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4章【外交編・サハリ国】
93 今後の進路
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「そういえば、今後の進路はどういう予定なんだい?」
「次はモットーに行って、モットーを経由してブライエに行く予定よ」
「モットーか……それはまずいな」
今後のプランを話すと、途端に顔を曇らせるブランシェ。何がまずいのだろうか。
「あまり知られていないことだが、モットーでは内紛がおきていてな」
「それはカジェで聞いたけど……。酒関係の利権で争ってるとか」
「あぁ、それがね……モットーの情報網を手に入れたい帝国が諸々の利権関係を全て抑えたんだ」
「というと……?」
「モットーはもはや帝国側ということさ」
思わず、私も眉間に皺が寄る。モットーという情報網を抑えられてしまったことも痛手ではあるが、それよりもモットーがあちら側になってしまったことで、もっと深刻な事態が生じてしまうからだ。
というのも、ブライエに行くには地形上モットーを経由せねばならない。敵国を通っていかめばならぬというのは、非常に難易度が高いことである。
だが、モットーからの協力は諦めるにしても、ブライエだけはどうしても協力を仰ぎたい国であった。そのため、ブライエに行くか諦めるか、厳しい判断をしなければならない。
「ブライエは抑えておきたい国なのよね……」
「キミの気持ちはわかるよ。ブライエは唯一帝国の天敵とも言える国家だからね。彼らの協力を仰ぎたい気持ちはよくわかる」
そう、ブライエは世界屈指の軍事国家である。義を重んじるのはもちろんだが、さらにそのためには武勇を上げよ、という理念のもとシグバール国王によって長年統治されている国なのだ。
帝国とは犬猿の仲で、武勇のみを重んじる帝国側と、義を重んじるつつ武勇もしっかりとあげているブライエとは根本的に考え方が違うためである。
幾度となくブライエは帝国に攻められているが、毎回撃退しておりバレス皇帝も手を焼いているというのが周知の事実だ。
さすがにシグバール国王も老齢なため、そろそろ次世代へと交代の可能性はあるものの、しっかりと次世代も教育、育成され徹底的に国を管理しているため、恐らくクーデターなどは起きることはないだろう。
そういう部分でも信頼がおける国であり、だからこそ協力国として確保しておきたい国だった。
「正直に言って、ブライエに行くのはかなり厳しいと思うが」
「ブランシェならどうする?」
「僕がキミの立場だったら、ということかい?」
「えぇ」
静かに思案を始めるブランシェ。私としては行くことは正直確定はしているが、ブランシェの意見も聞いてみたかった。もしかしたら、私にはない発想を持ち合わせているかもしれない。
「僕なら行かない。だが、国王としてなら行く……かな」
「なるほど」
「国を背負うということは国民を背負うとも一緒だ。今後の情勢を鑑みたら、それが最適解だろうな」
「まぁ、そうなるわよね」
国を背負うのであれば、やりたくないことでもしなければならない。ブランシェが前国王夫妻……両親を拘束したように。
「できる限りは協力するよ。難易度は高いが、無理ではないだろう。モットーとの交流がある人物に聞いて、いくつかルートを作成しよう」
「ありがとう」
「ステラには多大なる恩があるからね」
「ふふ、私に一生頭が上がらないわね」
冗談まじりに笑えば、恭しく頭を下げられ「ステラ様の仰せのとおりに致します」とふざけられる。
彼も、色々と気負っていたものがなくなったことで肩の荷が下りたのだろう。表情が以前に比べて晴れやかで、それは素直に喜ばしかった。
「あ、そういえば恩を売ったついでに聞いておきたいことがあるのだけど」
「何だい?僕で答えられることなら答えるけど」
「マーラ様とはどう言った関係なの?」
そういえば、マーラに聞けないならこちらに聞けばいいのではないかと単刀直入に尋ねれば、少し逡巡した様子で沈黙が流れる。
「それに関しては、ノーコメントで」
「え!何それズルい!さっき答えられることなら答えるって言ったじゃない!」
「相手があることだからね。僕が勝手に言うことはできないよ」
「そういう言い方ってことはちょっといい感じとか?」
「それも、ノーコメントで」
「うぅ……!なんかそれムカつくぅ!!!」
どいつもこいつも口硬いというかなんていうか、ヤキモキするなぁもう!と思いながら、私は1人憤慨するのだった。
「次はモットーに行って、モットーを経由してブライエに行く予定よ」
「モットーか……それはまずいな」
今後のプランを話すと、途端に顔を曇らせるブランシェ。何がまずいのだろうか。
「あまり知られていないことだが、モットーでは内紛がおきていてな」
「それはカジェで聞いたけど……。酒関係の利権で争ってるとか」
「あぁ、それがね……モットーの情報網を手に入れたい帝国が諸々の利権関係を全て抑えたんだ」
「というと……?」
「モットーはもはや帝国側ということさ」
思わず、私も眉間に皺が寄る。モットーという情報網を抑えられてしまったことも痛手ではあるが、それよりもモットーがあちら側になってしまったことで、もっと深刻な事態が生じてしまうからだ。
というのも、ブライエに行くには地形上モットーを経由せねばならない。敵国を通っていかめばならぬというのは、非常に難易度が高いことである。
だが、モットーからの協力は諦めるにしても、ブライエだけはどうしても協力を仰ぎたい国であった。そのため、ブライエに行くか諦めるか、厳しい判断をしなければならない。
「ブライエは抑えておきたい国なのよね……」
「キミの気持ちはわかるよ。ブライエは唯一帝国の天敵とも言える国家だからね。彼らの協力を仰ぎたい気持ちはよくわかる」
そう、ブライエは世界屈指の軍事国家である。義を重んじるのはもちろんだが、さらにそのためには武勇を上げよ、という理念のもとシグバール国王によって長年統治されている国なのだ。
帝国とは犬猿の仲で、武勇のみを重んじる帝国側と、義を重んじるつつ武勇もしっかりとあげているブライエとは根本的に考え方が違うためである。
幾度となくブライエは帝国に攻められているが、毎回撃退しておりバレス皇帝も手を焼いているというのが周知の事実だ。
さすがにシグバール国王も老齢なため、そろそろ次世代へと交代の可能性はあるものの、しっかりと次世代も教育、育成され徹底的に国を管理しているため、恐らくクーデターなどは起きることはないだろう。
そういう部分でも信頼がおける国であり、だからこそ協力国として確保しておきたい国だった。
「正直に言って、ブライエに行くのはかなり厳しいと思うが」
「ブランシェならどうする?」
「僕がキミの立場だったら、ということかい?」
「えぇ」
静かに思案を始めるブランシェ。私としては行くことは正直確定はしているが、ブランシェの意見も聞いてみたかった。もしかしたら、私にはない発想を持ち合わせているかもしれない。
「僕なら行かない。だが、国王としてなら行く……かな」
「なるほど」
「国を背負うということは国民を背負うとも一緒だ。今後の情勢を鑑みたら、それが最適解だろうな」
「まぁ、そうなるわよね」
国を背負うのであれば、やりたくないことでもしなければならない。ブランシェが前国王夫妻……両親を拘束したように。
「できる限りは協力するよ。難易度は高いが、無理ではないだろう。モットーとの交流がある人物に聞いて、いくつかルートを作成しよう」
「ありがとう」
「ステラには多大なる恩があるからね」
「ふふ、私に一生頭が上がらないわね」
冗談まじりに笑えば、恭しく頭を下げられ「ステラ様の仰せのとおりに致します」とふざけられる。
彼も、色々と気負っていたものがなくなったことで肩の荷が下りたのだろう。表情が以前に比べて晴れやかで、それは素直に喜ばしかった。
「あ、そういえば恩を売ったついでに聞いておきたいことがあるのだけど」
「何だい?僕で答えられることなら答えるけど」
「マーラ様とはどう言った関係なの?」
そういえば、マーラに聞けないならこちらに聞けばいいのではないかと単刀直入に尋ねれば、少し逡巡した様子で沈黙が流れる。
「それに関しては、ノーコメントで」
「え!何それズルい!さっき答えられることなら答えるって言ったじゃない!」
「相手があることだからね。僕が勝手に言うことはできないよ」
「そういう言い方ってことはちょっといい感じとか?」
「それも、ノーコメントで」
「うぅ……!なんかそれムカつくぅ!!!」
どいつもこいつも口硬いというかなんていうか、ヤキモキするなぁもう!と思いながら、私は1人憤慨するのだった。
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