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5章【外交編・モットー国】

36 交易都市

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「〈うわぁ、凄いわね!!〉」
「〈この国2番目の交易都市だってじーちゃんが言ってた〉」
「〈2番目……!それでもこんな規模っていうのは凄い……〉」

1番目は言わずもがな城下町であろうが、ここはここですごい大きな街だった。

まだ外観しかわからないが、それでもぐるっと大きく囲まれた塀の大きさに大体の規模は想像できる。門の前には衛兵らしき人も常駐しているし、かなり賑わっていることが一目でわかった。

コルジールのクエリーシェルが統治していた港町もそれなりの大きさではあったが、ここよりも規模は小さい。

クエリーシェルから他の港町とあまり変わらない大きさだと聞いたことを考えると、きっとコルジール国でこれほどの規模の街はないのだろう。

そもそも国土や国の主体運営を比較して鑑みると、コルジールよりも大きなモットー国では外への貿易だけでなく、自国内での交易も盛んだということがよくわかった。

「〈とにかく、中に入ることが大事ね〉」
「〈そうね、何かいい案ある?〉」
「〈荷物も多いことですし、引越しとかは……〉」
「〈それだと永住許可を取れとかそういう話になる可能性があるわ〉」
「〈そうですか。であれば、旅の一座……とかはどうでしょう?〉」
「〈旅の一座……ねぇ〉」

言われて、先日のマルダス国のサーカスを思い出す。あのように旅をして出稼ぎするという文化もなきにしもあらずだろうが、うまくいくだろうか。

「〈そういうのも許可取れとか言われない?〉」
「〈……多分?大丈夫。1、2日くらいなら留まっていても何も言われないと思う。前の村ではそうだった〉」
「〈ふぅむ、なるほど?〉」

ここの文化は私よりもメリッサの方が詳しいだろう。だから、私は彼女の意見を採用することにする。

「〈ここで悩んでいたってしょうがなし。もしバレたらバレたで逃げればよし、とりあえず当たって砕けてみますか〉」

そうと決まれば、と私は布で身体をぐるぐる巻きにする。そして、髪を綺麗に束ねて結い上げると、真っ黒いヒジャブを目深に巻いておいた。

「〈髪、見えてない?〉」
「〈うん、大丈夫〉」
「〈では私の名はリーシェ、ってことで。ヒューベルトさんは引き続きウムト、メリッサはミリーね〉」

様々な準備を整える。できる限り準備は万全にしておいたい。

本当はこの珍しい瞳の色も隠したいところだが、ここはヒジャブを被るとはいえ顔はあまり隠さない傾向にある。そのため、瞳の色がバレないようにするには俯き、人目を避ける他なかった。

「〈ヒューベルトさんは説明をお願いします。私は目立たぬように大人しくしているので〉」
「〈わかりました。頑張ります〉」
「〈いざとなったらあたしもフォローするわ〉」
「〈ありがとう、メリッサちゃん〉」
「〈では、いきましょうか。先陣、ヒューベルトさんお願いします!〉」
「〈な、なんだか緊張してきましたが、頑張ります〉」

馬から降りて門まで歩く。
2人が前を行くのを、私は大人しく馬を引きながら静かに俯きつつ、ついていくのだった。
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