[随分と口が減らないようだな。お前達に王命として模擬戦に出場させることなど造作もないのだが?]」
「[あー、俺……日陰の席に行きたかったんだよなぁ!]」
「[あ、ずるい!お、おれも兄さんと同じく別のとこで観てくるわー]」
2人は藪蛇だったとそそくさ逃げるようにその場からいなくなる。こうも連携を取れるというのもある意味感心してしまった。
「[しょうもないものを見せて悪かったな。さぁ、特等席だ。しっかりと観せていただこう]」
そして一番見渡し易い席へと行くと、そのままシグバール国王はどかりと腰掛ける。私も隣を促されて、静かに隣に腰掛けた。
「[嬢ちゃんは、どっちが勝つと思う?]」
「[そうですね。願望としてはクエリーシェルですが、セツナさんですかね]」
「[お、意外に現実的だな]」
「[なんだかんだ強いですからね、あの人]」
クエリーシェルにコテンパンにのされたらいいのに、という気持ちはあるが、実際のところこの模擬戦を勝つのはセツナだろうと考えている。
というのも圧倒的に実戦経験が違うだろうし、セツナは死地を幾度となく掻い潜ってきたという実績があることは知っていた。
そもそも彼のモットーは「頭を潰せ」だ。
兵が隊列を組んでいた場合、その頭……つまりトップから先に殺せば必然的に他の者は機能を停止するという考えである。
実際それは正しいのであるが、頭を叩くというのは当たり前だが、トップの重要度が高ければ高いほど難易度が高い。本人の力量はもちろんのこと、それを守る護衛がごまんといる。
それを跳ね除け、頭を潰す。そのことをやってのけてしまうのが、このセツナという男であった。
「[そうだな。計り知れない、というのはワシも感じることはある。底知れぬ強さというやつか?初めてあの男と会ったときは正直驚いた]」
シグバールの意外な言葉に目を見開く。
「[シグバール国王でもですか?]」
「[あぁ。まさかこんな猛者が極東の島国にいるとは夢にも思わなんだ。だが、最近まで戦乱であり、小さな島だというのにいくつも国があり競り合っていると聞いて納得した]」
「[あの国は少々他国と違って変わってますから]」
「[そうだな。島国というのは変わっているところが多いのかもしれない。ペンテレアも随分と興味深い国であったしな]」
「[そうおっしゃっていただきありがとうございます]」
「[何、別に世辞ではないぞ?本当にそう思っておる。……あの国は穏やかでよい国であった]」
「[えぇ、私もそう思います]」
私がそう言うと、シグバール国王が慰めるかのように頭を撫でてくれる。
「[お、そろそろ開始のようだな。さて、結果はどうなるか]」
「[ちなみに、シグバール国王はどちらが勝つと?]」
「[そりゃあ、もちろん……]」
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